10月20日で、プラボウォ大統領が就任してちょうど2年になりました。
その節目に合わせるように、インドネシアの有力な世論調査機関のひとつ、SMRC(サイフル・ムジャニ・リサーチ・コンサルティング)が調査結果を発表しました。数字を見て、少し驚きました。
大統領の仕事ぶりに「満足している」と答えた人は44.5%。「満足していない」は53.4%で、不満のほうが上回りました。
昨年11月の調査では、満足度は81.2%でした。1年足らずで、36.7ポイント下がったことになります。
調査は10月1日から10日にかけて、全国の有権者1,213人を対象に行われました。携帯電話を持っている人には電話で、持っていない人には対面で聞いています。
同じ調査では、「今、大統領選挙があれば誰に投票するか」も聞いています。こちらでプラボウォ氏を選んだ人は9.8%でした。24人の名前を示し、それ以外の回答も認める形式です。
この数字だけを見ると、国民のほとんどが大統領を見放したように感じます。ただ、44.5%と9.8%は、質問がまったく違います。
前者は「今の仕事ぶりをどう評価するか」。後者は「今、選挙があれば誰を選ぶか」です。
調査では、大統領の仕事に満足している人でも、投票先にプラボウォ氏を選んだのは2割ほどでした。6割以上は別の候補を選んでいます。仕事はそれなりに評価しているけれど、今選ぶなら別の人がいい。そう考える人が少なくないようです。
順位では、2位のアニス元ジャカルタ州知事が10.3%で、プラボウォ氏は3位でした。ただ、その差は0.5ポイントしかありません。調査が示す標本誤差は±2.9ポイントです。順位よりも、昨年11月の34.9%から大きく下がったことのほうが、政権にとっては重い数字だと思います。
「政府が今すぐ取り組むべき課題」では、生活必需品の値段の高さが30%で最も多く、汚職の撲滅が26.8%、貧困の削減が14.7%と続きました。
経済の状況を「悪い」と答えた人は50.8%。昨年11月は22.7%でしたから、倍以上に増えています。
政権の看板政策にも、厳しい声が出ています。子どもたちに無償で給食を出すMBG(栄養無償給食)は、実施状況に満足している人が33.8%、満足していない人が61.4%でした。
これは「無償給食そのものに反対」という意味ではなく、今のやり方への評価です。それでも、看板政策への不満がここまで大きいのは、政権にとって痛いところでしょう。
村ごとに協同組合をつくるKDMP(紅白村落協同組合)についても、「発展すると思う」と答えた人は15.6%にとどまりました。
今回の調査で1位になったのは、西ジャワ州知事のデディ・ムルヤディ氏でした。支持は35.5%で、2位以下を大きく引き離しています。プラボウォ氏との一騎打ちを想定した質問では、69.3%対18.8%という結果でした。
インドネシアでは「KDM」の愛称で呼ばれています。
人気を支える要因のひとつが、SNSでの発信です。市場や住宅地に出向いて住民の話を聞き、困っている人をその場で助ける。そうした動画が、YouTubeやTikTokで広く見られています。
地元での評価も、驚くほど高いものです。調査会社インディカトールの調査では、西ジャワ州の回答者の95.5%が、デディ氏の仕事ぶりに満足していると答えました。経済紙Bisnis.com(2026年2月17日)の記事で、パジャジャラン大学のフィルマン・マナン氏は、本人の個性に加えて、SNSでの発信が住民の好印象を支えていると分析しています。
伝統的な服装やスンダ語の言い回しなど、地元の文化を大切にする姿も、親しみやすさにつながっているようです。偉い政治家というより、頼りになる地元の兄貴分。そんな印象を持たれているのだと思います。
一方で、問題行動のある子どもを軍の施設で教育する取り組みなど、賛否が分かれる政策もあります。強引すぎる、動画での見せ方を優先している、という批判もあります。マナン氏も同じ記事で、本人の発信とは別の視点から伝えるメディアが必要だと指摘しています。
住民に寄り添う姿と、国全体の経済や外交を動かす力は、別のものです。人気の高さだけで大統領にふさわしいかどうかは、まだ分かりません。
私が一番興味を持ったのは、デディ氏がプラボウォ大統領と同じグリンドラ党の所属だという点です。
最も支持を集めたデディ氏は与党の州知事で、4位のギブラン氏は現職の副大統領です。政権への不満が、そのまま野党への支持につながっているわけではないところが、興味深いと思いました。
SMRCも、プラボウォ氏が再び立候補するなら、デディ氏は出馬しない可能性があると指摘しています。そこで、プラボウォ氏、ギブラン副大統領、アグス・ユドヨノ調整大臣の3人で争う場合も聞いていますが、結果はギブラン氏29.7%、アグス氏28.2%、プラボウォ氏22.7%でした。デディ氏を候補から外しても、プラボウォ氏が優位になる結果ではありませんでした。
次の大統領選挙は2029年です。3年先の話なので、今回の結果がそのまま選挙につながるわけではありません。
プラボウォ大統領が、暮らしがよくなったと国民に感じてもらえれば、支持は戻ってくるかもしれません。デディ氏の人気が3年間続くのか、実際に立候補するのかも分かりません。誰が誰と組むのかによって、選挙の構図は大きく変わります。
西ジャワ州知事の活動が、SNSを通じて全国に届き、大統領候補として名前が挙がる。地方政治家の知られ方も、変わってきたのだと思います。ただ、動画を見て好感を持つことと、実際の選挙で一票を投じることは、同じではありません。
まだ先の話だと思っていた大統領選挙が、少し気になってきました。マカッサルで暮らしながら、この変化を見ていきたいと思います。
参考資料