海のきれいな場所へふらりと出かけたい!そんな思いつきから、前日の夜に航空券を検索していると、マカッサル発テルナテ行きの便が目に留まりました。テルナテという地名は知っていたものの、私にとってはまだ馴染みの薄い場所。けれども、インドネシアの1000ルピア紙幣に描かれている海上の円錐形の島影(マイタラ島とティドレ島の風景として知られる)がテルナテの沖から望めると知り、今回のテーマは「1000ルピアの旅」に決定。美しい海と、香辛料貿易の歴史が色濃く残る島へ、急遽飛び立つことにしました。
テルナテという地名は知っていたものの、実際に行くのは初めて。けれど、1000ルピア紙幣の海景(マイタラ島とティドレ島のシルエット)がテルナテ沖から望めると知って、胸の中に小さな火が灯りました。地図を開き、便の組み合わせを眺めるうちに、思いはもうモルッカ海峡の向こう側へ。あとはポチッと航空券を押さえるだけ。旅はたいてい、こうして始まります。
初めての島は、少しだけ予習しておくと動きやすい。搭乗前にまとめたメモを残しておきます。
島のかたちとランドマーク
テルナテは円錐形のガマラマ山を中心にぐるりと海岸道路が回る“火山の島”。どこからでも山が方角の基準になり、迷いにくい。市街は空港から南へ十数分ほどで、海沿いに官庁・港・モスク・市場がまとまっています。
1000ルピアの景色
紙幣のモチーフになったマイタラ島&ティドレ島は、テルナテ西岸からよく見えると言われます。とくに夕方の逆光で島影がくっきり。晴れた日のサンセット帯を狙うつもり。
移動手段
交通はオジェック(バイクタクシー)とアンコット(乗合ミニバス)が主役。道路は起伏が少なく、海を見ながらの移動が気持ちいい。
歴史の手がかり
テルナテはクローブ(丁子)の積み出し港として世界史に登場した島。オランダ時代の要塞跡やスルタンの宮殿が点在し、海とスパイスの匂いが混ざる。街歩きは朝夕が涼しくて快適。
食
屋台のイカン・バカール(焼き魚)、ナツメグや丁子を使ったお菓子が名物。カード対応は場所によりけりなので少額現金は多めに。
この“予習メモ”を頭に入れたら、あとは現地で地図を塗りつぶすだけ。いよいよ出発です。
出発の朝。高架道路に斜めの光が差し、街が目を覚ましていく。バイクの流れを縫って空港方面へ走ると、スルタン・ハサヌディン像のロータリーが見えてきました。ここを回ればスルタン・ハサヌディン国際空港。この瞬間、心と身体が「旅モード」に切り替わります。
ターミナルに入ると、磨かれた床に朝の光が反射して、ロビー全体が少し眩しい。曲線の天井が奥まで続き、空間が大きく息をしているよう。今回は機内持ち込みのみなのでカウンター行列はスルー。そのまま保安検査へ向かい、JT896の出発ゲートは5と確認。ラウンジには寄らず、コーヒーの香りを横目にゲートへ歩きます。
ゲートの窓からは、ボーディングブリッジの長い影が滑走路に落ち、地上スタッフが忙しく動き回る様子。視線を遠くへやると、山並みが朝靄の向こうに柔らかく浮かんでいます。そこへ赤い尾翼のライオンエア B737-800(PK-LJQ)。朝日に照らされた機体はどこか誇らしげで、出発前の小さな高揚が胸の中で膨らみました。定刻で進む朝便は、旅程に“無理がない”ことを教えてくれます。
「搭乗を開始します」のアナウンス。今回は一番手でゲートを通過。機内ドア前ではCAさんが笑顔でお出迎え。こうして、マカッサル→テルナテ JT896便「搭乗まで」は無事完了。
前夜に決めた即興の旅でも、朝の空港は驚くほどスムーズでした。紙幣に描かれた景色と、スパイスの香りが漂う島の街並みを思い描きながら、ドアクローズを待つだけ。1000ルピアの旅は、ここから本格的に始まります。