【Bakso PresidentとSelak Café】マランで楽しむ線路ぎわでの朝ごはんと鉄道のある風景
東ジャワの都市マランは、涼しい空気とどこか懐かしさを感じる街並み、そしてローカルな魅力が詰まったスポットが点在する旅人にやさしい街です。そんなマランには、“線路のすぐ横”という非日常のロケーションで、食事やコーヒーを楽しめるお店がいくつかあります。
「Bakso President本店」と「Selak Cafe」という2つの人気スポットを朝から訪れてみました。鉄道の音をBGMにしながら、マランの朝をゆっくりと味わう──そんな体験は、他ではなかなかできない特別なものです。
朝の一杯はバクソから

朝8時すぎ、最初に訪れたのは「Bakso President」の本店でした。マラン駅から車で5分ほどの場所にあり、住宅街の一角にひっそりと佇むその店は、何よりもまず“線路のすぐ脇”という異様な立地が印象的です。創業は1970年代。もともとは近くにあった映画館「President」の名を冠して屋号としたこの店は、今や観光客にも知られるマランの名物店です。

到着したとき、ちょうど開店したばかりだったため、スープの仕込みがまだ終わっておらず、少しだけ待つことになりました。しかし、その時間さえも特別に思えるのがこの店の不思議なところ。目の前には線路が伸び、奥ではスタッフが湯気を立てながらバクソ(肉団子)を仕込んでいる。朝のひんやりとした空気の中で、そのすべてが旅情を誘います。

しばらくして運ばれてきたのは、透明であっさりとしたスープに、コロコロとした肉団子、見た目の派手さこそないものの、口に運ぶとその優しさと旨味に驚きます。特に肉団子は、しっかりとした歯ごたえがありながら、口の中でじんわりと肉の味が広がり、朝にぴったりの滋味深い一品でした。

ふと壁を見ると、店内には列車の通過時刻表が掲示されています。なんとも親切な配慮だなと感心しながら目をやると、残念ながら私が着いた直前に列車が通過したばかり。次の列車が来るのは、なんと2時間後の10時30分とのこと。

せっかくなら列車が走る様子をこの目で見たかったのですが、そこまでのんびり待つわけにもいかず、次の目的地「Selak Cafe」に向かうことにしました。
Selak Cafeで待つ“列車の瞬間”

「Selak Cafe」はマラン市内でも近年注目を集めているカフェで、鉄道好きはもちろん、SNS映えを求める若者にも人気のスポットです。ここもまた、信じられないほど線路に近い場所に店を構えており、テラス席から線路まではわずか60センチほど。まるでハノイの有名な“トレインストリート”のような光景が、インドネシアのマランで体験できてしまうのです。

バクソで温まった体をクールダウンさせるように、アイスコーヒーを注文し、線路沿いの席に腰かけてしばし待ちます。店内は新聞紙風のレトロな装飾が施され、どこかアジアの下町を思わせる雰囲気。若者たちが談笑しながら写真を撮る姿もあり、賑やかさと静けさが同居する不思議な空間でした。

そして、ついにその瞬間が訪れます。遠くから列車の走行音が聞こえてきたかと思うと、ほどなくして列車が轟音とともに目の前を通過。風圧でコーヒーの水面が揺れる。思わず息をのむほどの迫力です。これぞSelak Cafeの真骨頂。どんなに写真や動画を見ても、この臨場感は現地でしか味わえないものでしょう。

列車が通り過ぎたあとは、驚きと興奮がじわじわと体に残り、ふと見上げた空の青さがやけにまぶしく感じました。カフェでは一日に数本の列車が通過するとのことで、時間帯によっては複数本を間近で見ることもできるそうです。
鉄道の音と始まるマランの特別な朝
こうして、「Bakso President」で朝食をとり、「Selak Cafe」でコーヒーを飲みながら列車を眺めるという、マランならではの“線路モーニング”が完成しました。どちらのお店も、線路との距離の近さという共通点がありながら、その魅力はまったく異なります。
Bakso Presidentでは、老舗ならではの落ち着いた雰囲気の中でローカルフードの温もりを感じ、Selak Cafeでは、非日常の視覚体験と迫力あるサウンドに酔いしれる。鉄道が好きな人はもちろん、マランという街をより深く知りたいという人にとっても、この2軒の訪問はマランに来たらおすすめしたい体験です。
朝の時間を少し早く起きて、列車とともに始める。そんな旅の始まり方が、きっとこの街をもっと好きにさせてくれるはずです。
Bakso President
Selak Cafe