インドネシアが燃えている。なぜ毎年、乾季になると火災が繰り返されるのか

Indonesia Makassar

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また、インドネシアの森が燃えています。

毎年のように聞くニュースです。「今年はエルニーニョだから仕方ない」そう思ってしまいそうですが、調べてみると、話はそれほど単純ではありませんでした。

マカッサルでは、もう3か月以上まともな雨が降っていません。道路脇の草はすっかり茶色く枯れ、最近はどこかで煙が上がっているのをよく見かけます。今年は、やけに火事が多い。

調べてみると、気のせいではありませんでした。

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南スラウェシも、すでに燃えている

ニュースで大きく取り上げられるのは決まってカリマンタンやスマトラですが、私たちが暮らす南スラウェシもすでに他人事ではありません。

南スラウェシ州のBPBD(地域防災庁)によると、2026年1月から8月にかけて、州内15の県・市で112件の森林・土地火災が発生し、焼失面積は合計1,613.67ヘクタールにのぼります。特に被害が大きいのはEnrekang県で1,044.55ヘクタール、次いでBarru県が315ヘクタール、Tana Toraja県が126ヘクタールです。

そしてマカッサルでは、8月5日時点ですでに6つのケチャマタン(郡)、47,252人が長期的な干ばつによる水不足の影響を受けています。

「今年はよく雨が降らないな」という体感は、統計とほぼ一致していたということです。

全国的に、異常に乾いている年

実はこれは南スラウェシだけの現象ではありません。

インドネシア気象気候地球物理庁(BMKG)が8月21日に公表した分析によると、国土の76.5%がすでに乾季に入っており、実に90.79%の地域で降水量が「少ない」カテゴリーに分類され、87.28%が平年を下回っています。

背景にあるのは、非常に強いエルニーニョと、正のIOD(インド洋ダイポールモード)が重なっていることです。さらに8月24日の最新発表では、乾季入りした地域(ZOM)の割合は79.9%まで拡大しており、BMKGは森林・土地火災リスクの上昇をあらためて警告しています。BMKGは2026年の乾季のピークを7月から9月と予測しています。

つまり今年は、スマトラやカリマンタンだけが燃えているのではありません。南スラウェシも、そしてこの後触れるロンボクも、同じ異常乾燥の年に巻き込まれています。

カリマンタンでは、すでに危険水域

とりわけ深刻なのが西・中央・南カリマンタンです。

8月17日から19日までのわずか3日間で、この3州では高確度のホットスポットが累計750地点検出されました。特に19日は一日だけで518地点まで急増しています。ホットスポットの数がそのまま火災件数を意味するわけではありませんが、異常な熱源が短期間で急増していることは間違いありません。

7月までの焼失面積はすでに約9万4,000ヘクタール。煙は国境を越えてマレーシアやブルネイにまで流れ込み、マレーシアのサラワク州では約600校が休校となり、およそ20万人の児童・生徒に影響が出ています。

インドネシア政府は航空機を使った消火活動を強化していますが、警察はすでに森林・泥炭火災への関与が疑われる72人を逮捕し、89件を捜査中です。企業4社についても調べが進んでいます。

オランウータンが、火に追われている

そして今、まさにニュースの中心にいるのがオランウータンです。

西カリマンタン州のKetapangでは、保護されたオランウータン約60頭を収容するリハビリ施設のすぐ近くまで火災が迫りました。一時は施設からわずか100メートルほどまで炎が接近し、60頭を施設の中央部へ緊急移動させる事態になっています。

施設のオランウータンだけではありません。Sungai Putriという泥炭林にも火災が迫っています。ここには推定750頭から1,750頭のボルネオオランウータンが生息し、西カリマンタンで3番目に大きな個体群とされています。

火災から逃げてきたオランウータンが人間の農園に入り込み、保護されるケースもすでに発生しています。

森林が燃える。餌場と生活圏を失う。人間の農園や村に出てくる。人間との衝突が起きる。捕獲され、移送されるという悪循環です。

WWFインドネシアも、オランウータンに対する主要な脅威として、生息地の消失、違法伐採、森林火災、密猟・違法取引を挙げています。火災は、その中の一つの要因にすぎません。しかし今年のように乾燥が強い年には、これが一気に表に出てきます。

