ガルーダの預け荷物が「個数制」へ。空港に並ぶ大量の箱はどうなるのか
インドネシアの空港で、預け荷物のカウンターを眺めていると、ときどき驚くほど大量の荷物に出会います。
スーツケースではありません。マカッサル発の便では、カチャンディスコ(衣をつけて揚げた甘辛い豆菓子で、マカッサルの定番土産)を詰めたような段ボール箱が、十個、二十個と並んでいることがあります。ハッジやウムラの時期には、同じ形をしたザムザム水の箱が、床一面に積まれていることもあります。
あれを見るたびに、私は少し不思議に思っていました。
ガルーダ・インドネシア航空の預け荷物は、一体どういう基準になっているのだろう。
その基準が、2026年9月1日から変わります。
合計重量から、荷物の個数へ
ガルーダ・インドネシア航空は、無料受託手荷物の計算方法を、これまでの「Weight Concept(重量制)」から「Piece Concept(個数制)」へ変更すると発表しました。
対象になるのは、2026年9月1日以降に購入または発券される航空券です。9月1日以降の搭乗便が一律に対象になるわけではなく、8月31日までに発券された航空券には、原則として従来の重量制が適用されます。
新しい制度では、国内線エコノミークラスは最大1個・23kg、国際線エコノミークラスは最大2個・それぞれ23kgが目安になります。ビジネスクラスとファーストクラスは、最大2個・それぞれ32kgです。
ただし、路線や予約クラス、運賃の種類によって条件は異なります。最終的な基準は、Eチケットに記載される個数と重量です。
20kg以内なら、何箱でもよかったのか
これまでの重量制では、無料枠が20kgなら、基本的に見られるのは荷物全体の重量でした。
大きなスーツケース1個で20kgでも、小さな段ボール箱を4個に分けて合計20kgでも、重量としては同じです。もちろん、1個当たりの重量やサイズ、安全上の制限はあります。それでも個数制と比べれば、かなり融通が利きました。
空港で大量の箱が並んでいる背景には、もう一つ理由があります。
家族や団体旅行の場合、代表者や旅行会社の係員が、複数人分の荷物をまとめてチェックインすることがあります。仮に10人の団体で1人20kgなら、全体では200kgです。小さな箱に分ければ、数十個になっても不思議ではありません。
見た目には一人が大量に預けているようでも、実際には複数の搭乗者に分けて手荷物タグが付けられている場合があります。
ザムザム水は、普通の預け荷物とは違う
ザムザム水とは、サウジアラビア・メッカの聖地にある泉から汲まれる水のことです。イスラム教徒にとって特別な意味を持つ水とされ、ハッジ(メッカ巡礼)やウムラ(小巡礼)に訪れた人の多くが、記念や贈答用として持ち帰ります。
ハッジやウムラから戻る人たちが持っているザムザム水は、通常の預け荷物とは少し扱いが違います。航空会社によっては、所定の条件を満たしたザムザム水を、通常の受託手荷物とは別の基準で扱う運用があります。
ガルーダについては、今回公表された一般旅客向けの新しい手荷物規定だけでは、ザムザム水の具体的な取扱いを確認できませんでした。ただ、ハッジ専用便やウムラ向け運賃、旅行会社との団体契約には、一般の航空券とは異なる条件が設定される可能性があります。
空港で大量のザムザム水が並んでいても、一人が何十箱も持ち帰っているとは限りません。巡礼団の一人ひとりが持ち帰る分が、団体チェックインによって一か所に集められている可能性があります。
そのため、9月から個数制に変わっても、ザムザム水の箱が空港から消えるわけではありません。
23kgに増えても、便利になるとは限らない
これまで無料枠が20kgだった国内線航空券の場合、新制度では1個23kgとなり、数字の上では預けられる重量が増えるように見えます。
しかし、「1個」という条件が付きます。
例えば、15kgのスーツケースと5kgのお土産箱を預ける場合、合計は20kgです。これまでは無料枠に収まりましたが、新制度でEチケットに「1 piece × 23kg」と記載されていれば、2個目の箱は追加手荷物として扱われる可能性があります。
反対に、国際線エコノミーで「2 pieces × 23kg」と書かれていても、46kgを一つのスーツケースに詰めることはできません。2個に分け、それぞれを23kg以内にする必要があります。
重量だけではなく、まず荷物の「数」を確認しなければならなくなります。
あの大量の箱を見れば、変更の背景も少し見えてくる
ガルーダは今回の変更について、手荷物条件を分かりやすくし、国際的な航空会社の基準に合わせるためだと説明しています。
確かに、これまでの重量制は利用者にとって自由度が高い一方、空港側から見れば、軽い段ボール箱が何十個も預けられることになります。荷物は一つずつタグを付け、仕分け、積み込み、到着後に返却しなければなりません。
ガルーダが、荷物処理の手間を減らすことを今回の変更理由として明言しているわけではありません。それでも、同じ総重量なら、20kgのスーツケース1個より、2kgの箱10個の方が、タグ付け、仕分け、積み込み、返却に手間がかかることは想像できます。
私はこれまで、空港に積まれたカチャンディスコの箱やザムザム水を見ながら、「これはどういう基準なのだろう」と思っていました。
今回の変更を知って、ようやく少し腑に落ちました。同時に、マカッサル発の便でよく見かけた、カチャンディスコを何箱にも分けて預けるような荷造りは、9月以降は難しくなりそうです。
9月以降、荷物の重さだけを見て荷造りすると、空港で追加料金を求められるかもしれません。ガルーダに乗る前は、Eチケットに書かれた重量と、その前にある「1PC」「2PC」の表示まで、確認しておいたほうがよさそうです。
参考資料
Garuda Indonesia公式:A Simpler, More Seamless Baggage Experience with the Piece Concept