インドネシアでは今、「鉄道」が大きな注目を集めています。2023年に開業した高速鉄道Whoosh(ウーシュ)はジャカルタとバンドンを結び、東南アジア初の高速鉄道として世界から注目されました。
さらに政府はスラバヤまでの延伸構想を検討しており、ジャワ島を縦断する巨大鉄道ネットワークの可能性が語られています。実はジャワ島は、世界でも珍しいほど鉄道に適した条件が揃っている地域です。
人口、都市構造、経済規模などを考えると、将来的にジャワ島は「世界最大級の鉄道市場」になる可能性があります。
一方で、現在のインドネシア鉄道はまだ発展途上の段階にあり、そのギャップこそが大きな成長余地を生んでいます。
ジャワ島が鉄道市場として注目される最大の理由は、人口規模です。インドネシアの人口は約2億8000万人ですが、そのうち約1億5000万人以上がジャワ島に住んでいます。
これは日本の人口を上回る規模です。しかもその人口が一つの島に集中しているため、都市と都市の距離が比較的近く、鉄道輸送に非常に適しています。
ジャワ島には巨大都市が連続しています。首都ジャカルタは都市圏人口が3000万人を超える世界有数のメガシティです。そこから東に向かうと、バンドン、ジョグジャカルタ、スマラン、スラバヤといった人口数百万規模の都市が続きます。こうした都市が一直線に並ぶ地理構造は、日本の東海道に非常によく似ています。
東京、名古屋、京都、大阪を結ぶ東海道新幹線が日本の経済を支えてきたように、ジャワ島でも同じような鉄道ネットワークが生まれる可能性があります。
興味深いのは、これほど人口が集中するジャワ島でありながら、現在の都市間鉄道はまだ非常に古い方式で運行されていることです。
ジャワ島の多くの都市間鉄道は非電化で、ディーゼル機関車が客車を引っ張る方式が主流です。つまり、日本の昭和時代の鉄道のような形態が今も続いています。
インドネシアでは鉄道車両の国産化もまだ発展途上です。都市間列車で使用されている機関車の多くは、アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)から輸入されたものです。
国内で機関車を製造する技術はまだ十分に確立されていません。
一方で、都市鉄道の分野では少しずつ変化が起きています。インドネシアの国営企業INKAによって、通勤電車の国産化がようやく進み始めています。
ジャカルタ首都圏の通勤電車などでは国産車両も増え始めており、インドネシアの鉄道産業は今まさに発展の入り口に立っていると言えるでしょう。
ジャワ島で鉄道需要が高まるもう一つの理由は、道路交通の限界です。
ジャワ島では自動車とバイクの数が急激に増え続けています。
高速道路の整備も進んでいますが、交通渋滞は深刻で、特にジャカルタ周辺では移動に非常に時間がかかります。
物流の面でも道路だけに依存することには限界があり、鉄道輸送への期待が高まっています。
鉄道は一度に大量の人や貨物を運ぶことができ、渋滞の影響も受けにくいため、都市間交通の効率を大きく改善する可能性があります。
インドネシア政府は鉄道を国家インフラの重要な柱として位置付けています。
ジャカルタではMRTやLRTなどの都市鉄道が整備され、都市交通の近代化が進んでいます。
高速鉄道Whooshの開業も、その流れの中にあります。
もし将来、ジャカルタからスラバヤまで高速鉄道が延伸されれば、ジャワ島の主要都市は高速鉄道で結ばれることになります。
これはインドネシアにとって、まさに新しい交通時代の始まりと言えるでしょう。
経済面から見ても鉄道市場の成長は非常に大きな意味を持ちます。ジャワ島には工業団地や港湾が集中しており、製造業や物流の拠点が数多く存在します。
高速鉄道や貨物鉄道が整備されれば、人の移動だけでなく物流の効率も大きく向上します。都市間の移動時間が短縮されれば、ビジネスや観光の流れも活発になります。
こうした経済効果が積み重なることで、鉄道はジャワ島の成長を支える基盤インフラになる可能性があります。
私自身インドネシアに住んでいて感じるのは、ジャワ島のポテンシャルはまだ十分に引き出されていないということです。
都市の規模、人口、経済力を考えると、本来であればもっと高速で効率的な交通ネットワークがあってもおかしくありません。
現在は非電化の機関車列車が主流ですが、これが高速鉄道や電車に置き換わっていくとすれば、インドネシアの交通インフラは大きく変わります。
日本では新幹線が国の経済成長を支えてきました。インドネシアでも同じように、鉄道が国の発展を支える時代が来るかもしれません。
人口1億5000万人が暮らすジャワ島が鉄道で結ばれたとき、そこには世界でも例のない巨大な鉄道市場が生まれることになります。
インドネシアの鉄道革命は、まだ始まったばかりなのです。