バリ旅行、家族4人ならビザ代だけで3万6000円超? インドネシアVOA「100万ルピア」値上げ案を考える
インドネシアのVOA(到着ビザ)が、100万ルピアになるかもしれない。
現在は50万ルピアなので、実現すれば一気に2倍です。最初にこのニュースを見たとき、「100万ルピア?」と二度見しました。
ただし、ここで最初にお断りしておきます。
2026年8月16日現在、100万ルピアへの値上げは正式に施行されたものではありません。 インドネシア入国管理総局(Ditjen Imigrasi)が8月12日のメディアブリーフィングで示した料金改定案が、現地メディアで報道されている段階です。今後、正式決定や施行時期、料金体系が変更される可能性があります。
この記事では、現時点で報道されている内容をもとに、「もしこの料金になったら、インドネシア観光にどんな影響があるのか」を考えてみたいと思います。
そもそもVOAとは?
VOA(Visa on Arrival)は、日本人を含む対象国の旅行者がインドネシアに観光などで入国する際に、空港や事前オンラインで取得できるビザです。現在の料金は50万ルピア(1回30日滞在、1回のみ30日延長可能)。事前にオンラインで取得する「e-VOA」も同じ料金で利用できます。日本は引き続きVOA対象国です。
今回、何が変わろうとしているのか
入国管理総局長のHendarsam Marantoko氏が、2026年8月12日(水)にジャカルタの入国管理総局本部で開いたメディアブリーフィングで示した案は、次のような「二段階料金」です。
| 取得方法 | 現在 | 新料金案 |
| e-VOA(渡航前オンライン) | Rp500,000 | Rp750,000 |
| VOA(空港到着時) | Rp500,000 | Rp1,000,000 |
つまり、事前にe-VOAを取得しておけば75万ルピア、到着してから空港で手続きすると100万ルピア、という仕組みです。
なお、この記事執筆時点(2026年8月16日)で、正式な施行日はまだ発表されていません。案が政府の正式な手続きを経て初めて有効になります。
家族4人でバリへ行ったら?
ここが一番気になるところだと思います。まずはVOA単体で計算してみます。
現在なら、VOAだけで
50万ルピア × 4人 = 200万ルピア
ところが到着時VOAが100万ルピアになれば、
100万ルピア × 4人 = 400万ルピア
1円=Rp112前後(2026年8月時点のレート)で計算すると、約3万6000円。事前にe-VOAを取得しても、
75万ルピア × 4人 = 300万ルピア(約2万7000円)
となり、事前取得でも現在の1.5倍、到着時に取得する場合は2倍となります。
さらに、バリの場合はここに外国人観光客向けの観光税(Bali Tourist Levy、バリ州政府が徴収)が1人15万ルピアかかります。4人家族なら60万ルピア(約5400円)。VOAと合算すると、
VOA 400万ルピア + 観光税60万ルピア = 460万ルピア(約4万1000円)
です。もちろんこれは「値上げ案が実施された場合」のシミュレーションであり、現時点で確定した金額ではありません。また、ここでの円換算額は為替レートによって変動します。
だったらタイやマレーシアに行こう、となりませんか?
日本人が短期旅行する場合、周辺国は多くがビザ免除です。
タイ → ビザ免除
マレーシア → ビザ免除
ベトナム → ビザ免除
インドネシア → VOA+バリなら観光税
家族旅行の行き先を決める段階で、この差は小さくないのではないか、というのが率直な感想です。
なぜインドネシア政府は値上げしようとしているのか
政府側の事情もきちんと見ておく必要があります。理由は主に二つです。
一つはPNBP(非税国家収入)の底上げです。Marantoko氏は「VOAは現在50万ルピアしかないが、ルピアの為替は変動が大きく、この金額は小さすぎると感じている」と述べ、調整の必要性を説明しています。入国管理総局によると、2026年8月10日時点の非税国家収入は約6兆5000億ルピアで前年同期比6.68%増、年間目標(8兆5190億ルピア)の76.81%に達しており、そのうちビザ関連サービスが54.9%を占めています。
もう一つは、空港の混雑緩和です。Marantoko氏は、事前にe-VOAを取得する人は75万ルピア、到着後に現地で手続きする人は100万ルピアという価格差をつけることで、出発前のオンライン申請を促し、空港カウンターでの行列を減らしたいと説明しています。あわせて、スカルノ・ハッタ国際空港の入国審査サービスがSkytraxの「World’s Best Airport Immigration Service」で2年連続世界トップ10に入り、2026年は10位となったことにも触れ、この評価を維持・向上させたい考えも示しています。
単なる「外国人からもっとお金を取ろうとしている」という話ではなく、行政側なりの合理性があることは公平に見ておきたいところです。
インドネシアは「安い観光地」を卒業したいのか
バリは以前に比べて、ホテル代、レストラン代、Grabなどの交通費もかなり上がっています。そこに観光税、さらに今回のVOA値上げ案が重なります。
インドネシアでは近年、「観光客の人数」だけでなく、より消費額の大きい観光客を重視する方向性も打ち出されています。ただし、今回のVOA値上げ案が、それを直接の目的としたものかは別の話です。政府が説明しているのはあくまでPNBPの適正化と空港の混雑緩和であり、値上げがそのまま「質の高い観光客」の増加につながるとは限りません。むしろ価格に敏感なファミリー層や、ASEANを周遊する旅行者が他国へ流れる可能性もあります。
インドネシアに住んでいると、少し心配になる
私自身、インドネシアに長く住んでいるので、もっと多くの日本人にインドネシアへ来てもらいたいと思っています。バリだけでなく、ジャカルタ、ジョグジャカルタ、スラウェシ、フローレスなど、面白い場所はたくさんあります。
だからこそ、「VOAだけで家族4人3万6000円、観光税まで含めると4万円超」という金額が、旅行の最初のハードルになってしまわないか。少し気になっています。
100万ルピアのVOAは、インドネシア観光にとって「収入増」になるのか。それとも「旅行者離れ」につながるのか。今後の正式発表と、旅行者の反応を見ていきたいと思います。
※本記事は2026年8月12日のメディアブリーフィングで示された料金改定案と現地報道をもとにしています。2026年8月16日時点で正式な施行日・料金は確定しておらず、今後の政府・入国管理当局の発表により変更される可能性があります。また、本文中の円換算額は2026年8月時点のJPY/IDRレート(1円=Rp112前後)に基づく参考値であり、実際の為替レートによって変動します。