【インドネシア】ヌサンタラ首都移転は本当に行われるのか?考察

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2022年1月にインドネシア政府が計画しているジャカルタからカリマンタン島に首都移転法案を可決し、新首都名がヌサンタラに決定しました。2024年から段階的に首都移転の実現に向けて進展しているように思えますが、そう簡単にはいかないような予感がします。

首都移転概要

新首都ヌサンタラは、ジャカルタから1200Km以上離れたカリマンタン島東カリマンタン州となります。新首都の近くには東カリマンタン州の州都サマリンダや石油や天然ガスの供給基地で有名なバリクパンがあります。新首都の敷地面積は約25万ヘクタールと東京都の広さは約21万ヘクタールですのですっぽり入ってしまう大きさです。2024年から段階的移転していく計画のようですが、2019年8月のKedaiKOPI Survey Instituteの調査結果によると、ジャカルタ在住の回答者の95.7%が首都移転計画に拒否感を示したといいます。

首都移転の記事は下記の記事もご覧ください。

首都移転の理由

ヌサンタラに新首都を移転する主な理由として

  • ジャカルタ及びジャワ島への人口、経済機能の集中による負担増
  • ジャワ島とジャワ島外の格差是正

ジャワ島にインドネシア全人口の54%、GDPの58%が集中していて、ジャカルタ首都圏だけでも人口3,400万人と東京首都圏に次ぐメガシティとして人口増加が続いています。急激な都市発展のため、公共交通機関の整備が遅れているため慢性的な交通渋滞に悩まされています。

また、無計画に都市発展を続けたため地下水をくみ上げ過ぎて地盤沈下を引き起こし、雨季には洪水が常態化し機能不全を起こしています。将来海面上昇が起きた場合に有効な対策を持っていないという致命的な問題を抱えています。

ジャカルタ特別州における下水道普及率は7%(2019年時点)に留まっており,河川等の公共用水域や地下水の水質汚染に起因する環境問題や住民の健康被害等,水環境問題が深刻化しており,下水道の普及と下水処理施設の整備が急務となっています。

ジャカルタ一極集中をなくし、政治的中心地と経済的中心地を切り離すことによって地方の活性化と過密状態のジャカルタ首都圏の減量を図れるという考え方です。

インドネシアは日本同様に地震大国であり、首都直下地震や起きた場合などで過密状態の首都圏が長期間に渡って大ダメージを受ける恐れもあります。地域分散させることで災害復興を早くできる面などもあります。

首都移転の問題点

ジャカルタは何も変わらない

政治的な機能を新首都ヌサンタラに移動するとしても、経済の中心としてジャカルタを残すということになっていますので、そもそも交通渋滞や洪水問題などの解消にはつながらないということが、容易に想像がつきます。近年ですとブラジルの首都がブラジリア、マレーシアの首都の一部がプトラジャヤに移転した例がありますが、経済都市としてリオデジャネイロやクアラルンプールの状態が変わっていないと同じで、ジャカルタは何も変わらない、むしろ1200Kmも離れているヌサンタラには用がないなどにならないかという疑問です。インターネットがここまで発展してくると、物理的に政府関係を地方に移転する必要があるのか、また政府関係者、公務員は便利になったジャカルタを離れ、発展途上のヌサンタラに移住したいと思う人は少ないと聞きます。

地方との格差是正につながらない

今回首都が移転する東カリマンタン州に関しては、サマリンダ・バリクパパンを中心に都市圏が形成され発展に大きくつながる可能性がありますが、それ以外の都市は今までと何も変わらないのです。地方との格差是正とはとってつけた理由で、同様の理由で首都移転したブラジリアやプトラジャヤに関しても、格差是正などにはつながっていないように見えます。

膨大な費用や森林伐採

首都移転にかかる費用として466挑ルピアを計上しています。そのうち20%を国家予算で賄うようですが、残り54%を官民連携事業(PPP)、26%を民間資金でまかなうとしていますが、新型コロナウイルスの影響などで厳しいインドネシア財政状況のなか、そのような費用を捻出できるのか疑問視されています。地方格差是正をするのであれば、首都移転費用などに使用せず直接地方振興の整備に使用すればよく、首都移動の費用以上のメリットはないような気がします。

地球温暖化や二酸化炭素排出などが世界各国で議論されている中、首都移転に伴って少なくとも5万ヘクタールもの森林が失うことになります。環境破壊につながる可能性があり自然保護を理由とする反対運動も起こる可能性があります。

首都移転は決定した事項であり、粛々と計画が進む可能性もありますが、ジャカルターバンドンの高速鉄道は日本の支援を断り、中国の計画が採用されましたが予定通りに建設が進まず、費用が増大して国家予算を追加する事態となっています。首都移転で費用が膨らむ可能性が大きく、計画通りに進まない可能性も高いと思われます。

ジャカルタも新しい都市が誕生

ジャカルタは、海を埋め立てして新しい都市が開発されています。東京も東京湾を埋め立てながら毎年土地が増えていっていますが、ジャカルタも海を埋め立てして土地を広げています。スカルノハッタ空港近くのPIK(Pantai Indah Kapuk)はきれいな街並みでインスタ映えする場所として人気がでています。堤防を作り、観光地化していますが、将来海面上昇しても耐えられるように工夫されています。

今後、首都移転がどのようになっていくのか、ジャカルタがどう変わっていくのか推移を見守りたいと思います。

 

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