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50歳から人生を変えてみた
※この連載を初めて読む方へ
第1話
第2話
第3話
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「勇気がありますね」
50歳で会社を辞めてインドネシアへ行くことを決めた時、何度も言われた言葉です。
確かに、周りから見ればそう見えたのかもしれません。安定した会社員生活を捨てる。海外へ行く。会社を作る。普通に考えればリスクだらけです。
しかし実際の私は、そんなに格好良いものではありませんでした。
毎日、不安でした。むしろ、怖かった。
そしてその恐怖は、会社を辞める前よりも、辞めた後の方が大きくなっていったのです。
独立を考え始めた頃の私は、ずっと同じことを考えていました。
失敗したらどうしよう。収入がなくなったらどうしよう。家族に迷惑をかけたらどうしよう。老後資金はどうなるのだろう。50歳で失敗したら、もうやり直せないのではないか。
そんなことばかり考えていました。
不思議なもので、人間はまだ起きていない未来のことを心配します。そして心配すればするほど、その未来が現実のように見えてくる。
頭の中では、会社がうまくいかない、お金がなくなる、日本へ帰る、周囲から「だから言っただろう」と言われる——そんな最悪のシナリオばかりが再生されていました。
昼間は大丈夫なのです。忙しいから、やることがあるから。
しかし夜になると違います。静かになる。考える時間ができる。そして不安が大きくなる。
今振り返ると面白いのですが、当時の私はお金が怖いと思っていました。
しかし実際には違いました。
本当に怖かったのは、「失敗した人間になること」でした。
人は意外と見栄を持っています。私もそうでした。
50歳まで会社員として働いてきた。取引先もいる。友人もいる。家族もいる。その中で挑戦して失敗したら、どう思われるだろう。そんなことを考えていました。
もちろん誰もそこまで気にしていません。しかし本人は気になるのです。自分で勝手にプレッシャーを作り、自分で苦しくなっている。
今なら分かります。でも当時は、真剣でした。
私は時々、「インドネシアへ来た時はワクワクしていましたか」と聞かれます。
もちろんワクワクもありました。しかし、それ以上に不安の方が大きかった。
会社を辞めた。会社を作った。インドネシアへ来た。それで不安が消えると思っていました。
しかし現実は逆でした。不安は消えない。むしろ増えていく。
会社を作っても、「本当にこれで良かったのか」と考える。事務所を借りても、「この固定費は大丈夫だろうか」と考える。スタッフを採用しても、「給料を払い続けられるだろうか」と考える。
人間というのは不思議です。悩みが解決すると、次の悩みを探してくる。だから不安はなくならないのです。
そんなある日のことでした。
私は一人で考えていました。失敗したらどうしよう。本当に大丈夫なのだろうか。何度も何度も、同じことを考えていました。
そしてふと、あることに気付きます。
私は失敗そのものを恐れているのではない。失敗した後の未来を、勝手に決めつけているのだと。
失敗したら終わり。失敗したら人生終了。失敗したら戻れない。
私は、そう思い込んでいました。
でも、本当にそうだろうか。
その時、ふと思ったのです。
ダメなら、また戻ればいい。
本当に単純なことでした。しかし私にとっては、大きな発見でした。
会社を辞めることは人生を終わらせることではない。起業に失敗することは人生の終わりではない。海外でうまくいかなかったとしても、人生は続く。
日本へ帰ればいい。また働けばいい。違う仕事を探せばいい。人生には選択肢がある。
そのことに気付いた瞬間、少しだけ肩の力が抜けました。
若い頃の私は、人生は一本道だと思っていました。学校を卒業する。就職する。働く。定年を迎える。
しかし50歳になって思います。人生は、思っているより自由です。
もちろん年齢を重ねるほどリスクはあります。体力も落ちる。責任も増える。守るものもある。
それでも人生は一発勝負ではありません。途中で方向を変えることもできる。やり直すこともできる。戻ることもできる。
私が50歳で挑戦できた理由は、勇気があったからではありません。
「ダメなら戻ればいい」
そう思えたからです。
インドネシアへ来て5年。順調なことばかりではありませんでした。むしろ思い通りにいかなかったことの方が多かったと思います。
それでも一つだけ、確実に言えることがあります。
「やってみて良かった」ということです。
成功したからではありません。まだ道半ばです。今でも悩みはあります。不安もあります。
それでも、「あの時挑戦してみた」という事実は残りました。
もし挑戦していなかったら、私は今でも考えていたと思います。
「あの時やっていたら、どうなっていただろう」
その後悔を抱えながら生きるより、挑戦して悩みながら生きる方が、私には合っていました。
「後悔のない人生を送りたい」
よく聞く言葉です。
でも私は今、少し違う考えを持っています。
後悔のない人生とは、失敗しない人生ではない。
挑戦して、失敗して、悩んで、迷って、それでも最後に「やって良かった」と思える人生のことではないか。
あの時会社を辞めなかったら、
私は今でも日本で営業をしていたと思います。
それも決して悪い人生ではありません。
でも、おそらく今でも考えていたでしょう。
「あの時、本当に挑戦しなくて良かったのだろうか」と。
インドネシアへ来たことを後悔した日はあります。
でも、挑戦したこと自体を後悔した日は、一度もありません。
少なくとも今のところは。
次回は、
「50歳からでも人生はやり直せるのか」
について書いてみたいと思います。
人生は思ったより長い。そして、思ったより何度でもやり直せるのかもしれません。