スラバヤ最古のアイス店「ザングランディ」へ！90年続くレトロな味と空間を体験
スラバヤで最も古いアイスクリーム店「ザングランディ（Zangrandi Ice Cream）」は、1930年創業の歴史ある甘味処。イタリア移民が始めたこの店は、欧州スタイルの伝統製法を今も守り続け、昔ながらの味わいが楽しめます。ステンドグラス風の窓やラタン椅子が並ぶレトロな空間で、“時を食べる”ようなひとときを楽しみました。
スラバヤ老舗アイス店「Zangrandi」
迫力ある潜水艦記念碑博物館（Monumen Kapal Selam）の見学を終えたあとは、赤道直下の陽射しに火照った体をクールダウンしたくなります。そんなとき、「このすぐ近くに、スラバヤで一番古いアイスクリーム店がある」という情報を得て向かったのが、「Zangrandi Ice Cream（ザングランディ・アイスクリーム）」。創業はなんと1930年。インドネシアがまだオランダ領だった時代から続く、歴史ある名店です。
潜水艦博物館からは徒歩約7〜8分。川沿いの並木道を抜けて現れる、クラシカルな赤い看板とレトロな洋館。ここが、時を越えて地元の人々と旅行者を惹きつけてきた“甘味の殿堂”です。
ザングランディの始まり
ザングランディの歴史は、1930年、スラバヤがまだ“オランダ領東インド”と呼ばれていた時代に始まります。当時のスラバヤは、オランダによる植民地経営の重要拠点であり、貿易港・軍港・鉄道網が整備された戦略都市でした。欧州人居住区やカフェ、ホテルが立ち並び、“オランダ風の暮らし”が色濃く残る場所でもありました。
そのような時代背景の中で、イタリア系移民のロベルト・ザングランディ氏がこの地に移り住み、欧州仕込みのアイスクリーム技術を活かして開業したのが「Zangrandi Ice Cream」の原点です。高温多湿の東南アジアにおいて、ヨーロッパ式の冷菓文化は“洗練された涼”として人々を魅了し、欧州人や富裕層インドネシア人の間でたちまち評判となりました。
場所として選ばれたJl. Yos Sudarso通りは、当時から外交官邸や洋館が建ち並ぶ格式あるエリアであり、文化的ステータスを象徴する立地でもありました。
1930年創業、時を閉じ込めたパーラー
ザングランディは、創業当初から“手づくりの味”と“欧風の空間演出”にこだわり続けています。ステンドグラス風の窓、ラタンの椅子、タイル張りの床は今もほぼ当時のまま。冷房の効いた店内に一歩足を踏み入れると、90年前の空気がふわりと漂ってくるような感覚に包まれます。
第二次世界大戦、独立戦争、政変、経済危機──数々の激動の時代を経ても、ザングランディが閉店することは一度もありませんでした。政治が不安定な時代でも、「ここに来れば、変わらぬ味がある」と人々に安心感を与えてきた存在です。
現在も、アイスクリームは昔ながらの製法で手づくりされています。開店から90年以上が経った今でも、変わらぬ人気を保ち、連日多くの人々でにぎわっています。
“王道”バニラ＆ビターなチョコレート
席に着くと、スタッフがメニューを手渡してくれました。分厚く、年季の入ったメニューには、色とりどりのサンデーやクラシックなデザートがずらりと並んでいます。
初めての訪問で選んだのは、定番中の定番「バニラ」と「チョコレート」のダブルスクープ。お値段は70,000ルピアです。
バニラは真っ白ではなく、卵黄をたっぷり使った淡い黄金色。スプーンを入れると粘度があり、ひと口食べるとミルクのコクがふわっと広がり、そのあとにバニラビーンズの香りが上品に追いかけてきます。甘すぎず、リッチなのに後味はさっぱり。まさに“クラシックな手づくり”の真骨頂といえる味わいです。
チョコレートは、艶やかでなめらかな見た目が印象的。ひと口食べるとカカオの濃厚な苦味が広がり、黒糖のようなコクがあとからゆっくりと追ってきます。インドネシアの暑さの中でも重たくならないのは、カカオバターとミルクの絶妙な配合による“軽やかな口溶け”が理由とのこと。
2種類を交互に食べると、甘味と苦味がちょうどよくリセットされ、まるで二楽章構成のクラシック音楽を聴いているかのような心地よさがありました。
まとめ
観光のハイライトが名所や絶景ではなく、「ひとさじのアイスクリーム」になる──そんな体験は、案外、心に残るものです。
ザングランディ本店は、スラバヤの都市史とともに歩み、味を守り、空間を磨き続けてきた“生きた文化財”のような存在です。クラシカルな店内で、90年前と変わらぬレシピに浸りながら、まるで歴史の一部を味わっているかのようなひとときを過ごせました。
ザングランディでやさしく甘い余韻を味わう──そんな1日の締めくくりに、ぜひこの場所で“時を食べる”ひとときをどうぞ。
アクセスと基本情報
店名：Zangrandi Ice Cream – Yos Sudarso 本店
住所：Jl. Yos Sudarso No. 15, Genteng, Surabaya
アクセス：潜水艦記念碑博物館から徒歩約7〜8分。Tunjungan Plazaからも徒歩圏内
