バリ島で空港とチャングーを結ぶ鉄道計画が進んでいます。渋滞解消には期待する一方、工事の影響や観光客の増加も気になるところ。バリの暮らしや風景を残す開発について考えます。
先日、ニュースを見ていて、「バリに鉄道」という見出しが目に留まりました。
調べてみると、11月5日にプラボウォ大統領が国鉄KAIのボビー社長と面会し、バリでの鉄道整備を進めるよう指示したそうです。ルートは、ングラ・ライ空港からクタ、レギャン、スミニャックを通ってチャングーまで。バッテリーで走る電動トラムを想定していて、まず空港からレギャンまで、次にレギャンからチャングーまでの2段階で造る計画です。KAI社長によると、事業費は2兆ルピアを超える見込みとのことでした。
バリの渋滞を知っている人なら、まず「それは助かる」と思うのではないでしょうか。空港を出てから、ホテルに着くまでの時間が読めない。数キロ先に行くだけなのに、車がまったく進まない。あの状態を考えると、私も最初は素直に「できれば嬉しい」と思いました。
でも、少し時間がたつと、別のことが気になってきました。
完成した姿を想像すると便利そうです。けれども、工事のあいだはどうなるのでしょう。今でさえ混んでいる道路です。道路の一部を使って工事を進めるのであれば、車線が減って、渋滞はさらにひどくなりそうです。
それに、バリには寺院がたくさんあります。大きな寺院だけでなく、道ばたや家の敷地にも祠があり、日々お供え物が置かれています。祭礼の日には、行列が道路を通ることもあります。線路をどこに通すのか、それを決めるだけでも、簡単な話ではないように思えます。
バリ州知事も、今回の計画について、バリらしさや景観を守ること、住民の暮らしを妨げないことの必要性を強調しているそうです。行政の側も、そこが大きな課題だと分かっているのだと思います。
KAI社長は、工事におよそ2年かかると説明しています。ただ、いつから数えて2年なのか、調査や設計、地元との話し合いまで含むのかは、この記事だけでは分かりません。私は、2年後に乗れるとは、まだ考えないようにしています。
こう思ってしまうのは、バリについては、これまでも大きな計画の話を何度か耳にしてきたからです。ギリマヌクとムンウィを結ぶ高速道路の話、北部に新しい空港を造る話。そのたびに「いよいよか」と思うのですが、私の目には、まだはっきりした形が見えてきていません。
もちろん、表に出ないところで準備が進んでいるのかもしれません。ただ、発表と完成のあいだには、資金、用地、地域の合意と、いくつもの段階があります。今回の鉄道も、本当にできるのだろうか。できてほしいとは思いますが、まだ半信半疑です。
ただ、工事以上に気になることがあります。
交通が便利になるのは嬉しいことです。でも、それがさらに多くの観光客を呼び込むことにつながったら、バリは受け止められるのでしょうか。
道路を広げても、車が増えればまた混みます。水やごみの問題もあります。観光客にとっての便利さと、そこで暮らす人にとっての暮らしやすさは、いつも同じとは限りません。
開発が続いた先に、どんなバリが残るのでしょうか。
個人的には、もうこれ以上は、そっとしておいてもいいのではないかと思っています。
とはいえ、バリでは観光が多くの人の暮らしを支えています。観光客が減れば困る人もいます。開発をすべて止めればいい、という話でもありません。
だからこそ、鉄道を造るのであれば、「もっと観光客を呼ぶため」ではなく、「今の混雑を減らすため」であってほしいと思います。今走っている車やバイクの一部が鉄道に置き換わり、地元の人の通勤や買い物も楽になる。そういう鉄道なら、心から歓迎できます。
観光客が増えても、住んでいる人の生活が不便になってしまっては困ります。
もし本当にバリに鉄道ができたら、私も一度は乗ってみたいと思います。空港からの移動が楽になるなら、それは嬉しいことです。
でも、バリに行く楽しみは、移動が便利なことだけではありません。
今ある混雑を和らげながら、バリの暮らしや風景も残していく。そんな整備になってくれたらと、マカッサルから見ています。
参考記事