ブルネイの物価は高い?The Mall Gadongで見えた生活水準と輸入依存の実態

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モールで見るブルネイの物価と暮らし

物価を知るならモールとスーパーへ

空港へ向かう前にもう一つどうしても寄ってみたかった場所があります。それが「The Mall Gadong(ザ・モール・ガドン)」です。

旅先の物価感覚や人々の暮らしぶりを知るには、モールやスーパーマーケットを覗いてみるのが一番です。何が売られているのか、いくらで売られているのか、人々はどんな物を当たり前のように買っているのか――そこには、その国の経済状況と生活文化がそのまま現れています。

世界有数の富裕国といわれるブルネイですが、実際の物価はどうなのでしょうか。人々は何を買い、何を食べて暮らしているのか。そんな素朴な疑問を確かめるべく、The Mall Gadong を歩いてみることにしました。

The Mall Gadong — ブルネイ最大級のショッピングモール

The Mall Gadong は、ガドン地区にあるブルネイ最大級のショッピングモールのひとつで、地元の人たちが集まる人気スポットです。

外観はガラス張りの近代的なビルで、「Mall」のロゴとともにアラビア文字の表記が目を引きます。「富裕国ブルネイのフラッグシップモールだから、きっと高級ブランドがズラリ並んでいるのだろう」と想像していたのですが、中に入ってみると予想は良い意味で裏切られました。

高級ブランド店はごくわずかで、中心となっているのはカジュアルブランドやローカルショップ、日用品店、フードコート。全体の雰囲気は、どちらかというとインドネシアの地方都市にあるローカル系ショッピングモールに近い印象です。

規模も「東南アジアの巨大モール」という感じではありません。フロアはコンパクトで、ゆっくり歩いても30分もあれば一通り見て回れるくらい。人口約45万人ほどの小さな国であることを考えれば、これくらいのサイズ感がちょうどいいのかもしれません。

金曜日の礼拝時間はモール全体が休業

モール内を歩いていると、入口近くに営業時間が掲示されていました。

BUSINESS HOURS:10am – 10pm

EVERY FRIDAY CLOSURE:12noon – 2pm

金曜日の正午から14時までは、すべての店舗がいったんクローズするという案内です。これはイスラム教の金曜礼拝(ジュムア)のための時間帯で、モスクでの集団礼拝に合わせてビジネスを止める、ブルネイらしいルールです。

この時間帯に休業するのはモールだけではなく、レストランやオフィス、銀行なども同様で、街全体がいったん静かになります。宗教行事を最優先とする「イスラム国家ブルネイ」の姿勢が、こうしたところからも伝わってきます。

さらに入口付近には、ピクトグラムで「飲酒禁止」「喫煙禁止」「ペット禁止」「スケートボード禁止」、そして「女性の露出度の高い服装禁止」といった注意事項が並んでいました。法律と宗教規範が生活空間にしっかり染み込んでいることを、ここでも実感します。

モールの目玉・大型スーパー「Gedung Megah Utama」

モールの中でひときわ賑わっていたのが、大型スーパーマーケット「Gedung Megah Utama Sdn. Bhd.」です。看板にはローマ字表記とアラビア文字が併記されていて、ブルネイらしさがよく表れています。

店内に一歩入ると、まず感じるのは「広くて明るくて、とても清潔」ということ。天井は高く、蛍光灯の光が隅々まで届き、通路もゆったりとした幅が取られています。床はピカピカに磨かれていて、商品もきれいに整列。こうした清潔さや整然とした陳列は、ブルネイのどこへ行っても共通している印象です。

棚に並ぶのはほぼ輸入品 — ブルネイ製はごく一部

商品棚を一つひとつ見ていくと、すぐに「ある共通点」が見えてきます。並んでいる商品のほぼすべてが、マレーシアやインドネシアなど近隣諸国からの輸入品なのです。

ブルネイは石油・天然ガスに依存した経済構造を持ち、製造業がほとんど発達していない国として知られています。そのため、食料品から日用品まで、多くを周辺国からの輸入に頼っている現実が、このスーパーの棚にそのまま表れていました。

インドネシア製品の存在感 — インドミーとMi Sedaap

特に目立っていたのが、インドネシア製の加工食品です。インスタント麺のコーナーに行くと、Indomie(インドミー)、Mi Sedaap(ミー・スダップ)が山のように積まれていました。

インドミーは言わずと知れたインドネシア発の国民的インスタント麺で、とくに「Mi Goreng(ミーゴレン)」シリーズは世界各地で販売される人気商品です。ブルネイのスーパーでも大量に置かれており、インドネシアとブルネイの経済的なつながりの強さを感じました。

