常夏のクリスマス、実感ゼロの年末年始 – イスラム国家インドネシアの意外な12月

Indonesia Makassar

クリスマスが終わり、いよいよ年末が近づいてきました。日本なら冬の寒さが身に染みて、こたつに入りながら紅白歌合戦を見る準備をする頃だと思います。しかし、ここインドネシアでは全く状況が違います。外は相変わらず30度を超える暑さで、半袖短パンで過ごす毎日に、年末という実感がまったく湧いてきません。

南国で迎える年末年始は、日本人の私にとって不思議な体験です。カレンダーは確かに12月26日を指しているのに、体感としては真夏のままです。この季節感のズレが、インドネシア生活の面白さであり、戸惑いでもあります。

イスラム国家なのにクリスマスは祝日

インドネシアといえば、人口の約90パーセント近くがイスラム教徒という世界最大のイスラム国家です。普段の生活でも、一日5回の礼拝時刻にはモスクからアザーンが聞こえています。

そんなイスラム色の強い国で意外なのが、クリスマスが国民の祝日になっていることです。12月25日はしっかりと休日に設定されており、多くの企業や学校が休みになります。これは、インドネシアが多様性を重んじる国だからこそで、建国5原則「パンチャシラ」には「唯一神への信仰」が掲げられ、イスラム教だけでなくキリスト教、ヒンドゥー教、仏教など多様な宗教を認めています。

そのため、クリスマスもイスラム教徒のイドゥル・フィトリも、ヒンドゥー教のニュピも、すべて国民の祝日として平等に扱われています。宗教的寛容さが制度として機能している姿は、日本人の私からすると新鮮で、学ぶべき点が多いと感じます。

モールは完全にクリスマスモード

祝日になっているとはいえ、実際どれほどクリスマスムードがあるのか気になり、大型ショッピングモールに足を運んでみました。すると、その光景に驚かされました。

入口には巨大なクリスマスツリー、天井から吊るされる赤と緑のオーナメント、BGMには「ジングルベル」や「サンタが街にやってくる」。モール内は家族連れやカップル、若者で賑わい、ヒジャブをかぶった女性がクリスマスデコレーションの前で写真を撮り、子どもたちはサンタと記念撮影をしています。

もちろん、彼らにとってクリスマスは宗教的意味を持っているわけではありません。年に一度の大規模セールのタイミングであり、家族や友人と楽しむイベントとして受け入れられています。この感覚は、日本で多くの人が楽しむクリスマスの距離感に近いかもしれません。

圧倒的なセール文化に驚く

インドネシアのクリスマスシーズンで最も印象的なのは、何と言ってもセールの規模です。日本でも年末セールはありますが、インドネシアのそれは桁違いです。

モールに入ると「SALE 70% OFF」「BUY 1 GET 1 FREE」「MEGA DISCOUNT」の文字が視界に飛び込んできます。アパレル店ではスタッフが声を張り上げ、電化製品店では通常価格から50%以上安い商品が山積みです。カートいっぱいに商品を詰め込む若者、大型テレビを抱える家族、両手に袋を提げた主婦の姿。レジには長蛇の列ができ、まるで戦場のような熱気が漂っています。

中間層の拡大、スマホ普及、EC市場の成長など背景はさまざまですが、実際に店頭へ出向き、手に取り、買い物という行為自体を楽しむ空気があります。そして、宗教行事や記念日ごとにこうしたセールが繰り返されるのも特徴です。ラマダン明け、独立記念日、クリスマス……消費へのエネルギーには驚かされます。

常夏の国に季節感はない

モールでの体験を終えて外に出ると、現実に引き戻されます。灼熱の太陽、陽炎の立つ道路、汗ばむ空気、これが12月末の光景です。日本なら雪が降り、コートやマフラーの季節ですが、ここでは半袖短パンで十分です。

インドネシアには四季がなく、雨季と乾季のみ。12月は雨季にあたり、スコールが降ることはありますが、それでも暑さは変わりません。この季節感のなさが年末の実感を奪っていきます。日本で当たり前だった“寒さ”という季節の演出が、ここには存在しないのです。

時間は進んでいるのに、季節という錨がないため現実感が薄れるような、不思議な感覚に包まれます。

それでも年末は年末

季節感がなくても、年末はやってきます。友人たちは予定を立て、実家へ帰省したり、ビーチへ出かけたり、パーティーを企画したりと、それぞれの年越しを準備しています。

イスラム国家でありながらクリスマスが祝日で、モールでは大規模なセールが広がり、気温は30度を超える常夏の中で日常が続く、これがインドネシアの年末です。

日本人の私にとって季節のない年末は奇妙で実感が湧きませんが、同時に「自分が季節と共に生きてきた」という事実にも気づかされます。雪が降るクリスマス、寒さが染みる年末、こたつと紅白、それらは当たり前ではなく、文化と気候の産物だったのだと痛感します。

世界にはさまざまな年末の形があります。寒い国、暑い国、宗教の違い、文化の違い。それでも「新しい年を迎える期待」と「一年を過ごせた感謝」は、どこにいても変わりません。それこそが年末の本質なのだと感じます。

私自身も、この暑さの中でどう年末を過ごすか考えています。季節感がなくても、時間は確実に流れ、あと数日で新しい年がやってきます。この常夏の年越しも、私の人生の大切な一ページになるはずです。

あと数日で新年です。暑さの中でも、心はすでに新しい一年へ向かって動き出しています。

 

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