インドネシアのルピアの0を消す!“リデノミ”検討!2027年に向けて何が起こるのか
インドネシア政府が、ルピアの桁を簡素化する「リデノミネーション(redenominasi)」政策を再び本格的に動かし始めたというニュースが、大きな注目を集めています。
背景には、財務省が発表した「PMK No.70 Tahun 2025」があり、政府は2027年までにリデノミ法案(RUU Redenominasi Rupiah)を完成させる方針を示しました。2030年頃までを視野に入れた国家プロジェクトが動き出したと言えるでしょう。
ルピアの「0が消える」という話はインパクトが大きく、「物価が変わるのでは?」「通貨が弱くなるのでは?」という不安も広がっています。
しかし、リデノミの本質を知ると、この政策が“生活に大きな影響は与えない”ということが理解できます。
ここでは、リデノミとは何なのか、なぜ今進められているのか、生活への影響はあるのかなどを、できるだけ分かりやすく解説します。
リデノミネーションとは何か
0を消すだけで、価値はそのまま
リデノミとは、通貨の表記をシンプルにするために「桁を減らす」政策です。
インドネシア銀行(Bank Indonesia)はリデノミを、「通貨の価値を変えずに桁だけを整理すること」と定義しています。
たとえば、
Rp100,000 は Rp100 に、
Rp5,000 は Rp5 になります。
この変化を見ると、直感的には「ずいぶん安くなった」と感じてしまいますが、実際には給料も貯金も同じ比率で切り替わるため、本当の価値はまったく変わりません。
つまり、リデノミは「数字の見た目を整える施策」であり、「価値を減らす政策」ではありません。

リデノミとサネリング(通貨切り下げ)はまったく別物
国民の資産価値は減らないが大前提
インドネシア国民が最も心配するのが、「リデノミは通貨切り下げ(サネリング)ではないか」という点です。
しかし両者は根本的に異なります。
サネリングとは、通貨価値そのものを下げて購買力を落とす政策で、預金や給料の実質価値が減ってしまいます。
一方で、今回インドネシアが検討しているリデノミは、あくまで数字の桁を“短くするだけ”の政策です。
国民の生活が苦しくなるような効果はありませんので、不安を感じる必要はありません。
なぜ今リデノミを進めるのか
背景にある3つの理由
まず第一に、インドネシアのルピアは桁が多すぎるという現実があります。
買い物をするとき、ATMを使うとき、Eコマースで決済するとき、会計ソフトを使うときなど、常に“000”が並びます。桁数が多いことで入力ミスが発生しやすく、会計処理やオンライン決済の正確性にも影響します。
第二に、国際的なイメージの改善があります。
桁が多い通貨は海外から「不安定」「弱い通貨」と見られがちです。桁を整理することで、ルピアの対外的な見栄えがよくなり、投資家に与える印象を改善できる効果が期待されています。
第三に、急速に進むデジタル決済との相性です。
現在、QRISが全国的に普及し、キャッシュレス社会に向けた基盤が整ってきています。桁が短くなると入力スピードが上がり、処理の効率性も高まるため、デジタル化の流れと非常に相性が良いのです。
こうした理由から、政府はリデノミを「国家的な決済インフラの改善」として再始動させています。
リデノミのメリット
会計がシンプルになり、決済はもっと快適に
まず大きなメリットとして、会計処理の簡素化があります。
数字の桁が短くなることで、計算ミスは大幅に減り、POSレジやEコマースの価格表示も見やすくなります。企業にとっては業務効率化につながり、店舗の支払い業務もスムーズになります。
また、決済インフラの近代化にも大きく寄与します。
ATMやネットバンキングの画面は見やすくなり、QRISによる支払いも確認が簡単になります。日常生活における決済のストレスが軽減されるでしょう。
さらに、ルピアの国際的な信用度が上がるという効果も期待されています。
数字が短くなることで、外国人投資家や国外のビジネスパートナーに対し「安定した通貨」というイメージを与えやすくなります。
リデノミの注意点・リスク
国民の誤解や便乗値上げに注意
メリットが多くある一方で、注意すべき点も存在します。
最も大きなリスクは、国民の心理的な混乱です。桁が減ることで「本当に値段は変わっていないのか?」という不安が生まれます。また、リデノミを口実にして価格を上げる店舗が現れ、結果的にインフレを加速させてしまう可能性も指摘されています。
さらに、新紙幣の発行やシステム更新にはコストがかかります。企業側はPOSレジや給与計算システムのアップデートなどを行う必要があり、短期的には負担となる可能性があります。
国民の混乱を防ぐために必要なこと
旧ルピアと新ルピアを併用し、情報を徹底する
リデノミを成功させるためには、旧ルピアと新ルピアを数年間併用する期間が欠かせません。価格を旧表記と新表記の両方で掲示することで、国民は自然に新しい表記に慣れることができます。
また、政府がテレビやSNSを通じて大規模な周知キャンペーンを行い、「価値は変わらない」というメッセージを徹底することが重要です。
企業向けにも、会計処理や税務申告の切り替え方法を明確にしたガイドラインが必要になります。
こうした準備を丁寧に進めることで、国民の不安を取り除き、便乗値上げなどのトラブルを未然に防ぐことができます。
今後のスケジュール
2027年の法案成立を目指し、2030年頃に本格運用か
政府の計画では、2025年から2026年にかけて制度設計が進み、2027年にリデノミ法案が成立することを目指しています。その後、旧ルピアと新ルピアを併用する移行期間を経て、本格導入は2030年頃になると考えられています。
これは、国民の生活がすぐに変わる政策ではなく、時間をかけて慎重に進めるべき国家的プロジェクトです。
まとめ
価値は変わらず、社会はもっと便利に
インドネシアで進められているリデノミは、「0を消す」という見た目のインパクトに反して、実際の価値や生活にはほとんど影響のない制度です。むしろ、価格が見やすくなり、決済が快適になり、会計処理が簡単になるなど、生活やビジネスの利便性が向上します。
もちろん、国民への情報提供や便乗値上げの監視など、慎重な対応は必要ですが、インドネシアの経済成長やデジタル化を考えると、リデノミは自然な流れであり、長期的にはポジティブな効果をもたらすと期待されています。