【インドネシア賃金上昇】でも人々は豊かにはなれないのか

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インドネシアの最低賃金はこうして決まる

インドネシアの各州が、2021年の州最低賃金(UMP)を発表しました。

最低賃金の決め方ですが、「前年の9月から当該年の9月期の物価上昇率」と「前年第3・4四半期(7~12月)と当該年の第1・2四半期(1~6月)のGDP成長率」の和と定められています。

インドネシアの最低賃金は州ごとに設定され、毎年1月1日に改定されます。州によっては、そこから県・市レベル、さらには業種別分類で、県知事、市長がそれぞれの水準を決定しています(業種の種類は、各地域の主要産業によって異なる)。

各州は11月1日までに、県・市は11月21日までに決定・発表することが義務付けられており、2021年分については、最低賃金が出揃いました。2021年に関しては、コロナ感染で多くの州が最低賃金を据え置く中、ジャカルタ首都特別州、中部ジャワ州、東ジャワ州、ジョグジャカルタ特別州、南スラウェシ州が引き上げを発表したところです。

2021年の州最低賃金をめぐっては、イダ・ファウジヤ労働相が新型コロナ禍において労働者に対する保護と労働継続性を提供すると同時に、雇用者・企業の事業継続性を維持するために、各州に2020年の金額から引き上げないよう調整を求めるよう要請していました。

最低賃金は、国が一律で決めているわけではないので地域差があるのですが。下記は2009年と2014年と2019年、2020年までの最低賃金と、2021年を比較する表となります。

2009年からの12年あまりで賃金は、ジャカルタの4倍以上に増加しているのを筆頭に2.5から3.5倍に増加しています。ジャカルタ特別州をはじめ、その周辺のブカシ、カラワン、スラバヤ等の日系工場が集中するエリアはかなり給与が高めに設定されています。

それと比べると西、東、中部ジャワ州やジョグジャカルタ地域は上昇していますがかなり給与が低めです。ジャカルタとジョグジャカルタでは、地域間で2.5倍もの格差がついています。

最低賃金上昇で豊かになったのか

インドネシアで毎年のように最低賃金が上がっていて国民が豊かになって、恩恵はあるのかというとそうでもないようです。

中小企業の経営を圧迫

最低賃金の上昇は人件費に直結します。そして中小企業にとって予算を大きく占めるのも人件費となります。企業としては賃金が毎年上がるとわかっているとなかなか人の採用新規採用決定を出せないのです。企業の拡大には営業力と採用が欠かせないので、この人件費の上昇は非常に厳しいようです。最悪の場合、ローカルなら倒産、外資なら撤退です。

失業者が増加

人件費が上がっても企業の保有しているお金の量は増えるわけではありません。予算も好成績でなければそんなに簡単には増えませんし。利益が同じなのに人件費が上がるということは単純な赤字になり、真っ先に末端のスタッフたちがリストラになります。

スタッフからしたら給料が上がるかと思ったらクビ切られるとか最悪な結末です。本当にある話で、最近日系企業でも、撤退するつもりはないし利益も出ているけど、採用はストップしたいとか、むしろ人減らし中という話よくあります。

格差は縮まらない

最低賃金上昇の目的はやはり給与格差の是正です。でもその給与格差が縮まりません。
まず、全ての企業で最低賃金が守られていません。最低賃金を守るのは大企業や外資系では当たり前ですが(監査があるため)、それ以外の中小企業では守られていない企業もたくさんあります。とくに新卒や警備員、清掃員などはいまだに給与が悪く、最低賃金が守られていないケースが多々あります。その人たちは結局最低賃金の概念が適用されていないようです。

また、国民の大多数を占めている農民やワルンやカキリマ(個人の小規模商店や移動式屋台)や物売りなどは個人事業主なので当然ここに含まれません。

他の人も給与上昇している

もし最低賃金を守られたとしても格差が縮まらない理由は他の人も給与が上がってしまうからです。
例えば最低賃金が300万Rpな地域があったとして、次の年に350万Rpになったとします。そうすると300万Rp最低給与だった人は嬉しいですが、元々350万Rpもらっていた人からはもっと給料をあげろと言われてしまいます。

ちなみにベースアップ(ベア)は国際競争において競争力の低下を招くとも言われていて、特に製造業はこの影響を受けると言われています。

インドネシアの主要産業は農林水産業と製造業で40%を超える輸出メインの国なので、ベアがあると輸出価格に反映されて、結局製品価格に跳ね上がり仕事が無くなってしまいます。

インフレ傾向で物価も上昇

毎年のように賃金を上昇させていますが、物価上昇とともの賃金も上げていますので、もらえる給料が増えても、その分だけ物やサービスの価格も上昇しているため、人々の暮らしは以前と変わらないということです。今回のコロナの影響を受けてさらに暮らしが厳しくなり、失業率も増えて格差がより広がっています。

人口が増加しても、その分の仕事がない状態が続くと、インドネシアの成長にもブレーキがかかるような状態にもなりえる可能性もあります。

 

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