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ペットボトルは拾われる。カップ水は捨てられる。

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インドネシアで年間100億個規模、小さな水の大きな問題

ホテルのロビーに、カップ入りの水が積まれていました。

透明なプラスチックカップに、フィルムの蓋。ストローが一本、斜めに刺さっています。会議の受付にも、宴会場の入り口にも、同じものが山のように並んでいます。インドネシアで暮らしていると、こんな光景に何度も出会います。しかし日本では、まず見かけません。

最初は「水道水をそのまま飲めない国だから、こういう形が必要なんだろう」と思っていました。でも、それだけでは説明がつきません。インドネシアにも、ペットボトルの水はどこにでもあります。コンビニにも、スーパーにも、ワルンにも。水道水が飲めないという理由だけなら、ペットボトルで十分なはずです。それなのに、なぜわざわざ、飲み切りサイズのカップに入れるのでしょうか。

街で目につく、つぶれたカップ

マカッサルの街を歩いていると、あるものがやたらと目に入るようになりました。道路脇、排水溝のふち、空き地の隅、市場の裏。つぶれたプラスチックカップと、剥がれたフィルムの蓋、そしてストロー。

ペットボトルが同じ場所に落ちていることは少ないです。ペットボトルは、誰かが拾っていくからです。空き瓶や空き缶と同じように、換金できるものは自然と回収されていきます。ところがカップ水の容器は違います。ほとんど拾われないまま、風に飛ばされ、雨に流され、街や川、海などの環境中に残っていきます。

なぜ、同じプラスチックごみなのに、これほど扱いが違うのでしょうか。調べていくと、衛生面や便利さだけではなく、もっと大きな理由が見えてきました。価格です。

調べて見えてきたのは、まず値段でした

販売例では、220ml前後のカップ水は、1個あたりおよそ450〜1,000ルピア。一方、330ml前後の小型ペットボトルは、1本あたりその2倍から4倍程度します。

これが、結婚式や会議、役所、ホテル、病院、宗教行事など、数百人規模に水を配る場面になると、無視できない差になります。100人分なら数万ルピアの差でも、数百人、数千人規模になれば、金額はさらに膨らみます。

容器の作り方も関係しています。カップは薄く、使用する樹脂も少ないです。あらかじめ成形されたカップに水を入れ、フィルムの蓋を熱圧着する方式なので、ボトル容器と比べて包装コストを抑えやすくなります。地方のメーカーの商品がカップ水に多いのも、こうした低価格で生産できる仕組みがあるからでしょう。

「便利だから」というより、「大量に配るときのコストを、ぎりぎりまで下げられる」ことが、カップ水が広く使われている大きな理由なのだと思います。

リサイクルできても、ほとんど回収されません

では、カップ水の容器はリサイクルできないのかというと、そういうわけではありません。素材そのものはプラスチックであり、技術的には再資源化できます。ただ、リサイクルできるからといって、実際に回収されるわけではありません。

カップは軽く、小さいです。カップ本体、フィルムの蓋、ストロー、そしてストローの包装と、素材の異なる部品が組み合わさっています。中には飲み残しの水が入っていることも多く、分別し、洗い、乾かす手間を考えると、集めても割に合いません。

ペットボトルなら、拾って売れば現金になります。だから回収業者や、廃品回収で生計を立てる人たちが積極的に集めます。だがカップ水の容器は、換金価値があまりに低いため、積極的に集められません。リサイクルできることと、実際にリサイクルされることは、別の話なのです。

数字で見る、小さな容器の大きさ

数字を調べてみると、想像していた以上でした。

2022年当時の報道では、インドネシアで生産されるカップ水の容器は年間約104億個。さらに同年、調査団体NZWMC(Net Zero Waste Management Consortium)がマカッサルを含む主要6都市でごみを調べたところ、カップ水の容器がごみ箱だけでなく、道路脇、空き地、水路、海岸など、さまざまな場所で見つかりました。調査で確認されたごみを種類別に見ると、大手飲料水ブランドのカップ容器は、無ブランドのプラスチック片、レジ袋、即席麺の袋に次いで4番目に多かったといいます。

さらに環境団体Sungai Watchの調査を伝えるANTARAの記事によれば、「Brand Audit Report 2024」で220mlのカップ水が4年連続で目立つプラスチックごみとして報告されました。2024年の調査では、河川や最終処分場から10,910個のカップ容器が確認され、これは特定の大手飲料水メーカー由来とされたごみのおよそ30%にあたるといいます。

一つひとつは軽くても、年間100億個規模となれば話は別です。しかも軽いからこそ、風や雨で道路から水路、川、海へと流れていきます。

500ルピアの裏側

カップ水が安いのは、本当に効率がいいからなのでしょうか。それとも、ごみになったあとの処理費用を、誰も十分に負担していないから、安く見えているだけなのでしょうか。

購入する側は、安く大量に配れて助かります。メーカー側も、薄くて軽い容器を使うことで包装コストを抑えられます。もらう側は、無料で提供される水なので、容器のことまで意識しません。しかしその先には、回収しても儲からない廃棄物と、それを最終的に引き受ける自治体の清掃、最終処分場、川や海を清掃するボランティア、そして周辺に暮らす人々の生活環境があります。

商品としての価格は安いです。だが、廃棄後の費用まで含めて考えたとき、それは本当に「安い水」と呼べるのでしょうか。

バリでは規制へ、マカッサルでは今も日常

こうした問題を受けて、動き出した地域もあります。

バリ州の知事は、2025年の通達(Surat Edaran)で、カップ水を含む1リットル未満のプラスチック飲料容器の製造・流通を禁止する方針を示しました。違反した企業には、許可の取り消しや公表といった対応が予定されているといいます。全国レベルでも、環境林業大臣規則75号(2019年)によって、メーカーには2029年までに容器包装などの廃棄物を30%削減するロードマップが課されています。

ただ、マカッサルを含む多くの地域では、こうした規制はまだ現場に届いていません。カップ水は今も、ホテルでも会議でも、当たり前のように積み上げられ、配られ続けています。

もちろん、水道水をそのまま飲めない国で、単純に「禁止すればいい」という話でもないでしょう。それでも、ホテルや会議では給水器と洗えるグラスを使い、企業や行政もカップ水の一括購入を見直すことはできます。同時に、メーカー側にも販売後の容器を回収する仕組みが求められるでしょう。

小さなカップが映し出すもの

一杯の水は、わずか数分で飲み終わります。しかしその容器は、その後何十年も環境の中に残り続けるかもしれません。

カップ水そのものが悪いという単純な話ではありません。カップ水を買う人にとっては安くても、その後始末には別のお金がかかります。その負担を、自治体や清掃する人、川や海の周辺で暮らす人たちが引き受けているように見えます。

マカッサルの道路に転がる、あの小さくつぶれたカップは、インドネシアが抱えるごみ問題を、案外わかりやすい形で映し出しているのかもしれません。

記事の最後
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kenji kuzunuki

葛貫ケンジ@インドネシアの海で闘う社長🇮🇩 Kenndo Fisheries 代表🏢 インドネシア全国の魅力を発信🎥 タコなどの水産会社を経営中25年間サラリーマン人生から、インドネシアで起業してインドネシアライフを満喫しています。 インドネシア情報だけでなく、営業部門に長年いましたので、営業についてや、今プログラミングを勉強中ですので、皆さんのお役にたつ情報をお伝えします。