50歳で会社を辞めました。起業経験なし。海外経営経験なし。家族あり。普通に考えれば無謀な挑戦です。それでも私は、日本を離れ、インドネシアで会社を作る道を選びました。これは成功談ではありません。50歳の普通の会社員だった私が、人生後半戦で挑戦した記録です。「人生は何歳からでも変えられるのか」そんな問いに対する、私なりの答えを書いていきたいと思います。
人生は思ったより長い。
でも、思ったより短い。
55歳になった今、そんなことをよく考えます。
もし80歳まで生きるとしたら、あと25年あります。
25年というと長く感じます。
しかし、50歳から55歳までの5年間を振り返ると、驚くほどあっという間でした。
ついこの前まで日本で会社員をしていた気がするのに、気が付けば私はインドネシアのマカッサルで工場を経営しています。
人生というのは不思議なものです。
自分が思い描いていた未来とは、まったく違う場所に立っていることがあります。
そして、その未来は多くの場合、何か特別な才能や幸運によって生まれるわけではありません。
たった一つの決断から始まるのです。
私にとって、その決断は50歳で会社を辞めたことでした。
最初にお伝えしておきたいことがあります。
私はもともと起業家ではありません。
学生時代から「将来は社長になる」と考えていたわけでもありません。
ベンチャー企業を立ち上げた経験もありません。
投資家でもありません。
資産家でもありません。
むしろ、ごく普通の会社員でした。
長年、水産業界で営業の仕事をしていました。
お客様を訪問し、商品を提案し、仕入先と交渉し、ときにはクレーム対応をする。
そんな仕事です。
華やかな仕事ではありません。
しかし私はこの仕事が好きでした。
お客様に喜んでいただけることもありましたし、全国を飛び回るのも嫌いではありませんでした。
家族もいました。
子どももいました。
普通のサラリーマン人生だったと思います。
だからこそ、50歳で会社を辞めるなど、自分でも想像していませんでした。
ましてや海外で会社を作るなど、夢にも思っていませんでした。
40代後半になると、人生の先が少し見えてきます。
20代や30代の頃は、とにかく目の前の仕事に必死でした。
結婚。
子育て。
住宅ローン。
昇進。
転勤。
気が付けば毎日が慌ただしく過ぎていきます。
ところが50歳が近づくと、少し景色が変わります。
子どもも成長する。
仕事にも慣れる。
大きな失敗も少なくなる。
生活も安定する。
一見すると理想的です。
しかし、その一方でこんなことも考えるようになります。
「あと何年働くのだろう」
「定年後は何をするのだろう」
「本当にこのままでいいのだろうか」
もちろん不満があったわけではありません。
会社にも感謝していました。
仕事も嫌いではありませんでした。
それでも、心のどこかに小さな違和感がありました。
このまま10年が過ぎたらどうなるのだろう。
60歳になった自分は、どんな顔をしているのだろう。
そんなことを考える機会が増えていったのです。
50歳というのは不思議な年齢です。
若者ではありません。
しかし老人でもありません。
まだ体力もあります。
経験もあります。
人脈もあります。
一方で、失うものも増えています。
家族。
収入。
社会的信用。
安定した生活。
だから挑戦するのが怖くなる。
実際、私も怖かったです。
若い頃なら失敗してもやり直せると思えます。
しかし50歳になると話は違います。
失敗したらどうするのか。
家族はどうなるのか。
生活はどうなるのか。
そんな不安が頭をよぎります。
だから多くの人は挑戦しません。
そしてそれは決して間違いではありません。
守るべきものがあるからです。
私が初めてインドネシアを訪れたのは2015年でした。
仕事で訪れた南スラウェシ州のマカッサル。
正直に言うと、最初は驚きの連続でした。
交通ルールは日本とは違う。
時間の感覚も違う。
文化も違う。
何もかもが違う。
当時の私は、
「仕事だから来ているだけ」
という感覚でした。
まさか自分がここで暮らすことになるとは思っていません。
ところが何度も訪れるうちに、この国の魅力が少しずつ見えてきました。
若者が多い。
活気がある。
エネルギーがある。
日本では当たり前になったものが、まだこれから伸びていく。
そんな可能性を感じたのです。
そして2020年。
世界はコロナ禍に突入しました。
誰も予想していなかった出来事です。
海外へ行くことも難しくなりました。
人と会うことも制限されました。
多くの人と同じように、私も立ち止まる時間が増えました。
その時に考えたのです。
もし人生があと30年あるとしたら、自分は何をしたいのだろう。
今のまま働き続けるのか。
それとも新しい挑戦をするのか。
正解は分かりません。
今でも分かりません。
しかし、一つだけ思ったことがあります。
それは、
「人生は意外と短い」
ということでした。
多くの人は挑戦するとき、
「失敗したらどうしよう」
と考えます。
私もそうでした。
しかし最終的に私を動かしたのは別の感情でした。
それは、
「やらなかったら後悔するのではないか」
という感情です。
60歳になった時。
70歳になった時。
振り返って、
「あの時、本当は挑戦したかった」
と思うのではないか。
それが怖かったのです。
失敗することよりも、
挑戦しなかった人生の方が怖かった。
それが本音でした。
2021年。
私は会社を辞めました。
周囲から見れば無謀だったと思います。
家族もいました。
安定した仕事もありました。
50歳でした。
しかも挑戦する場所は海外です。
冷静に考えればリスクだらけです。
しかし、その時の私は覚悟を決めていました。
人生は一度しかない。
だったら挑戦してみよう。
そう思ったのです。
当時の私は大きな勘違いをしていました。
会社を作れば事業が始まると思っていたのです。
会社を設立する。
工場を作る。
商品を作る。
売る。
今振り返れば、とても単純に考えていました。
現実は違いました。
会社は作れた。
しかし工場は動かない。
許認可は進まない。
スタッフ教育は難しい。
売上はゼロ。
資金だけが減っていく。
しかも世界はコロナ禍でした。
私はそこで初めて知ることになります。
海外進出とは会社設立ではない。
会社設立は、ようやくスタートラインに立っただけなのだと。
成功自慢ではありません。
起業ノウハウでもありません。
50歳の普通の会社員だった私が、
なぜ会社を辞めたのか。
なぜインドネシアだったのか。
何に悩み、何に苦しみ、何を学んだのか。
その記録です。
もし今、
「このまま定年で終わるのだろうか」
と考えている人がいたら。
もし今、
「人生を変えたいけれど怖い」
と思っている人がいたら。
そんな方に読んでいただければ嬉しいです。