価格表示を見てみると、ファミリーパックや箱売りなどさまざまな単位があり、5食あたりパックが1.6ドル(BND)と日本円で200円程度のイメージです。インドネシア国内とほぼ同じ価格かやや高いくらいで、輸入品としては納得の価格帯と言えます。日本の感覚からすると「輸入インスタント麺としてはごく妥当な値段」という印象でした。

「BRUNEI LOCAL PRODUCT」コーナーを覗いてみる

店内の一角には、「BRUNEI MAKANAN BUATAN TEMPATAN LOCAL PRODUCT」と書かれたコーナーが設けられていました。直訳すると「ブルネイ産の地元食品」。ここだけは、いわば「ブルネイブランド」の棚という位置づけです。

期待しながら近づいてみると、プラスチック容器に詰められたクッキーやスナック菓子がずらりと並んでいます。ラベルにはたしかにブルネイの住所が書かれている商品もありますが、その多くはマレーシアやインドネシア産の素材を使った、マレー文化圏共通のお菓子、といった印象です。

ブルネイならではのオリジナル商品、というよりは「マレー圏の定番お菓子をブルネイでパッキングしたもの」が中心のように見えました。とはいえ、旅のお土産としてはちょうど良いローカル感で、手に取りたくなる雰囲気があります。

「いかにもブルネイでしか買えない!」という商品は、正直なところごく一部という印象です。

お土産コーナーと「ブルネイチョコレート」の正体

スーパーとは別に、モール内には観光客向けのお土産コーナーもありました。ここで強烈な存在感を放っていたのが、「ブルネイチョコレート」です。

カラフルな箱には、モスクや王宮、ブルネイの風景写真が大きくプリントされ、「LOVE BRUNEI」の文字。フレーバーも「Almond Dark Chocolate」「Milk Chocolate」「Hazelnut Dark Chocolate」など豊富で、価格も1箱2.70ブルネイドル(約300円ちょっと)と、お土産用としてはちょうどいいレンジです。

ところが、箱の裏側をじっくり見てみると、原産国の欄にはしっかりと「PRODUCT OF MALAYSIA」と印字されています。

「ブルネイチョコ」と銘打たれてはいるものの、実際にはすべてマレーシア製。ブルネイにはチョコレート産業がないので、隣国マレーシアで製造したものを、ブルネイ向けのデザインでパッケージングしているのでしょう。

物価感覚 — 輸入品中心でも「意外と高すぎない」

スーパーをひと通り見て回って感じたのは、輸入品だらけなのに「思っていたほど物価が高くない」ということでした。

もちろん、隣国インドネシアのローカル価格と比べれば全般的に割高です。しかし、ブルネイの所得水準は東南アジアの中でも突出して高く、実質GDPベースでも世界上位の水準とされています。その購買力を考えれば、日常的な食品や日用品の値段は「むしろ手頃」と言えるレンジです。

また、ブルネイでは売上税や消費税がなく、食料品への税負担も比較的低く抑えられているとされています。その分、輸入品であっても価格が極端に跳ね上がらず、庶民が安心して買い物できる環境が整っているのでしょう。

モールから見えてくるブルネイの姿

The Mall Gadong を歩いてみて、ブルネイという国の「現実」がいくつか見えてきました。

まず、小国ゆえの輸入依存。人口約45万人という規模では、多様な製造業を育てるのは簡単ではありません。結果として、食料品から日用品、衣料品に至るまで、多くを近隣諸国からの輸入に頼らざるを得ない構造になっています。

一方で、石油・天然ガス収入に支えられた豊かな財政のおかげで、国民はその輸入品を日常的に購入できるだけの所得水準を維持しています。税率も抑えられており、生活必需品の価格を大きく押し上げないよう政府が配慮している点も見逃せません。

さらに、モールの営業時間や禁止事項からは、イスラム国家としての価値観の徹底ぶりがうかがえます。金曜礼拝の時間帯はすべての店がクローズし、服装や行動にも明確なルールが設けられている。経済活動よりも宗教的義務を優先する姿勢が、日常の中に自然に組み込まれているのです。

まとめ — モールに凝縮されたブルネイの「小さくて豊かな国」像

The Mall Gadong は、きらびやかな高級モールではありません。輸入品で埋め尽くされた庶民的なショッピングセンターでありながら、どこも清潔で整然としていて、人々は当たり前のようにそこで買い物を楽しんでいます。

棚に並ぶ商品の原産国ラベルを追っていくと、小国ゆえの輸入依存や、マレーシア・インドネシアとの強い経済的結びつきが見えてきます。一方で、金曜礼拝のための一斉休業や、イスラム的ルールを明確に掲示する姿勢からは、この国が宗教的価値観を何より重んじていることも伝わってきます。

豊かさと制約、輸入依存と高い購買力、近代的なモールとイスラム的生活規範――それらがバランスよく共存している国。それが、The Mall Gadong で垣間見たブルネイの姿でした。

 

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