「もう50歳だから」
その言葉は、いつの間にか自分を諦めるための言い訳になっていました。
若い頃なら挑戦できた。若い頃なら失敗してもやり直せた。
でも、本当にそうなのでしょうか。
50歳で会社を辞め、インドネシアで新しい人生を始めた私が、55歳になった今思うことがあります。
人生は、一度しかない。
でも人生は、一回戦ではない。
今回は、「50歳からでも人生はやり直せるのか」という問いについて、私自身の経験を通してお話ししたいと思います。
この言葉を口にしたことがある人は、多いと思います。
若い頃なら挑戦できた。若い頃なら失敗してもやり直せた。でも50歳は違う。家族もいる。責任もある。体力も落ちてくる。今さら新しいことを始めるなんて無理だ。
私自身、そう思っていました。
だからこそ、50歳で会社を辞めるという決断は簡単ではありませんでした。
しかし55歳になった今、当時の自分に伝えたいことがあります。
「まだ終わっていない」ということです。
若い頃の私は、50歳を人生の終盤だと思っていました。50歳になれば落ち着く。定年まで働く。老後の準備をする。そんな未来を漠然と想像していました。
しかし実際に50歳になってみると、意外なことに気付きます。
まだ元気なのです。まだ働ける。まだ学べる。まだ失敗できる。まだ挑戦できる。
そして今の時代、平均寿命は80歳を超えています。ということは、50歳は人生の終わりどころか、まだ30年以上残っている計算になります。
30年です。会社員人生より長い人もいるかもしれません。
そう考えると、50歳は終盤ではなく、後半戦のスタート地点なのかもしれません。
私は若い頃、人生は一本道だと思っていました。学校を卒業する。就職する。結婚する。定年まで働く。そして引退する。それが人生だと思っていました。
しかし実際は違いました。
人生は一度しかありません。でも、一回戦ではないのです。
転職する人もいる。独立する人もいる。移住する人もいる。学び直す人もいる。60歳で大学へ行く人もいます。70歳で起業する人もいます。
人生は意外と、何度でも形を変えられる。
私がインドネシアへ来て強く感じたのは、そのことでした。
インドネシアへ来た時、私は50歳でした。
日本では30年以上仕事をしてきました。業界経験もある。営業経験もある。それなりに自信もありました。
しかしインドネシアへ来た瞬間、それらはほとんど通用しませんでした。言葉が違う。文化が違う。商習慣が違う。考え方も違う。
50歳にして、私は新人になったのです。
最初は戸惑いました。正直、情けないと思うこともありました。若いスタッフに教えてもらうこともある。失敗もする。分からないことだらけ。
でも不思議なことに、その感覚は嫌ではありませんでした。むしろ、久しぶりだったのです。
何かを学ぶ感覚。成長する感覚。知らない世界に飛び込む感覚。
それは、20代の頃に感じていた感覚に少し似ていました。
ここで勘違いしてはいけないことがあります。
やり直すというのは、過去を捨てることではありません。
私が50歳で会社を辞めたからといって、それまでの30年間が無駄になったわけではありません。むしろ逆です。
営業で学んだこと。人との付き合い方。失敗した経験。成功した経験。すべてが今につながっています。
人生はリセットボタンではありません。積み上げたものを持ったまま、新しいステージへ進むことです。
だから、50歳のやり直しと20歳のやり直しは違います。
50歳には50歳の強みがあります。経験があります。判断力があります。失敗から学んだ知恵があります。
それは、若さにはない武器です。
55歳になった今、時々考えることがあります。
もしあの時、会社を辞めなかったらどうなっていただろう。
おそらく日本で働き続けていたと思います。それも決して悪い人生ではありません。安定した人生だったでしょう。
しかし私はたぶん、ずっと考えていたと思います。
「あの時、本当に挑戦しなくて良かったのだろうか」と。
人生には挑戦して後悔することもあります。失敗することもあります。傷つくこともあります。
でも私が今まで見てきた中で、一番長く残る後悔は、「やらなかった後悔」です。
やった後悔は、時間と共に薄れていきます。
しかし、やらなかった後悔は、何年経っても心のどこかに残ります。
私は今55歳です。決して若くありません。でも、老人でもありません。
まだやりたいことがあります。まだ行きたい場所があります。まだ会いたい人がいます。まだ実現したい夢があります。
だから私は思うのです。
人生は、思っているより短い。でも、人生は思っているより長い。
そして、人は思っているより何度でもやり直せる。
少なくとも私は、そう信じています。
次回は、
「50歳を過ぎて、初めて見えてきた『時間』の話」
について書いてみたいと思います。
毎日に追われていた頃には気付かなかった、時間に対する感覚の変化についてです。
「50歳から人生を変えてみた」連載一覧