「在庫はある」のに、なぜ買えないのか。マカッサルを止める燃料供給の機能不全
今日も、ガソリンスタンドの前で道路が止まっている
マカッサルの街を走っていると、遠くからでもガソリンスタンドの場所が分かるようになりました。
道路脇に、長い車列ができているからです。
バイク、乗用車、トラックが入り交じり、場所によっては列が4重になっています。24時間営業になったSPBUでも、深夜から早朝まで列が続いています。現地の報道では、給油するまで4時間半待った人の声も紹介されていました。
車を走らせるために燃料を入れたいのに、その給油待ちの車が道路をふさいでいます。
いま、給油を待つ車がマカッサルの交通を止め始めています。
これは、ここ数日で突然始まった話ではない
最近のニュースだけを見ると、マカッサルで急にガソリンが足りなくなったように見えるかもしれません。
しかし、実際にこの街で暮らしていると、これは数日前に突然始まった話ではないことが分かります。
Pertaliteの列が目立つようになったのは、たしかに最近です。しかし、トラックや商用車が使うSolar(軽油)は、数カ月前から手に入りにくい状態が続いていました。
SPBUの前に長距離トラックが並び、道路脇で何時間も待っている光景は、以前からマカッサルではよく見かけました。
そこへ今度はPertaliteの供給不安が重なり、乗用車やバイクまで一斉にSPBUへ向かうようになりました。
今回の混乱は、突然のパニック買いだけで起きたものではないと思います。以前から続いていた問題が、乗用車やバイクにまで一気に広がった、と考えるほうが自然です。
州知事も市長も、現場へ向かった
行政側も動いています。
南スラウェシ州知事は、Petta RaniにあるSPBUを視察しました。マカッサル市長のMunafri Arifuddin氏も、Sam Ratulangiなど市内のSPBUを回り、Pertamina Regional Sulawesiと直接協議しています。
市長は、すべての給油ノズルを動かすこと、オペレーターを増やすこと、SPBUを24時間営業にすることなどを求めました。
トラックやバスと一般車を、時間帯やSPBUごとに分ける案も出ています。州政府もTNI(国軍)、警察、Satpol PPなどによる監視チームを編成しました。
州知事も市長も、現場の混乱を何とかしようとしています。その点は評価すべきだと思います。
ただ、気になるのは、視察したときの対応と普段の対応に差があることです。
知事がいる間は動き、帰ると止まる給油機
現地報道の中に、いまの問題をよく表している話がありました。
知事が視察している間は多くの給油機が動き、列もそれほど長くなかったそうです。ところが、知事が帰ったあとに稼働する給油機が減り、再び列が伸びていったと報じられています。
また、4台の給油設備に対して、オペレーターが1人しかいないSPBUもあったといいます。
本当に燃料そのものがなければ、給油機やオペレーターを増やしても解決しません。
しかし、人を増やし、止まっている給油機を動かすことで列が短くなるのであれば、燃料の量だけが原因ではありません。SPBUの運営にも、かなり大きな問題があるということです。
Pertaminaは「在庫は安全」と説明する
Pertaminaは、燃料の在庫は確保されていると説明しています。
Pertaliteの供給量を通常より約10%、Solarを約15%増やし、24時間営業のSPBUも増やしました。一方で、PertaliteとSolarの消費量が通常より10〜15%増えているとして、市民には買いだめをしないよう呼びかけています。
それでも、街の列はなかなか短くなりません。
「在庫はある」と言われても、何時間も並ばなければ給油できない市民にとっては、燃料が足りないのと同じです。
「在庫がある」と「市民が買える」は同じではない
貯蔵ターミナルに燃料があっても、それが必要なSPBUまで届かなければ、市民は買うことができません。
SPBUに届いていても、一部のノズルしか動いていなければ列は長くなります。オペレーターが足りなければ、給油できる車の数も増えません。
そこへ大型トラック、バス、乗用車、バイクが同じ時間に集まれば、SPBUの中だけでなく周辺の道路まで詰まってしまいます。
燃料がどこかに保管されていることと、市民が必要なときに買えることは、別の話です。
市民が知りたいのは、ターミナルに何リットル残っているかではありません。目の前のSPBUで、いつ給油できるのかです。
Solar不足には、もっと前から続く問題がある
Solarは補助金の対象となっているため、市場価格との間に大きな差があります。トラックや物流事業者の需要が集中するだけでなく、転売を目的とした不正給油も起きやすい燃料です。
同じ車両が何度も給油するケースや、改造したタンクを使った転売も疑われています。Pertaminaも、不自然な取引が確認された車両やQRコードを多数ブロックしています。
もちろん、不正な給油や転売は取り締まる必要があります。
ただ、それだけで数カ月も続いているSolarの列を説明できるのでしょうか。
もともとの割当量が足りていたのか。配送回数は適切だったのか。実際の需要をきちんと把握できていたのか。
不正利用の取り締まりと同時に、供給する側の仕組みについても確認する必要があると思います。
ガソリンの列が、ごみ収集まで遅らせている
影響は、SPBUの周辺だけでは収まらなくなってきました。
マカッサル市のごみ収集車や収集バイクも給油待ちとなり、ごみの回収に遅れが出始めています。
学校や職場へ向かう人も、給油や周辺の渋滞で時間を取られます。オンラインバイクタクシーのドライバーにとっては、何時間も列に並んでいる間、仕事ができません。
物流トラックが動けなくなれば、商品が届くのも遅れます。この状態が長引けば、品不足や価格にも影響が出てくるかもしれません。
燃料をめぐる混乱は、ガソリンスタンドの前だけの問題ではなくなっています。すでに市民生活や公共サービスに影響が出ています。
視察で終わらせず、普段の運営を変えられるか
州知事も市長もSPBUを訪れ、状況を改善しようとしています。その動きには意味があると思います。
しかし、大切なのは、知事や市長が見ている間だけ給油機が動くことではありません。
誰も視察に来ていない普通の日にも、必要な数の給油機が動き、十分なオペレーターがいて、燃料が滞りなく販売される。それが本来の姿です。
マカッサルの燃料問題は、ここ数日で突然始まったものではありません。
数カ月前から続いていたSolar不足を十分に解消できないまま、問題がPertaliteへ、一般市民の生活へ、そして公共サービスへと広がっていきました。
「在庫はあります」と説明するだけでは、もう市民は納得できないところまで来ています。
本当に在庫があるのなら、その燃料を必要なSPBUまできちんと届け、何時間も並ばなくても買える状態に戻してほしい。
いまマカッサルの市民が求めているのは、ごく当たり前のことなのだと思います。