インドネシアのスーパーで、冷蔵棚を埋める4種類のヤクルトを発見。街の人混みでも、保冷バッグを引いた販売員を見かけました。1日約600万本を売る販売力と、各地へ冷やして届ける配送網。その凄さを、水産物を扱う日本人経営者の目線で紹介します。
スーパーの乳製品売り場を歩いていて、思わず足が止まりました。
赤、オレンジ、ピンク、青。ヤクルトのパックが、冷蔵ケースの上から下まで何段にもわたって積まれています。棚の手前だけでなく、奥までびっしり詰まっています。
並んでいるのは4種類です。赤がいつものヤクルト、オレンジがマンゴー味、ピンクがストロベリー味、青が糖分を控えたヤクルト・ライト。どれも65mlの5本パックで、この店では赤がRp11,500、マンゴーとストロベリーがRp12,700、ライトがRp14,500でした。
日本のスーパーでもヤクルトは見かけますが、ここまでの量を一か所に並べている売り場は、私は見たことがありません。「これ、本当に売り切れるのかな」と思いながら、しばらく眺めていました。
気になって、ヤクルト本社の資料を調べてみました。
2026年1月から6月までの、インドネシアでの1日あたりの平均販売本数は約596万本。前年の同じ時期より5%ほど増えています。そしてこの数字は、ヤクルトが海外で展開している国・地域の中で一番大きいそうです。
1日600万本というと、1年で20億本を超えます。
私が見たのは一つの店の棚だけです。あの店で実際にどれくらい売れているのかは分かりません。ただ、国全体でこれだけ売れているなら、あの大量陳列も不思議ではないのだと思いました。
ただ、私がいちばん驚いたのは、これが冷蔵品だということです。
ヤクルトは常温で置いておける飲み物ではありません。指定の保管温度は0〜10℃。工場から店に届くまで、そして店の棚に並んでいる間も、ずっと冷やしておく必要があります。
私は水産物を扱う会社をやっているので、冷やして運ぶことの大変さは身にしみています。トラックの温度、積み替えのタイミング、届け先の冷蔵設備。どこかで温度管理が途切れると、品質に影響が出ます。インドネシアは道路事情も電力事情も、日本と同じようにはいきません。
インドネシアのヤクルトの公式サイトを見ると、スーパーやミニマーケット、小さな商店、食堂まで、自社の販売スタッフが専用の冷蔵車で配送していると書かれています。配送先として挙がっているのは、ジャワ、スマトラ、カリマンタン、スラウェシ、さらにバリ、ロンボク、スンバワ、クパン、アンボンです。
これだけの商品を冷蔵棚に並べるには、配送と補充を続ける仕組みが必要です。どうやって各地に届けているのか、詳しく知りたくなりました。
別の日、人であふれる通りを歩いていると、ヤクルトの制服を着た女性がいました。
キャスター付きの赤い保冷バッグを引き、手にはトレーに並べた小さなボトル。保冷バッグにはピンクのストロベリー味のポスターが貼ってあります。人の流れの中を、商品を持って歩いていました。
インドネシアでは、お店への配送とは別に、「ヤクルトレディ」による家庭への宅配も行っているそうです。公式サイトでは、商品を届けるだけでなく、健康についての情報を直接伝えることも役割だと説明しています。写真の女性がヤクルトレディなのかどうかまでは分かりませんが、スーパーの外でも、こうして売っているんですね。
4種類のうち、マンゴー味は2025年6月、ストロベリー味は2026年6月に発売された新しい商品です。
本社の2025年11月の説明では、マンゴー味だけで1日約100万本を販売していたそうです。新しい味一つで100万本というのにも驚きました。
私が見た売り場でも、ストロベリー味の前には「PRODUK BARU(新商品)」の札が立っていました。街頭の保冷バッグにも、ストロベリー味のポスター。オレンジとピンクが加わると、ヤクルトの棚もずいぶん華やかに見えます。
ただ、インドネシアのヤクルトがずっと右肩上がりだったわけではありません。
2025年の1日平均販売本数は約581万本で、前の年とほぼ同じでした。本社の報告書では、食料品の値上がりで人々の購買力が落ちていることを課題に挙げています。2026年1月には値上げもしています。
それでも、2026年に入ってからの販売本数は前年を上回っています。
最初は、ずいぶんたくさん並べているな、と思っただけでした。
私は仕事で冷凍のタコを扱っていますが、冷やしたまま商品を届けるのは簡単ではありません。それをインドネシアの各地で、あの小さなボトルで続けている。
正直、うらやましいと思いました。この配送網をどうやって作ってきたのか、一度話を聞いてみたいです