ジャカルタで見つけた日本の味 ―「大戸屋」で感じた心も満たす和食時間
ジャカルタへの出張中、「せっかくジャカルタにいるのだから、マカッサルにはないものを食べたい」と思いました。ふと頭に浮かんだのは、やっぱり「日本のごはんが食べたい!」という気持ち。焼き魚の香りや、だしの効いた味噌汁、優しい副菜たち――。けれど、インドネシアの地方都市マカッサルに住んでいると、こうした日本の家庭的な食事に出会うのはまだまだ難しいのが現状です。今回、ジャカルタ・アゴラモールに立ち寄った際、目に飛び込んできたのが「大戸屋」の看板。日本でもなじみ深い和定食のチェーン店が、ここジャカルタにもあることに驚きと期待を感じました。そして実際に足を運び、食べた瞬間、期待は確信へ――「ああ、これだ」と思える味に出会うことができました。
アゴラモールで偶然見つけた“日本の食卓”

ジャカルタ市内の大通りから少し入ったモダンなショッピングモール「AGORA MALL(アゴラモール)」。ビジネス街にほど近い立地で、夜には高層ビル群のネオンがきらめく都会的な雰囲気が広がります。ふらりと立ち寄ったこのモールの中で、ふと視界に飛び込んできたのが、青く光る「大戸屋 OOTOYA」の看板でした。日本でもおなじみのチェーン店を、海外で偶然見つけると不思議な安心感があります。ガラス張りの店内は落ち着いた木目調で、日本の定食屋そのもの。温かみのある雰囲気に、自然と気持ちがほぐれていきました。

メニューを開いた瞬間から広がる安心感
席に着き、手渡されたメニューの表紙からすでに日本の空気が漂ってきます。お箸とお盆、焼き魚や小鉢のイラスト――。ページをめくると、日本で見慣れたメニュー名がずらり。価格はジャカルタの物価からすれば少し高めかもしれませんが、それでもこの内容の和定食が楽しめるのはうれしいポイントです。彩り豊かな写真を眺めていると、思わず「どれも食べたい」と悩んでしまうほどでした。

大戸屋御膳の華やかさとバランスの良さ
今回注文したのは、人気No.1の「大戸屋御膳」。運ばれてきた瞬間、その華やかさに心が躍ります。大きな丸いプレートには、肉・魚・野菜がバランスよく盛り付けられ、見るからに健康的。メインは香ばしく焼かれたサーモンと、甘辛いタレがしみ込んだ牛肉の炭焼き、鳥黒酢。そこに、コロッケ、ポテトサラダ、きんぴらごぼう、ほうれん草のおひたし、玉子焼き、ブロッコリー、フレッシュなサラダなど、まるで日本の家庭の食卓をそのまま一枚のプレートにのせたような内容です。

サーモン、牛すき焼き、野菜たちが一皿に
特に印象的だったのは、焼きサーモンの脂ののり具合と香ばしい焼き目。レモンをきゅっと絞り、大根おろしと一緒に食べると、懐かしい和食の味が広がります。牛肉炭焼きは、甘辛のタレと玉ねぎの自然な甘みが絶妙。鶏黒酢も衣がサクッと揚がり、中はジューシー。ブロッコリーやきんぴらなど、しっかり野菜が摂れるのも大戸屋ならではの魅力です。インドネシアの外食で、これほどたくさんの野菜が一度にとれるのは珍しく、栄養バランスを気にする日本人には特にうれしいポイントでしょう。

ご飯は鮭フレーク&おかかの二色仕立て
もうひとつ心をつかまれたのが、付け合わせのご飯です。白米の上に、ほぐした鮭とおかか昆布が二色に分かれてのっています。見た目にも美しく、どこかお弁当を思い出させる懐かしさがあります。鮭の塩気とおかかのうま味がじんわりとご飯にしみ込み、箸が止まらなくなる美味しさ。海外で暮らしていると、この「ご飯とふりかけの幸福感」が想像以上にありがたいものだと気づかされます。

日本茶の代わりに楽しむ冷たい緑茶
飲み物は冷たい緑茶をオーダー。たっぷり入ったガラスのボトルがテーブルに届くと、ほっと一息。香ばしくさっぱりとした緑茶の風味が、油ものの後口をすっきりと整えてくれます。インドネシアでは甘い飲み物が主流なので、無糖のお茶をたっぷり飲めるのは大きな魅力。思わず何杯もおかわりしてしまいました。

ジャカルタの夜景を眺めながら感じた“心の満足”
食後、モールを出ると目の前にはジャカルタの夜景が広がっていました。高層ビルのネオンが輝く都会の夜。けれど、その中で日本の味をしっかり楽しめたことで、まるで一瞬だけ日本に帰ったかのような安心感と満足感に包まれました。旅行の途中で日本食に出会うと、身体がほっとするだけでなく、心までリセットされるような気がします。

マカッサルにないからこそ、価値がある一食
現在、マカッサルではまだ大戸屋のような本格的な和定食店は見かけません。寿司やラーメンの店は増えつつありますが、家庭的な和食を提供する店は限られています。だからこそ、ジャカルタでこうしたお店に出会うと、特別な価値を感じます。日本の味が恋しくなったとき、安心して訪れられる場所があるのはうれしいこと。次回ジャカルタに来るときも、きっとまた大戸屋に足を運んでしまうだろうと思います。
まとめ
ジャカルタ・アゴラモールの「大戸屋」は、日本の味を恋しく思う人にとって、まさに“心と体を満たしてくれる場所”でした。肉と魚と野菜のバランスが取れた一皿、ほっとするご飯、さっぱりしたお茶。海外にいながら、食べることで日本のぬくもりを感じられる体験は、何にも代えがたいものです。ジャカルタでの大戸屋は、きっとこれからも私にとって“心のオアシス”であり続けるでしょう。