出張でジャカルタに来ました。
ポンドックインダモールを歩いていたら、見慣れた赤い看板が目に入りました。
スシロー。
日本ならなんてことのない光景です。でも普段、スシローのない街マカッサルで暮らしていると、これだけで少しテンションが上がります。
「いいなあ、ジャカルタにはスシローがあるのか。」
そう思いながら、久しぶりのスシローに入りました。
2026年8月現在、ジャカルタ首都圏にはすでに10店舗あるそうです。
日本企業の海外進出という話として見ることもできますが、それより気になったのはこちらです。
10店舗もあるということは、これはもう「珍しい日本食」ではなく、日常の外食の選択肢になりつつあるということでしょう。
値段だけ見れば、決して安くない
店内では14K、19K、25K、33Kといった皿が並んでいました。
インドネシアの一般的な外食価格と比べると、決して格安というわけではありません。
それでも店内は賑わっていました。
少なくとも、「安さだけ」で選ばれている店ではなさそうです。日本らしい体験や、安定した品質も含めて支持されているのだと思います。
インドネシアでビジネスをしている人間として見ると、これもなかなか興味深い光景でした。
トロ、イカ、サーモン、いくら、タコ、出てきた皿を見て、一番感じたのは「ちゃんと満足感がある」ということでした。
「海外の日本食だから、このくらいで仕方ない」という感じではまったくありません。ネタが大きい。見た目もきちんとしている。そして食べたときに、ちゃんと満足感がある。
特にトロは、正直かなりのインパクトでした。
そして食べながら改めて思ったのは、インドネシアの水産物が、こうした日本の寿司チェーンの品質を支える食材になっているということです。
海外の日本食というと、日本から食材を持ってきて、日本と同じものを再現するイメージを持つかもしれません。でも、インドネシアは世界有数の水産国です。魚もあれば、エビもある。もちろん、私が暮らすマカッサルにも豊かな水産資源があります。
そうしたインドネシアの水産物も生かしながら、日本人が食べても「ちゃんとおいしい」と思える寿司にする。実際に食べてみると、これは簡単なことではないだろうなと思います。
単に「日本のスシローをインドネシアに持ってきた」のではなく、インドネシアの食材と、日本の品質をうまくつないでいる。
そこに、スシローの強さを感じました。
ただ、今回一番印象に残ったのは味だけではありません。
店頭には「NO PORK / NO LARD」の表示。店内にはインドネシア国旗。そして「Merdeka Selection」という限定メニュー。
日本のスシローを、そのままコピーして持ってきているわけではないのです。
日本らしさを残しながら、きちんとインドネシアに合わせています。
この「現地化のさじ加減」を見られたのが、今回一番の収穫だったかもしれません。
そしてもうひとつ、目が離せなくなった展示がありました。
「JOURNEY OF PERFECTION — From Makassar to Sushiro」
エビの養殖、収穫、加工、QC、IQF、そして提供まで。一連の工程が写真とともに紹介されていました。
普段マカッサルで水産物に関わっている身としては、これはかなり興味深いものでした。
ジャカルタのスシローの店内で「マカッサル」という文字を見ると、なんだか不思議な気持ちになります。
日本の外食チェーンの裏側には、インドネシア各地の漁業や養殖業、加工業、物流がつながっています。一皿の寿司だけを見ていると、そんなことはほとんど意識しません。
でも、その一皿がテーブルに届くまでには、海があり、漁師や養殖業者がいて、加工する人がいて、品質を管理する人がいて、運ぶ人がいる。
自分が日々向き合っているインドネシアの水産業も、こうやって一皿の寿司につながっていく。その一端を、目の前で見せてもらったような気がしました。
日本に住んでいれば、こんな会話で終わる話です。
「今日はスシローにする?それともスーパーで寿司買う?」
でも海外では、そもそもその選択肢自体がない街の方が多いのです。
食べたいと思ったときに、日本で慣れ親しんだ味を普通に食べられる。
それ自体が、生活の質をかなり変えます。
海外生活で恋しくなるのは、実は高級な日本料理ではなく、こういう「普通に食べられる日本」なのかもしれません。
ジャカルタには、スシローが何店舗もあります。
日本に住んでいた頃なら、「だから何?」と思っていたでしょう。
でも、海外で暮らすようになって、そのありがたさが少し分かるようになりました。
食べたいと思った日に、スシローへ行ける。
スシローがある生活。それだけのことが、こんなに羨ましく思える日が来るとは、日本にいた頃は想像もしませんでした。