イスラムの街マカッサルで迎えるハロウィンとクリスマス ― 多様性を感じる季節の風景

Indonesia Makassar

インドネシア・マカッサルでは、イスラム教徒が大多数を占めるにもかかわらず、ハロウィンやクリスマスの飾りが街を彩ります。宗教の違いを超え、イベントとして楽しむその光景には、多様性を受け入れる穏やかな寛容さが感じられます。現地の様子を写真とともにお伝えします。

ハロウィンのかぼちゃとサンタクロースの共演

10月の終わり、インドネシア・マカッサルのショッピングモールを歩いていると、思わず足を止めてしまいました。入口には「HAPPY HALLOWEEN」と書かれた看板、オレンジと黒の風船、そして山のように積まれたかぼちゃたち。

その数メートル先では、すでにサンタクロースの人形やクリスマスツリーがずらりと並んでいました。

イスラム教徒が圧倒的多数を占めるマカッサルで、ハロウィンとクリスマスが同時に存在するという不思議。けれど、その雰囲気はどこか穏やかで、誰もが自然にそれを受け入れているように感じました。宗教よりも「イベントを楽しむ」という感覚が、この街の日常に溶け込んでいるのです。

ハロウィン ― 異文化イベントとしての定着

スーパーマーケットの入り口では、ハロウィン特設コーナーが明るく飾られていました。

笑顔のかかしやかわいいおばけの人形、そして色とりどりのかぼちゃが山積みになっています。

ハロウィンはインドネシアでは祝日ではありませんが、ここ数年で若者を中心に広まりつつあります。

学校やカフェ、モールでは簡単な仮装イベントやフォトブースが設けられ、子どもたちは魔女や吸血鬼の格好をして写真を撮っています。宗教的な意味よりも、「みんなで楽しむ日」「SNSに載せる日」として定着しているようです。

宗教が違っても、楽しめるならそれでいい。

そんな柔軟な価値観が、イスラムの国インドネシアの魅力でもあります。

クリスマス ― 赤と金が輝く季節の風景

ハロウィンコーナーの先に進むと、一足早くクリスマスの世界が広がっていました。

サンタクロースの大きな人形が笑顔で立ち、手にはテディベアを抱えています。

背後には雪のように白く輝くリース、足元には赤いカーペットが敷かれ、まるで北欧の冬の風景のようです。

棚にはたくさんのオーナメントやぬいぐるみ、LEDライトが並び、どれも可愛らしくて見ているだけで気持ちが明るくなります。

特に目を引いたのは「Christmas Champagne」と名づけられた金色のツリー。価格はRp14,600,500(約14万円)と高級志向ですが、ゴールドのリボンとライトの輝きがとても華やかです。

マカッサルではキリスト教徒はごく一部ですが、毎年11月を前にして街の商業施設ではクリスマス装飾が始まります。人々は宗教行事としてではなく、「年末の雰囲気を楽しむイベント」として受け入れているようです。

モールを歩くヒジャブ姿の女性がサンタクロースと一緒に写真を撮っている光景は、この街ならではの温かさを感じさせます。

多様性を楽しむ社会 ― 「みんなで祝う」インドネシア

イスラム教徒が9割を超えるこの国で、なぜハロウィンやクリスマスが広く親しまれているのでしょうか。それは、「違いを恐れず、楽しむことを共有する」というインドネシアらしい考え方にあります。

ラマダン明けのレバラン(断食明けの大祭)では、イスラム教徒だけでなく他宗教の人も祝福の言葉を交わします。一方でクリスマスになると、イスラム教徒の友人から「Selamat Natal(メリークリスマス)」とメッセージが届くこともあります。宗教の違いよりも、相手を思いやる気持ちの方が大切にされているのです。

インドネシアの国是である「Bhinneka Tunggal Ika(多様性の中の統一)」という言葉は、この精神をよく表しています。

ハロウィンもクリスマスも、宗教ではなく“文化としてのイベント”として広まり、みんなが一緒に楽しめる社会を象徴しているように思います。

日本との共通点と違い

日本でも宗教色を感じさせない形でハロウィンやクリスマスが楽しまれています。

10月に入るとハロウィンの飾りが街を彩り、終わる頃にはすぐにクリスマスソングが流れ始める――そんな季節の移り変わりはマカッサルでも同じです。

ただ、ひとつ違うのはその“トーン”です。

日本の飾りが華やかで都会的なのに対し、マカッサルのクリスマスは素朴で温かみがあります。

通路に並ぶ小さなツリーや、手作り感のあるオーナメント。派手ではありませんが、どこか人の温もりを感じる優しい雰囲気があります。

イスラム教徒の家族が子どもと一緒にツリーを見上げて笑っている姿を見ると、「宗教よりも人とのつながりを大事にする国なんだな」と感じます。

イベントがつなぐ心の距離

マカッサルで暮らしていると、宗教や民族の違いを越えて、共に喜びを分かち合う姿をよく目にします。

たとえ信仰が違っても、「おめでとう」と言える。

たとえ祝日が違っても、一緒に楽しめる。

そんな温かい空気が、この街にはあります。

ハロウィンのかぼちゃを前に写真を撮る子どもたち、そしてその隣でクリスマスツリーを見上げるカップル。

そのどちらにも、“今を楽しむ”という共通の心があります。

イスラムの街マカッサルに流れる、穏やかで寛容な祝祭の空気――それは、まさにこの国の多様性そのものだと思います。

まとめ:宗教を超えた「楽しむ心」

イスラムの街にハロウィンとクリスマスが同時に存在すること。

それは矛盾ではなく、「多様性を受け入れる力」のあらわれだと感じます。

ハロウィンのかぼちゃとサンタクロースが並ぶ光景は、異文化が交わりながら調和しているインドネシアの姿そのものです。

宗教が違っても、楽しむ気持ちは同じ。

マカッサルの穏やかな季節の風景は、そんなシンプルで美しいメッセージを私たちに伝えてくれているように思います。

 

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