Categories: Indonesia

ルピア18000突破!利上げしても止まらないルピア安 ― 市場が本当に恐れているもの

記事の冒頭
この記事が役に立ったら、1クリックで応援お願いします

2026年6月、インドネシアルピアはついに1ドル18000ルピアを突破しました。中銀は利上げと市場介入を続けていますが、ルピア安は止まりません。その背景には、プラボウォ政権の大型財政支出、財政赤字拡大、原油高による補助金負担、そして中央銀行の独立性低下への懸念があります。ルピア急落の本当の理由を現地から解説します。

本文の途中(見出し前)
この記事が役に立ったら、1クリックで応援お願いします

ついに先週ルピアが1ドル=18000ルピアを突破しました。

インドネシア銀行(Bank Indonesia)はルピア防衛のため利上げに踏み切り、市場介入も続けています。それにもかかわらず、ルピア安は止まりません。

普通であれば、利上げは通貨高要因です。しかし今回は違います。

市場が見ているのは金利ではなく、

「インドネシアの財政」と「中央銀行の独立性」

だからです。

実は現在のルピア安は、1997年のアジア通貨危機以来とも言われるほど、インドネシア経済の根本的な課題を映し出しています。

利上げしても通貨が買われない異常事態

通常、新興国通貨が下落すると中央銀行は利上げを行います。

金利が上昇すれば海外投資家はその国の国債や預金を保有したくなり、資金流入によって通貨は安定します。

しかし今回のルピアは違いました。

インドネシア銀行は5月会合でルピア防衛を目的とした利上げを実施しましたが、市場はほとんど反応していません。

なぜでしょうか。

それは市場が

「金利の問題ではない」

と考えているからです。

プラボウォ政権の8%成長目標

現在の問題の出発点はプラボウォ政権です。

プラボウォ大統領は2029年までに

経済成長率8%

という野心的な目標を掲げています。

しかしインドネシアの成長率は近年5%前後です。

8%を達成するためには、現在よりさらに3ポイント近く成長率を押し上げなければなりません。

そのため政権は大型財政政策を次々に打ち出しています。

無償給食政策は年間数百兆ルピア規模

特に注目されているのが

学校給食無償化政策

です。

対象は約8000万人。

さらに、

公務員給与引き上げ

低所得者向け現金給付

公営住宅建設

無料健康診断

病院建設

学校改築

なども進めています。

国民から見れば歓迎される政策ですが、市場から見ると話は別です。

問題は

「そのお金をどうやって払うのか」

です。

財政赤字は法定上限ギリギリ

2025年の財政赤字は

GDP比▲2.92%

まで拡大しました。

インドネシアの財政赤字上限は

GDP比▲3%

です。

つまり法定上限のほぼ直前です。

しかもこれはコロナ禍を除けば約20年ぶりの水準です。

市場は

「このままでは3%を超えるのではないか」

と考え始めています。

原油高が補助金を直撃

さらに問題なのがエネルギーです。

インドネシアは2004年から石油純輸入国になっています。

現在、中東情勢の悪化によって原油価格は高止まりしています。

しかし政府は国民負担を避けるため、

Pertalite

Solar

など補助金燃料の価格を維持しています。

つまり原油価格が上昇するほど政府負担が増えます。

今年度予算では原油価格を1バレル70ドル程度で想定していましたが、実際の価格はそれを大きく上回っています。

市場が心配しているのは、

補助金による財政赤字のさらなる拡大

です。

市場が最も警戒している中央銀行問題

そして今回最も重要なポイントがあります。

それが

中央銀行の独立性

です。

実は最近の法改正によって、

インドネシア銀行の使命に

「経済成長と雇用創出の支援」

が追加されました。

さらに議会が中央銀行に対して拘束力を持つ勧告を出せる仕組みも導入されています。

なぜ中央銀行の独立性が重要なのか

投資家が中央銀行に求めるのは

政治から独立した判断

です。

例えば通貨安が進めば、

景気が悪くなっても利上げを行う。

これが本来の中央銀行です。

しかし政治が介入すると、

選挙や支持率を優先して

「景気優先」

になりやすくなります。

市場が恐れるのは、

ルピア防衛よりも経済成長が優先されることです。

大統領の甥が中央銀行副総裁に

さらに市場を驚かせたのが、

プラボウォ大統領の甥である

トマス・ジワンドノ氏

の副総裁就任です。

もちろん本人の能力とは別問題です。

しかし海外投資家から見ると、

「中央銀行が政権に近づきすぎている」

ように見えます。

実際、この人事以降、

中央銀行の独立性への懸念は強まりました。

通貨危機ではなく「信認危機」

ここで重要なのは、

現在のインドネシアは1997年とは違うということです。

外貨準備もあります。

銀行も健全です。

企業のドル建て債務も減っています。

そのため突然崩壊するような通貨危機の可能性は高くありません。

しかし今起きているのは

信認危機

です。

市場が

「政府は本当に財政規律を守るのか」

「中央銀行は本当に独立しているのか」

を疑い始めています。

18000は通過点なのか

市場が最も恐れているのは、

  • 財政赤字拡大
  • ルピア安
  • インフレ
  • さらなる補助金
  • 財政悪化

という悪循環です。

これが続けば、

18000ルピアは通過点になる可能性もあります。

実際にルピアは17000、17300、18000と短期間で下落を続けています。

まとめ

今回のルピア18000突破は、中東情勢だけが原因ではありません。

市場は、

プラボウォ政権の大型財政支出

財政赤字拡大

中央銀行の独立性低下

原油高による補助金膨張

を強く警戒しています。

だからこそ利上げをしてもルピア安が止まらないのです。

1997年型の通貨危機になる可能性はまだ高くありません。しかし市場の信頼を失えば、通貨は想像以上に弱くなります。

いま問われているのは、インドネシア経済の体力ではなく、

「政府と中央銀行への信頼」

なのかもしれません。

記事の最後
この記事が役に立ったら、1クリックで応援お願いします
kenji kuzunuki

葛貫ケンジ@インドネシアの海で闘う社長🇮🇩 Kenndo Fisheries 代表🏢 インドネシア全国の魅力を発信🎥 タコなどの水産会社を経営中25年間サラリーマン人生から、インドネシアで起業してインドネシアライフを満喫しています。 インドネシア情報だけでなく、営業部門に長年いましたので、営業についてや、今プログラミングを勉強中ですので、皆さんのお役にたつ情報をお伝えします。