週末ブルネイ旅!ロイヤルブルネイ航空BI736便で静寂の王国へ向かう空の時間
「初めてのブルネイ」と「初めてのロイヤルブルネイ航空」
人生初のロイヤルブルネイ航空への搭乗。ASEAN11カ国制覇を目標に掲げた旅の中で、ついにたどり着いたブルネイ行きのフライトは、予想以上に独特で、新鮮で、どこか厳かな雰囲気を感じさせるものでした。
イスラム国家ならではの機内文化、静かに流れる祈りの映像、穏やかなサービス。そして窓の外に広がるボルネオ島の深い森と海。これまで乗ってきた航空会社とは少し違う、どこか”神聖さ”のある空の旅です。
ここからは、ジャカルタを離陸してからブルネイ・バンダルスリブガワンに着くまでの、機内での体験をじっくりお伝えします。
機内に流れる祈りの映像 ― ロイヤルブルネイ航空らしさを感じる瞬間
座席に着き、シートベルトを締めて待っていると、機内のモニターに流れてきたのは安全ビデオ…ではなく、まずイスラムの祈りの映像でした。
画面には、美しいモスク、川沿いに広がるカンポンアイールの景色、そしてアラビア語の祈りの言葉が映し出されます。字幕にはこう書かれていました。

「In the name of Allah, we invoke His name as we embark on this journey and even when we are at rest(アッラーの名をもって、この旅路と休息の時の安寧を祈ります)」
これまで数多くの航空会社に乗ってきましたが、出発前に祈りの映像が流れる航空会社は珍しく、ブルネイという国の文化がダイレクトに伝わってくる瞬間でした。機内は静かで、周囲の乗客も真剣に画面を見つめています。
その雰囲気は、ただの移動ではなく「旅が始まった」という感覚を強く呼び起こしてくれました。宗教的な背景を持たない私にとっても、この時間は旅の意味を考えさせてくれる、特別な瞬間となりました。

機内エンタメと落ち着いたキャビン ― 独立系キャリアならではの雰囲気
続いて安全ビデオが流れ、キャビンの照明が少し落とされます。ロイヤルブルネイ航空の制服はイスラム文化を反映したエレガントなデザインで、落ち着いたブルーカラーがとても印象的です。キャビンアテンダントの方々は、全員ヒジャブを着用しており、その佇まいには品格と落ち着きが感じられます。

機材はA320neo。最新機材というわけではありませんが、シートは清潔で、前席モニターも程よく新しいものです。足元スペースも国内線A320より広く感じられ、機内は終始静かで穏やかな雰囲気に包まれていました。

座席に座って周囲を見渡すと、乗客の構成も多様です。ビジネスマン、観光客、現地に帰るブルネイ人家族。しかし、どの乗客も静かで、機内全体が落ち着いた空気に包まれています。これは他の東南アジア路線ではあまり感じたことのない雰囲気でした。
キャビンアテンダントの所作は控えめで丁寧です。派手すぎず、凛とした雰囲気があり、どこか日本の航空会社に近い落ち着きを感じます。笑顔は穏やかで、サービスは効率的。必要以上に話しかけてくることもなく、程よい距離感が心地よく感じられました。
離陸 ― ジャカルタからカリマンタン島へ
滑走路へ向かい、テイクオフ。大都市ジャカルタの景色を背に、機体はカリマンタン島へ向けて北上していきます。窓際の席から見えるのは、ジャカルタの北の海に浮かぶプラウスリブ(1,000の島)の小さな島々です。青く澄んだ海に点在する島は、都会から一気に別世界へ飛び込んだような気持ちにさせてくれます。

離陸してしばらくすると、ジャカルタの喧騒が遠ざかり、眼下には広大な海が広がります。こんな穏やかなフライトは久しぶりだと感じながら、窓の外を眺めていました。

南シナ海の上空は驚くほど穏やかで、揺れもほとんどありません。ロイヤルブルネイ航空は機内アナウンスも必要最低限で、静けさが心地よく続きます。他の航空会社では、離陸後すぐに免税品の販売アナウンスが流れたり、何度もキャビンアテンダントが通路を行き来したりしますが、この便は違いました。
本当に静かなのです。その静けさが、旅の時間をゆっくりと味わうことを許してくれているような気がしました。
機内食 ― しっかり味のローカル料理とコーヒーの香り
離陸して30分ほどすると、機内食のサービスが始まりました。ロイヤルブルネイ航空は、LCCではなくフルサービスキャリアです。わずか2時間のフライトでも、温かい機内食が提供されるのは嬉しい驚きでした。
キャビンアテンダントがカートを押しながら近づいてきます。「チキンかビーフ、どちらになさいますか?」と尋ねられ、私はチキンを選びました。

この日のメニューは、スパイスの効いたチキン、白米、野菜炒めという、どこかマレーシアとインドネシアの中間のような味付けでスパイシーな香りが漂ってきます。見た目はシンプルですが、一口食べると、味がしっかりしていることに気づきます。
チキンは柔らかく、スパイスの効き方が絶妙です。辛すぎず、でも物足りなくもない。ちょうどいい塩梅で、白米との相性も抜群です。野菜炒めも新鮮で、シャキシャキとした食感が残っています。香ばしいフライドオニオンが添えられており、これがまた良いアクセントになっていました。
付属のケーキはローカル感満点のしっとり系スイーツで、ココナッツの風味が感じられます。コーヒーとの相性が抜群で、食後の余韻を楽しむ時間になりました。
アルコールは提供されないため、飲み物はソフトドリンクかホットドリンクのみです。これはイスラム国家の航空会社ならではですね。私はコーヒーを注文しました。コーヒーを一口飲むと、なぜかとても落ち着く味で、機内食を食べながらゆっくりと時間が流れていくのを感じました。
機内食を食べ終わり、再び静かな時間が戻ってきます。この静けさが、ロイヤルブルネイ航空の大きな魅力の一つだと感じました。

