海外で暮らして初めて分かった、日本人の弱さ 「正しさ」が通じない世界で学んだこと

Indonesia 海外進出

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50歳から人生を変えてみた 第9話

前回は「日本のすごさ」について書きました。品質へのこだわり、約束を守る文化、社会全体を支える「信用」。海外へ出たからこそ、日本の素晴らしさを実感しました。

しかしその一方で、気付いたこともあります。

日本で当たり前だった価値観が、海外では必ずしも通用しないという現実です。

今回は、日本人を否定したいわけではありません。むしろ、日本人だからこそ気付きにくい「弱さ」について、インドネシアでの経験を通して考えてみたいと思います。

「日本人は優秀」

海外で仕事をしていると、日本人は本当に優秀だと感じます。真面目で、責任感が強い。時間を守る。約束を守る。品質を守る。一つひとつを丁寧に積み上げていく。

だから日本の商品は世界で評価され、日本企業は信用され、日本人と仕事をしたいという人も多くいます。

私も、日本人であることに誇りを持っています。

しかしその一方で、海外へ出て初めて気付いたことがありました。

日本人の強みは、そのまま弱みにもなることがある。

それが、この5年間で一番大きな学びでした。

「正しい」が通じない

インドネシアへ来たばかりの頃、私はよく説明していました。

「これはルールだから。」「品質を守るためだから。」「こうしないとお客様に迷惑がかかる。」

日本では、これで十分でした。理由が正しければ、人は動いてくれる。そう信じていました。

しかしインドネシアでは違いました。どれだけ正しいことを言っても、人は動かない。

最初は理解できませんでした。「なぜ分かってくれないのだろう」そう思っていました。

でも、ある時気付いたのです。

相手は私の話を否定していたのではありません。私という人間を、まだ知らなかっただけだったのです。

まず信頼、そして仕事

日本では、仕事が先で、人間関係は後から付いてきます。しかしインドネシアでは、その順番が逆でした。

まず人として信頼する。それから仕事が始まる。

だから最初の頃は、仕事の話より雑談の方が長い。家族の話。子どもの話。食事の話。冗談を言って笑う。

私は最初、「早く本題に入りたい」そう思っていました。

でも今は違います。

あの雑談こそが、本題だったのです。

信頼ができれば、仕事は驚くほどスムーズになります。逆に、どれだけ正しいことを言っても、信頼がなければ人は動きません。私はその順番を、完全に勘違いしていました。

正解を探していた

もう一つ、日本人らしいと思うことがあります。

私たちは「正解」を探します。マニュアル。ルール。成功事例。ベストプラクティス。もちろん、それは悪いことではありません。むしろ日本の強さでもあります。

しかし海外では、昨日の正解が今日も正解とは限りません。

市場も変わる。法律も変わる。人も変わる。予定も変わる。

インドネシアで仕事をしていると、これを毎日のように実感します。うまくいったやり方が、翌月には通用しなくなっていることがある。スタッフへの指示の出し方も、取引先との交渉の進め方も、一度決めたら終わりではない。試して、失敗して、直して、また試す。その繰り返しです。

私は最初、「どうすれば正しいのか」ばかり考えていました。しかし途中から、「今は何が一番いいだろう」と考えるようになりました。

正解を探すのではなく、最適解をその都度作る。

それが海外で働くということでした。そしてトライアンドエラーを恐れないことが、その唯一の方法だと気付きました。

相手を変えようとしていた

今振り返ると、一番反省していることがあります。

私はインドネシアの人を、日本式に変えようとしていました。

時間を守ってほしい。報告してほしい。確認してほしい。もちろん必要なこともあります。しかし私は「なぜそういう文化なのか」を考える前に、「日本ならこうする」を押し付けていたのです。

相手を理解する前に、理解してもらおうとしていた。

これではうまくいくはずがありません。

一番変わるべきだったのは、自分だった

海外へ行くと、「相手が違う」と思います。文化が違う。価値観が違う。考え方が違う。もちろん、それは事実です。

でも5年間暮らして、一番思うことがあります。

本当に変わる必要があったのは、相手ではありませんでした。私自身でした。

相手を変えることはできません。でも、自分の考え方は変えられる。自分の伝え方は変えられる。自分の聞き方も変えられる。

そうして初めて、「日本人だからできる仕事」ではなく、「この人だから一緒に仕事をしたい」と言ってもらえるようになりました。

日本人の弱さとは

今回、「日本人の弱さ」というタイトルを付けました。でも本当は弱さというより、癖なのかもしれません。

正しければ伝わる。ルールがあれば動く。答えは一つ。そう信じてしまうこと。

しかし世界には、正しさより信頼が大切な国があります。ルールより関係性を重視する文化があります。正解が一つではない世界があります。

その世界を知った時、私は初めて、日本人であることの強さと、日本人だからこそ陥りやすい思い込みの両方を見ることができました。

それは、日本にいるだけでは気付けなかったことです。外に出て、失敗して、恥をかいて、初めて見えてくるものでした。

次回は、いよいよ最終回です

50歳で会社を辞め、インドネシアへ渡り、会社を作り、失敗を恐れ、時間の価値を知り、第二の居場所を見つけ、日本という国を見つめ直した5年間。

そのすべてを振り返りながら、

「50歳で人生を変えて、本当に手に入れたもの」

について書いてみたいと思います。

記事の最後
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