マカッサルのMall Panakukangにリニューアルオープンした「TONG TJI Tea House」。店名から“お茶を飲む場所”を想像して入店したところ、予想を裏切る展開が待っていました。涼むつもりで席に着き、冷たいジャスミンティーを頼んだだけのはずが、メニューを開いた瞬間に「ティーハウスなのに、食事がうまい」という印象へ一変。思わず予定が変わってしまった体験を、実食レビューとともに紹介します。
マカッサルのMall Panakukangにリニューアルオープンした「TONG TJI Tea House」。
名前を聞けば、多くの人が「お茶を楽しむ場所」という印象を抱くはずです。実際、私も最初はそうでした。汗ばむ午後、涼む目的で入店し、冷たいお茶を一杯だけ飲んで帰るつもりだったのです。
しかし、メニューを開いた瞬間、その予定は静かに裏切られました。
“ティーハウスなのに、食事で勝負してきている”
気づけば、私は料理を注文していました。
TONG TJI Tea Houseは、フードコートの一角にあります。
リニューアル直後ということもあり、入口には花輪や装飾が並び、華やかな空気が漂っていました。しかし、それ以上に印象的だったのは店内に入った瞬間の“空気の変わり方”です。
フードコートの喧騒のすぐ横なのに、音がふっと遠のく感覚。
柔らかいライトの色味、アーチ型の壁、グリーン×ベージュの落ち着いた配色。視界も心も落ち着きます。
席に座ると、オレンジ色のクッションが体を受け止め、姿勢が自然とほどける。
「お茶を飲んだらすぐ出るはず」だった気持ちが次第に、「ここで食べてもいいかもしれない」へと変わっていきました。
長居していいと言われているような空間づくり。
この時点で、すでにティーハウスという枠を一歩超えていました。
本来ならお茶が主役のはずの店で、目に入ってきたのは想像以上の料理ラインナップ。
洋食(ステーキ、カツ、スパゲッティ)
ローカル料理(ソト、ラウォン、アセムアセム)
定番のペニェット系
ボリュームのある定食ライン
「Oriental & Western」という表記の意味は、ページをめくるごとに鮮明になります。
ティーハウスという看板に寄りかからず、“食事で成立する店”としての自信がある構成でした。
“お茶だけの店じゃない。食べていい場所だ。”
この時点で、冷たいお茶だけで帰る選択肢はなくなりました。
Es Jasmine Tea L(No Sugar) – 13,369ルピア
まずは喉を潤すジャスミンティーから。
氷の冷たさが最初に来る
すぐにジャスミンの香りが広がる
最後に茶葉の渋みが静かに残る
余計な甘さがなく、飲んだ後の喉がすっきりする味わい。
飾らないのに印象に残る一杯で、「ここは大丈夫だ」と思わせてくれます。
Tahu Nagih – 31,194ルピア
名前の意味は「中毒性のある豆腐」。
その言葉が誇張でないことは、一口で理解できます。
外はカリッ、中はふわり。
たっぷり乗った唐辛子とニンニク、エシャロットの香ばしさが決定打。
白米と一緒に口に運ぶと、皿全体がひとつの料理としてまとまります。
温度差・食感・香り。それぞれに役割がある豆腐料理。
副菜ではなく“メインを張れる豆腐”に出会った感覚でした。
Paket Ayam Penyet Cabe Ijo – 49,020ルピア
見た目の辛さよりも、後から追いかけてくる旨味の層が印象的な一皿です。
一口目は刺激。
二口目で風味。
三口目で鶏肉の温度が戻り、辛さが味に変わる。
揚げ油の匂いが残らず、外はカリッ、中はしっとり。
緑唐辛子のサンバルは確かに辛いのに、不思議とスプーンが止まりません。
「辛さに飲まれない料理」。
まさにその言葉が似合う仕上がりでした。
食べ終わる頃には、その理由が自然と整理されていました。
つまりこの店は、
「ティーハウス」ではなく、「ティーが看板の食事処」。
肩書きと中身がズレているのではなく、
肩書きを利用して“良い裏切り”を生むタイプの店でした。
夕食の選択肢に迷う時、もう一つ安心して選べる店が増えました。
「ティーハウスなのに、食事がうまい」という言葉を、初訪問で実感することになりました。