ジェパラのオーナーの情熱が詰まった、“静かな特別席”で味わう極上ディナー
ジャワ島中部、家具の町として知られるジェパラ。木の香りが漂うこの町に、意外なスポットがあります。それが「The Bullcave」。まるで映画のセットのように、森の中にひっそりとたたずむステーキハウスです。この場所を初めて知ったのは一昨年のこと。オーナーの奥さまが知人で、「自宅の敷地内でレストランを始めた」と聞いたのがきっかけでした。ようやく今回、その念願の訪問が実現。想像をはるかに超える、特別な時間が流れる場所でした。
ジェパラの海辺に広がる“森の私邸”がレストランに

レストランの場所は、ジェパラの中心部から少し離れた海沿いのエリア。到着してまず驚いたのは、敷地の広さと自然の深さです。入口のサインボードを越えると、まるで秘密の森に足を踏み入れたような雰囲気。

その奥に現れるのが、素朴で手作り感のある、洗練されたレストランの建物です。

実はこの一帯、すべてオーナーの奥さまの私有地。広大な敷地の中で、生活空間とレストランが共存するという独自のスタイルを築いています。都市部の喧騒とは無縁の、まさに“スローダイニングの楽園”と言える空間です。

全身で味わうヴィンテージ空間
The Bullcaveの建物は、古材やアンティークをふんだんに使った内装が特徴的。むき出しの木の梁、錆びた鉄の装飾、手彫りのカウンター──そのひとつひとつに時を経た風合いがあり、どこを見ても絵になります。

壁にはチェ・ゲバラやモハメド・アリのポスター、使い込まれた調理道具、ビンテージの洋酒ボトルがセンスよく配置され、店内の照明はすべて温かみのあるランプやキャンドル調で統一。まるで異国の山小屋に迷い込んだような、没入感のある空間が広がっていました。

本格薪焼きのマルゲリータピザでスタート
まず前菜に注文したのは、マルゲリータピザ。薄めの生地で焼き上げられ、パリッとした食感が特徴です。トマトソースはほどよい酸味で、チーズはとろりとしながらも軽やか。おそらく薪窯か薪火オーブンで焼かれており、独特の香ばしさが口いっぱいに広がります。

シンプルな素材の組み合わせだからこそ、素材の良さと焼きの技術がダイレクトに伝わる一枚でした。
低温調理で仕上げる“オーナー直伝”のステーキ
そしてメインは、オーナー直伝のレシピで仕上げられる自慢のビーフステーキ。

このステーキには、ちょっとした裏話があります。オーナーが長年かけて研究・試作を重ねたというこのレシピは、低温でじっくりと火を入れたあと、表面を強火で焼き上げる「リバースシア方式」を採用。外はカリッと香ばしく、中はしっとりとしたロゼ色に仕上がり、噛むたびに赤身の旨味が広がります。
ソースはハーブとガーリックをベースにしたクリームソース。肉の味を引き立てる上品な味わいで、添えられたバターでの味変も楽しめ、最後まで飽きずに味わうことができました。
屋外の丸太テーブルで味わう、ジェパラの森の空気

The Bullcaveの魅力は、料理だけにとどまりません。食事を楽しむテーブルもまた印象的です。
私が案内されたのは、年輪の残る巨大な丸太をくり抜いたテーブル席。見上げれば木々の合間から差し込む自然光、耳を澄ませば微かに聞こえる海風。足元は土、周囲には草木が茂り、まるで森に包まれるような時間を過ごすことができました。

このレストランは、良い意味で“ジェパラらしくない”空間です。けれど、森や暮らしと調和し、自然の中にすっと溶け込んでいる不思議な一体感がありました。

それはきっと、「本物の素材と手間を惜しまない料理」と「オーナーの審美眼と情熱」が、この空間全体を支えているからなのだと感じました。
心の中に残るレストラン体験を、ジェパラで
家具の町ジェパラで、まさかここまで本格的なステーキとヴィンテージ空間を堪能できるレストランに出会えるとは思っていませんでした。

知人の紹介で訪れた場所でしたが、想像を超える完成度と満足感。まるで海外の田舎町でディナーを楽しんだかのような、余韻が今も心に残っています。
■ 店舗情報とアクセス
📍 The Bullcave – Steak House
所在地:Jl. Raya Tirto Samudro, Jepara, Central Java, Indonesia