ビアクの市場が好きだ
初めて訪れる街では、できるだけ市場へ行くことにしています。
観光地よりも、市場のほうがその土地の日常に近いからです。何が並び、どのように売られ、どんな人たちが買いに来るのか。そこを歩くだけで、その街の暮らしが少し見えてきます。
マカッサルをはじめ、インドネシア各地の市場を歩いてきました。しかし、ビアクの市場に入った瞬間、いつもとは少し違うものを感じました。

整然と並んだ野菜たち
市場は、それほど大きくありません。
けれども、売り場にはトマト、唐辛子、ネギ、ニンジン、キャベツなどが、驚くほどきれいに並べられていました。
赤、緑、黄色。色鮮やかな野菜が、まるで商品見本のように整然と並んでいます。雑然としていることも市場の魅力ですが、ここには不思議なほどの清潔感がありました。
どれも新鮮で、表面がつやつやと光っています。
「おいしそう」というより、思わず「かわいい」と言ってしまうような並び方でした。

売り場ごと、全部がかわいい
店ごとに、野菜の並べ方が少しずつ違います。
唐辛子を小さな器に分けて並べている店。トマトや柑橘類を色ごとにまとめている店。ネギをきれいに束ね、台の手前にそろえている店。
野菜をただ積んで売っているのではありません。それぞれの店主が自分の売り場を整え、大切に見せていることが伝わってきます。
洗練されたスーパーマーケットではありません。素朴な市場です。それなのに、売り場の一つひとつを写真に撮りたくなりました。


海のそばに並ぶ、ピカピカの魚
もちろん、魚もあります。
青いシートや紫色の布の上に、小さな魚がきれいに並べられていました。つい先ほどまで泳いでいたのではないかと思うほど、銀色の魚体が光っています。
水産の仕事をしているため、魚を見ると、どうしても鮮度や扱い方が気になります。しかし、この市場の魚から最初に受けた印象は、仕事としての評価よりも、単純に「きれいだな」というものでした。
海に囲まれたビアクで水揚げされ、市場へ運ばれてきた魚。小さな売り場からも、島と海の近さが伝わってきます。



これもJICAの支援のおかげなのだろうか
今回のビアク訪問では、JICAの協力によって整備された水産関連施設も見学しました。
そのことを知った後だったため、市場の整った様子を見ながら、ふと思いました。この清潔さや美しい並べ方にも、これまでの支援や市場整備が、何らかの形でつながっているのだろうか、と。
実際のところはわかりません。もともとビアクの人たちが持っている習慣や美意識なのかもしれません。
いずれにしても、立派な施設だけでなく、こうした日常の売り場まできれいに保たれていることに、この島の魅力を感じました。
大きさではなく、好きになれる市場
大都市の市場のような圧倒的な品数も、迷路のような広さもありません。
一回りすれば、すぐに出口へ着いてしまうほどの小さな市場です。
それでも私は、これまで訪れたインドネシアの市場のなかで、ここが一番好きかもしれないと思いました。
野菜も魚も、売り場も、そこで働く人たちも、どこか丁寧で、すべてがかわいらしく見えたからです。
市場を出るころ、海の向こうでは夕日が沈み始めていました。
知らない土地を好きになるのに、大きな出来事は必要ないのかもしれません。
きれいに並んだ野菜と、ピカピカに光る魚。それだけで、ビアクという島が少し好きになりました。
