ブカシ列車事故の発端はEVタクシー インドネシアの踏切はなぜ危険なのか
ジャカルタ近郊ブカシで発生した列車衝突事故は、現在も原因調査が続いています。しかし現時点で分かっている事故の流れはかなり明確になってきました。事故の発端は、踏切内で発生したタクシーと列車の衝突事故でした。そのタクシーは近年インドネシアで急速に増えているEV(電気自動車)タクシーだったことも判明しています。今回の事故は単なる鉄道事故ではなく、「踏切・都市交通・EV」という複数の要因が重なった事故と言えるでしょう。
事故の流れ
現地報道を整理すると、事故の流れは次の通りです。
まずブカシ東駅付近の踏切でタクシーが列車Aに衝突しました。
その知らせを受けて列車Bが東ブカシ駅で緊急停車します。
そして緊急停車していた列車Bに、後続の長距離列車アルゴ・ブロモ号が衝突しました。
つまり今回の事故は「踏切事故 → 列車停止 → 列車衝突」という連鎖事故だった可能性が高いとみられています。
EVタクシー会社が事故を認める
今回事故を起こした車両について、EVタクシー会社Green SMは自社のタクシーだったことを認めています。
Green SMはベトナム企業が展開するEVタクシーで、ここ数年インドネシアで急速にシェアを伸ばしているサービスです。ジャカルタでも最近は街中で見かける機会が増えてきました。
EVが踏切事故を複雑にする可能性
今回注目されているのがEV(電気自動車)の特性です。EVは故障した場合、簡単に押して動かせないケースがあります。
通常のガソリン車であればエンジンが止まっても人力で車を押して移動できますが、EVはモーター構造や電子制御の関係で車が動かない場合があります。
もし踏切内でEVが停止してしまえば、列車事故のリスクは一気に高まります。
インドネシアの踏切はなぜ危険なのか
インドネシアに住んでいる人なら感じていると思いますが、踏切の作りはかなり簡易的です。
木製の頼りない遮断機だったり、警備員だけが立っている踏切、あるいは遮断機自体が存在しない踏切も珍しくありません。
さらに問題なのは交通マナーです。踏切の警報ベルが鳴っていても、バイクも車もどんどん踏切の中に入っていきます。こうした状況では今回のような事故が起きても不思議ではありません。むしろ今まで大きな事故が少なかったことの方が驚きとも言える状況です。
日本との決定的な違い
日本とインドネシアの踏切にはいくつかの大きな違いがあります。
まず設備面です。日本では自動遮断機や警報装置、障害物検知装置などが設置されている踏切が多く、車が踏切内に残っている場合には列車に知らせるシステムも整っています。
一方インドネシアでは手動遮断機や簡易ゲート、監視員のみという踏切も多く、設備面の差は大きいと言えるでしょう。また交通ルールにも違いがあります。
日本では遮断機が下りた踏切に進入することはほとんどありませんが、インドネシアでは警報が鳴っていても踏切に侵入する車両が見られることがあります。
政府も踏切問題を認識
今回の事故を受けてプラボウォ大統領は踏切の安全対策について言及しました。政府は約2億3200万ドル規模の予算を踏切整備に投入する方針を示しており、踏切の安全対策は今後のインドネシア鉄道政策の重要なテーマになりそうです。
インドネシアに住んでいると感じるのは、この国の交通インフラはまだ発展途中だということです。都市の成長スピードが非常に速く、道路や鉄道、交通ルールの整備が追いついていない部分があります。一方でジャカルタではMRTやLRT、高速鉄道WHOOSHなど新しい交通インフラも急速に整備されています。つまり現在のインドネシアは、古い交通システムと新しい交通システムが混在する時代と言えるでしょう。
まとめ
今回のブカシ列車事故は、踏切内で発生したEVタクシーと列車の衝突が発端となりました。その結果、列車が緊急停止し、後続の長距離列車が衝突する連鎖事故となった可能性が高いとみられています。事故の背景には簡易的な踏切設備、交通マナー、都市交通の混雑など複数の問題があります。今回の事故をきっかけに、踏切の安全対策や交通管理の改善が進むことが期待されます。