スタバのコーヒーは高いのか? インドネシアで考える「スタバ指数」
私はアメリカーノが好きです。海外に出かけると、街に着いてまず探すのはWi-Fiでもなく両替所でもなく、スタバの看板だったりします。理由は単純で、アメリカーノがどこの国でも安定して同じ味だからです。
先日もマカッサルの行きつけの店で、いつも通りGrandeのIced Americanoを頼みました。レシートを見ると、43,000ルピア。日本円に直せば400円弱で、正直「日本より安いな」と思いました。
でも、そのすぐ近くには Kopi Kenangan があります。同じくらいのサイズのアメリカーノを頼むと、19,000ルピア。
スタバは、その2倍以上します。
スタバ指数という考え方
ここでふと思いました。自分は「安い」と感じましたが、それは日本円換算で見ているからで、インドネシアの人にとってもスタバは「安い」のでしょうか。むしろ逆で、現地の感覚では「ちょっと贅沢な店」なのではないか。
これが気になって、アメリカーノ好きが高じて、他の国でも同じことを調べてみることにしました。
やり方はシンプルです。各国のStarbucksのGrandeサイズ相当のIced(またはHot)Caffè Americanoの価格を、その国でよく飲まれているローカルコーヒーチェーンのAmericanoの価格で割ります。これを「スタバプレミアム指数」と呼ぶことにします。
数字が大きいほど、スタバがローカルチェーンに対して高い価格帯に位置していることになり、数字が1に近いほど、スタバはローカルチェーンと大差ない価格帯にあるということになります。
単純な「1杯あたり何円か」という比較とは違って、その国のコーヒー市場の価格感覚を考えるひとつの目安にはなりそうです。
なお、各チェーンでカップ容量や抽出方法、店舗ごとの価格設定が異なるため、厳密な同一商品比較ではありません。あくまで「その国でアメリカーノを1杯飲むとき、スタバがローカルチェーンに対してどの程度プレミアムな価格なのか」を見るための目安としてご覧ください。
6カ国で比べてみました
価格は2026年8月時点で確認できたものを使っています。サイズや抽出方法の違いがある国は注記しました。
スタバプレミアム指数
インドネシア 2.26倍
Starbucks:Rp43,000(約384円)
Kopi Kenangan:Rp19,000(約170円)
韓国 約2.65倍
Starbucks:₩5,300(約596円)
Mega Coffee:₩2,000(約225円)※約710ml
タイ 2.25倍
Starbucks:฿135(約645円)
Café Amazon:฿60(約287円)
中国(上海) 1.8倍
Starbucks:27元(約637円)
Manner Coffee:15元(約354円)
ベトナム 約1.71倍
Starbucks:₫77,000(約467円)
Highlands Coffee:₫45,000(約274円)
日本 1.53倍
Starbucks:¥535
ドトール:¥350前後
※円換算は2026年8月17日時点の実勢レートを使用(1ルピア=0.0089円、1バーツ=4.78円、1元=23.6円、1ウォン=0.1125円、1ドン=0.0061円)。日々変動するため、あくまで目安です。
こうして円換算だけを並べると、また違う顔が見えてきます。Starbucksの1杯あたりの実額を円換算すると、今回比較した6カ国ではインドネシアが最も安くなりました。中国(約637円)、タイ(約645円)、韓国(約596円)と比べても、インドネシアの約384円はかなり安く見えます。
つまり、「日本円で見ると安い」という自分の最初の印象は、間違っていませんでした。ところが、ローカルチェーンとの価格差で見ると、インドネシアは2.26倍。今回比較した6カ国の中でも、韓国に次いで大きな価格差になりました。
円換算では一番安いのに、ローカルコーヒーと比べると2倍以上する。このギャップが、今回調べてみて一番面白かったところです。インドネシアのコーヒー価格そのものが、日本円に換算するとまだ安いというだけの話であって、少なくとも現地のコーヒー価格を基準にすれば、スタバが「安い店」とは言いにくいのです。