空から見下ろすボルネオ島 ― 緑の海のような熱帯林
機内食を終えるころ、外の景色が変わってきます。深い緑が果てしなく広がり、まるで”大地の海”のようです。ここがボルネオ島。インドネシア(カリマンタン)、マレーシア、ブルネイの3カ国が共有する巨大な島で、密度の高い熱帯林が特徴です。

窓にへばりつくように外を眺めると、どこまでも続く緑の絨毯が広がっています。時々、川が蛇行しながら森を貫いている様子が見えます。その川は、茶色く濁っており、熱帯林から流れ出る土砂を含んでいることがわかります。

その中に突然現れるのが、整然と区画されたパーム油農園です。幾何学的に配置されたヤシの木が、自然の森とは明らかに異なる人工的な景観を作り出しています。また、長い滑走路のある施設も見えました。おそらく、石油関連の施設でしょう。
空から見るボルネオ島は、自然と人間活動の対比が強く、非常に印象深い景観でした。この島には、オランウータンやボルネオゾウなど、希少な野生動物が生息していると聞きます。しかし同時に、森林伐採や農園開発も進んでいる。複雑な現実が、この上空からの眺めに凝縮されているような気がしました。

やがて、森の中に小さな集落が点在し始めます。ブルネイに近づいているのでしょう。集落の周りには水田のような場所も見え、人々の生活の営みが感じられます。
着陸 ― 静寂の国ブルネイへ
やがて機体は高度を下げ、ブルネイ国際空港が視界に入ってきます。空港はコンパクトで、周囲は森に囲まれ、とても静かです。東南アジアの首都の空港とは思えないほど穏やかな雰囲気が漂っています。

着陸態勢に入り、シートベルトサインが点灯します。機体はゆっくりと高度を下げ、滑走路に向かっていきます。着陸の瞬間、タイヤが地面に接地する音が響き、無事にブルネイの地に降り立ちました。

機体はゆっくりとターミナルへ向かいます。その途中、駐機場には鮮やかな黄色の尾翼を持つロイヤルブルネイ航空の機体が何機も並んでいました。その中には、ブルネイ観光をテーマにした特別塗装機もあり、到着早々ワクワク感が高まります。
窓の外を眺めていると、空港の建物が見えてきました。モダンなデザインですが、どこかイスラム建築の要素も感じられる、独特の外観です。

ブルネイ国際空港 ― 清潔で静かで”整っている”空港
ターミナルに入ると、まず驚くのは「静かさ」と「清潔さ」です。床はピカピカで、案内表示はシンプルで見やすく、無駄な広告も少ない。”整っている国”という印象が一気に広がります。

空港内は広々としており、天井が高く、自然光がたっぷりと入る設計になっています。他の東南アジアの空港のような混雑や喧騒はなく、落ち着いた雰囲気が漂っています。

入国審査はスムーズでした。事前登録したE-Arrival Cardのおかげで、質問も最低限です。審査官は全員女性で、丁寧にパスポートを確認し、スタンプを押してくれました。「滞在期間は?」「ホテルはどこ?」といった基本的な質問に答えると、あっさりと通過できました。
入国審査へ向かう通路を歩いていると、ブルネイの観光スポットを紹介するポスターが目に入ります。黄金のモスク、カンポンアイール、熱帯雨林。どれも魅力的で、早く街に出たいという気持ちが高まります。

荷物受取所も広く、人も少なく、数分で入国できてストレスゼロの空港体験です。税関申告も手荷物だけだったので、そのままスルーで、あっという間に到着ロビーに。
空港内の吹き抜け空間は開放的で、光がたっぷり入る心地よい空間になっています。椅子もたくさんあり、ゆっくり休憩することもできます。空港にいるだけで、この国の豊かさと落ち着きが伝わってくるようでした。

まとめ ― ロイヤルブルネイ航空は「静かな旅」が好きな人にぴったり
今回のロイヤルブルネイ航空BI736便の旅は、これまでの東南アジア路線とは少し違う体験でした。
出発前の祈りの映像から始まり、静かで落ち着いた客室、控えめで丁寧なサービス、しっかりした温かい機内食、そしてボルネオ島の雄大な景色。最後に到着した静寂に包まれたブルネイ国際空港まで、すべてが一貫して「静かな旅」を演出していました。
派手さはありません。エンターテインメントが充実しているわけでもありません。しかし、旅そのものを”リセットの時間”として味わうには最高の航空会社だと感じました。
日常の喧騒から離れ、静かに自分と向き合う時間。窓の外に広がる雄大な自然を眺めながら、旅の意味を考える時間。ロイヤルブルネイ航空は、そんな時間を提供してくれる航空会社でした。これから始まるブルネイ滞在への期待が、空港を出る頃には最高潮に達していました。