なぜ、毎年燃えるのか

ここからが、この記事の本題です。

原因は大きく分けて三層構造になっています。「人間が火をつける」+「泥炭地が燃えやすい状態になっている」+「乾季とエルニーニョが火を巨大化させる」という組み合わせです。

これはとても重要なポイントです。インドネシア環境省は2026年7月、森林・土地火災の大部分は純粋な自然災害ではなく、人間の活動に関係していると説明しています。

① 自然発火ではない

典型的なのが、焼畑や土地造成のための火入れです。森林を伐採したあと、残った木や草を重機で撤去するよりも、燃やしてしまうほうが圧倒的に安く早い。小規模農家だけでなく、農園開発や土地取得など、複数の利害がここに絡みます。

これは単なる推測ではありません。8月24日、林業省はリアウ州のBukit Rimbang Baling野生生物保護区で、森林を燃やして土地を開墾し、その後アブラヤシを植える目的だったとみられる事件で、3人を容疑者として立件したと発表しました。西カリマンタンなどでは、森林内の土地売買や、企業を含む捜査も進んでいます。

「火災が起きたから森がなくなる」だけではなく、「土地を使うために火をつける」という逆の因果関係が、少なからず存在しているということです。

② 泥炭地というスポンジが、乾いた燃料に変わる

インドネシアの森林火災を理解するうえで、最大のポイントがここにあります。

スマトラやカリマンタンには、広大な泥炭地(peatland/lahan gambut)が広がっています。泥炭とは、何千年もかけて植物の遺骸などが水の多い環境で完全に分解されないまま堆積してできた、有機物の層です。本来は水を大量に含んだ巨大なスポンジのようなもので、水浸しの状態であれば簡単には燃えません。

ところが、アブラヤシ農園や植林地として利用するために、排水用の運河(kanal)が掘られることがあります。水位が下がる。泥炭が乾燥する。巨大な可燃物になる。そこに一度火が入ると、地下まで燃え広がっていきます。

インドネシアには約1,340万ヘクタールの熱帯泥炭地があり、そのうち400万から600万ヘクタールがすでに劣化し、火災に弱くなっているとWetlands Internationalは指摘しています。

泥炭火災が厄介なのは、地表だけが燃えているわけではないという点です。地下の泥炭層はくすぶり続けます。だから上から水をかけて「消えた」と思っても、地下では燃え続けていて、別の場所からまた煙や炎が出てくることがあります。インドネシア国家防災庁(BNPB)も、排水路による泥炭地の乾燥が火災リスクを高め、地下で長期間燃え続けるために消火が非常に難しいと説明しています。

③ そこにエルニーニョが重なる

人間による火入れがあったとしても、雨が多ければ大規模な火災にはなりにくいものです。しかしエルニーニョの年は、インドネシアの一部地域で乾季が厳しくなります。今年の西カリマンタンでは、40日間雨が降らなかった地域も報告されています。

乾燥した泥炭地に、小さな火が入っただけで――火入れ、乾燥した泥炭、強風、そしてエルニーニョが重なり、制御不能な火災へと発展していきます。

エルニーニョそのものが「火をつけている」わけではありません。人間が作ってしまった燃えやすい環境を、異常な乾燥が増幅している、と考えるほうが正確です。

なぜ、10年以上たっても繰り返されるのか

2015年にもインドネシアでは、政府の集計で約260万ヘクタールが焼失する歴史的な大火災が起きました。World Bankの分析によれば、そのほとんどは農地開発などのために人為的に付けられた火が、干ばつとエルニーニョによって制御不能になったものです。被害額は約161億ドルと推計されています。それから10年以上がたっています。