※日本のドトールの「アメリカンコーヒー」は、厳密にはスタバのCaffè Americano(エスプレッソにお湯を足したもの)とは抽出方法が異なり、ドリップコーヒーを薄く淹れたものです。同じ「アメリカーノ」という言葉でも中身が違う、という点は割り引いてご覧ください。
数字を並べてみると、意外と綺麗な構図が出てきました。
見えてきたこと
インドネシアとタイが2.2倍台で頭ひとつ抜けている——というのが当初の見立てでしたが、韓国のローカルチェーン価格を調べ直したところ、実は韓国が今回の6カ国で最も高い約2.65倍でした。インドネシア・タイの2.2倍台と合わせて、上位3カ国が2倍を超えています。中国は1.8倍、ベトナムは約1.71倍、日本は1.53倍でした。
これは、私にとっても意外でした。韓国は日本とそれほどコーヒー価格が変わらないだろうと勝手に思っていたのですが、韓国の代表的な低価格チェーン「Mega Coffee」では、アイスアメリカーノが2,000ウォン(約225円)という低価格で販売されています。しかもMega Coffeeは約710mlと、Starbucks Grande(約473ml)よりかなり大容量です。それでいてスタバの5,300ウォンと比べると、実に2.65倍の開きがあります。
つまり、少なくとも今回比較した6カ国では、「東南アジアの新興国だからスタバが高く感じられる」という単純な話ではないということが分かりました。韓国のように所得水準の高い国でも、格安チェーンが強い市場では、スタバのプレミアムはむしろ大きくなるのです。日本人の感覚だと、スタバはコンビニコーヒーよりは高いものの、特別驚くほどの価格ではありません。しかしインドネシア・タイ・韓国では、少なくとも価格面では、スタバが日常的なローカルコーヒーより一段上に位置していることが分かります。
この差を、日本の感覚に置き換えるとより実感しやすくなります。インドネシアではKopi Kenanganが19,000ルピア、スタバが43,000ルピアで約2.26倍でした。この倍率をそのまま日本に当てはめると、ドトールのアメリカンコーヒーMサイズ350円を基準にした場合、スタバは350円×2.26=約790円という感覚になります。日本のスタバは535円ですから、それよりもさらに「高い店」という位置づけです。そう考えると、インドネシアでスタバが「ちょっと高い店」であることが、急に実感しやすくなるのではないでしょうか。
これは、外国人旅行者や駐在者が現地で感じる「スタバは安い」という感覚と、現地の人が感じる「スタバはちょっと高い」という感覚が、同じ店・同じコーヒーを見ていながら実はズレている、ということでもあります。
自分がインドネシアでスタバを「安い」と思ったのは、日本円という物差しを持ち込んだからです。でも、現地のKopi Kenanganという物差しで測れば、スタバは決して安い店ではありません。
誰にとっての「安い」なのか
海外で暮らしていると、為替換算だけでは見えてこない「体感の物価」が少しずつ分かってきます。それは、スーパーの値札を見ているだけでは分からない、その国で実際に生活してみないと掴めない感覚です。
いつものアメリカーノ1杯から、そんなことを考えた8月でした。
価格出典(2026年8月時点)
インドネシア:現地店舗にて実購入(Starbucks/Kopi Kenangan)
タイ:Starbucksタイ価格情報、Café Amazon価格比較(The Nation)、Starbucksタイ値上げ報道(Khaosod English)
中国:Financial Times(上海でのStarbucks/Manner Coffee実地比較、355ml同容量)
ベトナム:Starbucksベトナムメニュー掲載価格、Highlands Coffee公式サイト
日本:Starbucks Japan公式、ドトールコーヒーショップ公式価格改定資料(PDF)
韓国:Starbucks Korea価格改定報道(ソウル経済)、Mega Coffee(公式サイトで約710ml容量を確認、価格は2026年3月時点の購入情報を参照)
為替レートは2026年8月17日時点の実勢レートを使用