インドネシアの伝統スナック「ウンピン(Emping)」の奥深い魅力

Indonesia Makassar

苦味の向こうにある、健康とくらし

食堂のテーブルに、いつも当たり前のようにある存在

インドネシアを訪れたことがある方なら、一度は目にしたことがあるはずです。

食堂(ワルン)やレストランのテーブルの上に、何の説明もなく置かれている薄い揚げせんべい。

料理が来る前、つい手を伸ばしてポリポリと食べてしまう――それがウンピン(Emping)です。

クルップック(Kerupuk)と並び、インドネシア料理には欠かせない存在でありながら、

「これは何?」と改めて説明されることは、ほとんどありません。

しかし、この何気ない一枚には、

長い歴史、独特の味わい、そして驚くべき健康効果が詰まっています。

マカッサルで生活するようになってから、ウンピンは「珍しい食べ物」ではなくなりました。

むしろ、ないと少し落ち着かない存在です。

本記事では、そんな在住者の視点も交えながら、ウンピンの魅力を掘り下げていきます。

ウンピンとは何か?インドネシアの日常に溶け込むスナック

ウンピンとは、インドネシアで古くから食べられてきた薄焼きの揚げせんべいです。

見た目は日本のえびせんに似ていますが、原材料も味わいもまったく異なります。

インドネシアでは、

食事の付け合わせ

おやつ

お酒のおつまみ

スープや炒め物のトッピング

など、用途は非常に幅広く、特別な料理というよりも

「そこにあるのが当たり前」の存在です。

原材料は「生命の樹」メリンジョ

ウンピンの原材料は、メリンジョ(Melinjo/Belinjo)という植物の実です。

ジャワ島を中心に、インドネシア各地やマレーシア周辺に自生しています。

メリンジョは、インドネシアでは古くから

「生命の樹」として大切にされてきました。

ジャワ島では、

「一家を構えると、必ずメリンジョの木を一本植える」

という言い伝えがあるほど、生活に根付いた植物です。

高さは5〜20メートルほどになり、オレンジから赤色の実をつけます。

その中にあるドングリほどの種が、ウンピンの原料になります。

ウンピンの作り方 驚くほどシンプルな伝統製法

ウンピンの製法は、とても素朴です。

メリンジョの種を取り出す

丁寧に叩き潰す

薄く成形して乾燥させる

食べる直前に油で揚げる

保存料や複雑な工程を必要とせず、

自然の素材を最大限に活かす知恵が詰まっています。

食べ方のポイント

ウンピンは乾燥した状態で販売されており、家庭では揚げて食べます。

油でサッと揚げる

揚げすぎると黒くなり、苦味が強くなるので注意

えびせんのように大きくは膨らまない

仕上げに軽く塩を振るだけで、十分に美味しくいただけます。

味の特徴 苦味がクセになる大人のスナック

ウンピン最大の特徴は、ほのかな苦味です。

初めて食べた日本人の多くは、

「少し苦い」

と感じるかもしれません。

実際、日本人の感想では、

ゴーヤのような後味

渋みが残る

甘辛く味付けすると煮干し菓子のよう

といった声がよく聞かれます。

しかし、この苦味こそがウンピンの魅力です。

慣れてくると、「この苦味がないと物足りない」と感じるようになります。

ウンピンは語られない食べ物

マカッサルで暮らしていると、ウンピンについて説明されることはほとんどありません。

健康に良いとか、伝統食品だとか、誰も語らない。

ただ、

家にある

食事の横にある

あると落ち着く

それだけです。

魚料理が多いマカッサルでは、

揚げ物や甘辛い味付けの料理の合間に、

ウンピンの苦味がちょうど良い口直しになります。

気づけば、料理を待つ間、会話をしながら自然と手が伸びている。

ウンピンは、主役ではなく、食卓のリズムを整える存在なのだと思います。

「健康に良いから食べる」わけではない日常

レスベラトロールやアンチエイジングといった話は、

あとから知ったことでした。

マカッサルの人たちは、

「体にいいから食べよう」

という意識でウンピンを食べていません。

親の世代が食べ、

そのまた親の世代も食べ、

結果として、それが健康につながっていた。

ウンピンは、理屈よりも先に生活がある食品です。

驚きの健康効果

近年、ウンピンが注目されている理由は、その健康効果です。

メリンジョの種には、レスベラトロールというポリフェノールが豊富に含まれています。

期待されている効果には、

  • 強い抗酸化作用
  • 老化防止(アンチエイジング)
  • がん予防
  • メタボリックシンドローム予防
  • 動脈硬化・心臓疾患予防
  • 認知症・眼病予防

などがあります。

調査によっては、ウンピンをよく食べる地域の平均寿命が全国平均より5〜6歳高いという結果もあります。

特別な健康食品ではなく、

毎日の食卓に自然にあるものが、

結果として健康を支えてきた。

それがウンピンです。

まとめ ウンピンは「静かに暮らしを支える一枚」

ウンピンは、

派手ではない

主張しない

語られない

それでも、長い時間をかけて人の生活に溶け込み、

健康と食卓を支えてきました。

マカッサルで暮らす中で感じるのは、

ウンピンは

気づけばそこにある存在だということです。

もし日本でウンピンを食べる機会があれば、

ぜひ一枚、ゆっくり味わってみてください。

その苦味の向こうに、インドネシアの暮らしが見えてくるはずです

 

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