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スラウェシ島に鉄道がもたらす変革

インドネシアのスラウェシ島に2023年に開通したスラウェシ鉄道について詳しく解説します。スラウェシ島の地理的特徴、交通の課題、鉄道プロジェクトの歴史と開発、現状と将来性、地域経済への影響、技術的詳細を掘り下げ、鉄道がもたらす変革と地域発展の新たな鍵としての役割を明らかにします。

スラウェシ島の地理と交通課題

スラウェシ島は、インドネシアの多島海に浮かぶ、アルファベットの「K」のような形状をしたユニークな島です。ジャカルタから南に位置するこの島は、東西南北に細長く延び、地域間の距離が非常に遠いため、交通の便が非常に悪いです。島の南部にあるマカッサルから北部のマナドまで、陸路で約1700kmもの距離があり車で約40時間かかることもあります。このような状況は、地域の経済発展に大きな障害となっており、効率的な物流や人の移動を妨げています。

スラウェシ鉄道の歴史と開発

実は、スラウェシの鉄道の歴史を紐解くとオランダ領東インド時代、1922年にスラウェシ島で鉄道が建設されマカッサルとタカラル間の 47 km を結んでいました。残念ながら、この鉄道はわずか 8 年間しか運行されず1930年(昭和5年)に廃線となりました。この時期は世界恐慌の時期にあたりスラウェシ島も大きな影響を受けたと想像できます。その後スラウェシ鉄道の構想は、スラウェシ島の交通と経済の課題を解決するための壮大なプロジェクトとしてスタートしました。インドネシアの鉄道150周年に合わせて2014年にユドヨノ政権下で初めて提案され、ジョコ・ウィドド政権下で具体的な建設作業が開始されました。この鉄道は、スラウェシ島を南北に縦断し、マカッサルからマナドまでを結ぶ計画で、廃線から93年の歴史を経て2023年3月に第一段階としてマカッサルとパレパレ間の一部分が開通しました。

鉄道開通の現状と将来性

スラウェシ鉄道は総延長157.7キロで、そのうち142キロが本線、15.7キロがガロンコン(Garongkong)港やセメント工場とつながる側線となります。現在までにマンダイ(Mandai)駅からパランロ(Palanro)駅まで建設されていて12ヵ所の駅が設置されていますが、現在列車を運行している区間は、マロス県のマンダイ(Mandai)駅からバルー県の港への側線であるガロンコン駅までのとなります。マカッサル市内への建設がいまだ開始されておらず用地買収の困難が予想されますが、マンダイ駅からマカッサル新港付近(タロTallo)まで建設されることが決定しています。

地域経済への影響と期待される効果

鉄道ルート上には TONASA, BOSOWA , CONCHと3社セメント会社がありそれぞれ引き込み線を持っていることからそのため、当面のガロンコン港湾とセメント工場への引き込み線を活用した、原料・製品輸送になると目されています。スラウェシ鉄道は、地域間の物流を改善し、農産物や工業製品の輸送コストを削減することで、地域経済に多大な影響を与えています。また、新しい鉄道路線の開設は、周辺地域に新たな商業施設や観光スポットの開発を促進し、地元の雇用創出にも寄与しています。これにより、地域全体の生活水準の向上が期待されます。この鉄道がスラウェシ島の経済発展だけでなく、インドネシア国内の他の地域との連携強化にも寄与することを期待しています。

スラウェシ鉄道の技術的詳細と特色

スラウェシ鉄道は、最新の国産電気式ディーゼル鉄道車両を使用し、時速90Km/hでの運行が可能です。この鉄道は、ジャワ島やスマトラ島のレール幅が1067 mmとは異なり、1,435mmの標準軌を採用しており、最大で160km/hの速度で運行することができるそうです。この技術的な特徴により、スラウェシ島内の長距離移動が大幅に効率化され、より快適な移動が可能です。第一段階として、マカッサル市内とパレパレ市内へと延長されれば、車で4時間近くかかっていたマカッサル―パレパレの移動が、鉄道利用で1時間半へと短縮される予定です。さらに将来的には、パレパレから西スラウェシのマムジュを経て、最終的には北スラウェシ・マナドまで繋がる予定です。

出典:https://indonesiabaik.id/infografis/pembangunan-kereta-api-sulawesi

このプロジェクトは、地方開発を進める政権の意志を示すものであり、スラウェシ島における新たな経済の拠点を創出する可能性を秘めています。旅客需要が当初は少ないと見込まれていましたが、開通後の乗車率は約75%に達し、地元住民による観光目的の利用や新しい交通手段への興味が高まっています。また、今後は周辺地域の開発と合わせて、より多くの人々がこの鉄道を利用するようになると考えられます。

まとめ

スラウェシ鉄道は、ただの交通プロジェクト以上の意義を持っており、スラウェシ島の未来に大きな希望をもたらしています。さらに高速鉄道の試験線としての機能も期待されており、インドネシア全体の鉄道技術の発展に寄与することでしょう。このように、スラウェシ鉄道はスラウェシ島のみならず、インドネシア全土の経済発展に貢献する重要なインフラとなる見込みです。次回のブログでは、スラウェシ鉄道に乗車する様子をお伝えします。

kenji kuzunuki

葛貫ケンジ@インドネシアの海で闘う社長🇮🇩 Kenndo Fisheries 代表🏢 インドネシア全国の魅力を発信🎥 タコなどの水産会社を経営中25年間サラリーマン人生から、インドネシアで起業してインドネシアライフを満喫しています。 インドネシア情報だけでなく、営業部門に長年いましたので、営業についてや、今プログラミングを勉強中ですので、皆さんのお役にたつ情報をお伝えします。

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