政府が何もしていないわけではありません。泥炭地の水位管理、火災監視、消防隊の配置、衛星監視、企業への規制、法執行——かなりの対策が取られてきました。それでも、繰り返されます。

なぜか。

背景にあるのは、土地を開発したい企業、アブラヤシを植えたい小規模農家、土地売買、違法な森林開墾、地方経済と雇用、複雑な土地所有権、そして監視と法執行の難しさが、複雑に絡み合っている構造です。

そしてパーム油は、インドネシアにとって巨大な産業です。森林を守ることと、地域住民が生活していくことと、世界最大のパーム油産業を維持することを、同時に成立させなければならない。これが、非常に難しいのです。

「パーム油企業が悪い」という一言で終わらせるのは簡単です。しかし現場には、生活のためにこの産業に関わっている人たちもいます。単純な善悪では割り切れないところに、この問題の根深さがあります。

その間にいるのが、オランウータン

ここまで整理すると、オランウータンの問題が少し違って見えてきます。

彼らが絶滅の危機にある理由は、火事だけではありません。森林が農園に変わる。生息域が分断される。残った森林が乾燥する。火災が発生する。さらに森林が減る。オランウータンが人間の生活圏に出てくる。人間との衝突が増える——という連鎖です。

西カリマンタンの現場では、森林が農地やアブラヤシ農園に変わることで、オランウータンが以前から使っていた行動圏と、人間の生活圏が重なってしまう問題も報告されています。火災は、この長い連鎖の中の、最も目に見える一場面にすぎません。

そして、ロンボクの伝統集落も焼けた

森林や泥炭地だけではありません。8月22日夜、ロンボク島中部のSade村(Kampung Adat Sade、ロンボク・テンガ県プジュット郡)で大きな火災が発生しました。

当初は120棟以上とも報じられましたが、県による改めての集計では、75棟の住居と69軒の工芸品店が焼失。モスクや伝統的なあずまや、穀物倉、村役場、伝統的な門なども被害に遭い、被害者は320人・120世帯、推定損失額は約340億ルピアにのぼります。幸い、死者は出ませんでした。

Sade村は、ササック族の伝統的な暮らしを今も残す、ロンボクを代表する観光地の一つです。木材、竹、そして茅(alang-alang)で作られた伝統家屋が密集していたため、一軒から出た火が瞬く間に燃え広がりました。

出火原因は、この記事を書いている時点でまだ特定されていません。警察とバリ州警察の法科学チームが、電気系統のショートなのか他の要因なのか、現場検証を続けています。

これを、単なる「乾季の森林火災」と同一視することはできません。この記事を書いている時点では、出火原因そのものもまだ特定されていないからです。

ただ、木材や竹、茅で造られた家屋が密集する伝統集落で、ひとたび火が出ればどれほど大きな被害になるのか。今回の火災は、その怖さを改めて見せつけました。

森林火災とは原因が違っても、「乾季のインドネシアで火をどう管理するのか」という点では、決して無関係な話ではないように思います。

インドネシアは、火災とどう付き合うのか

カリマンタンの泥炭火災も、南スラウェシの山林火災も、ロンボクの集落火災も、原因や規模はそれぞれ違います。しかし共通しているのは、今年のインドネシアが、記録的なレベルで乾いているという事実です。

火災そのものをゼロにすることは、おそらくできません。人が土地を使い、生活していく限り、火は今後も使われ続けます。問題は、乾燥という条件が重なったときに、その火がどこまで制御不能になるか、という点にあるのだと思います。

マカッサルでは、今日も雨が降っていません。

道路脇の草は茶色く枯れたままです。ニュースを見れば、カリマンタンでは森が燃え、オランウータンが火に追われています。ロンボクでは、何世代にもわたって残されてきた伝統家屋が一晩で焼けました。

インドネシアに暮らしていると、乾季は毎年来ます。火災のニュースも毎年見ます。

だからこそ、いつの間にか「また今年もか」と思ってしまう。でも、本当にそれでいいのだろうか。今年の乾ききったマカッサルを見ながら、そんなことを考えています。

記事の最後
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