ラマダンが始まると、街は少し静かになります。
昼間の飲食店はカーテンを下ろし、
屋外で食事をする人の姿は減り、
交通量もどこか落ち着く。
外から見ると、「経済活動が弱まっている」と感じるかもしれません。
しかし、今年のマカッサルを歩いていると、印象はまったく違います。
静かに見えるのに、売れている。
なぜか。
2026年は、旧正月(イムレック)とラマダンが重なる年だからです。
この“二つの消費波”が同時に走ることで、街の経済はむしろ厚みを増しているように感じます。
ラマダンは断食月です。
日の出から日没まで飲食を控え、
祈りを大切にする時間。
このイメージから、「節約の月」「消費が減る月」という印象を持つ人も多いでしょう。
しかし実際は、ラマダンは消費が減る月ではなく、消費の構造が変わる月です。
さらに今年は、その構造変化に旧正月の消費が重なっています。
つまり、
旧正月の贈答・祝い消費+ラマダンの準備消費
が同時進行しているのです。
マカッサルは華人コミュニティも一定規模存在する都市です。
旧正月前後になると、消費は一気に動きます。
・贈答用クッキー
・果物セット
・高級茶葉
・赤い装飾品
・外食
・家族向け衣料
スーパーでは果物売り場が拡大し、
菓子売り場は特設棚が増える。
モールには赤と金の装飾が並び、
セールの告知が増える。
祝祭は、消費を生みます。
旧正月は、家族が集まり、贈り物を交わす行事。
つまり、家族単位の支出が自然に増えるタイミングなのです。
一方ラマダンは、断食の月でありながら、レバラン(断食明け大祭)に向けた準備期間でもあります。
動くのは主に、
・デーツ(ナツメヤシ)
・シロップ飲料
・揚げ物用食材
・家庭用調味料
・衣料品
・レバラン用ギフト
です。
特に夕方になると、スーパーや屋台は活気づきます。
昼は静かでも、日没前には人が集まる。
消費が“時間帯”で集中するのがラマダンの特徴です。
今年は旧正月とラマダンが接近しています。
結果として、
贈答消費+準備消費
が同時に発生しています。
例えば、
果物売り場は旧正月向けで拡大し、
同時にデーツの棚も増えている。
菓子売り場は赤いパッケージとラマダン仕様が混在し、
衣料コーナーは旧正月セールとレバラン向け新作が並ぶ。
売り場面積そのものが増えているような印象です。
消費が分散するのではなく、重なり合っている。
「静かな拡大」という現象
昼間の街は確かに穏やかです。
カフェは落ち着き、
飲食店は控えめ。
しかし夕方になると、スーパーのレジは混み、
モールの駐車場は満車に近い。
外見は静か。
内部は活発。
これを私は「静かな拡大」と呼びたい。
ラマダンは経済を止める月ではなく、
表面的な派手さを抑えながら、内側で動く月です。
そこに旧正月が重なると、動きはさらに強まります。
この現象が成立するのは、都市構造にも理由があります。
マカッサルは観光依存都市ではありません。
港湾都市であり、物流拠点。
教育機関や行政機関も多い。
外からの観光客よりも、地元住民の生活消費が中心です。
つまり、消費の土台が内需にある。
そのため、宗教行事や祝祭があると、
外部要因に左右されず、地元の支出がそのまま経済に反映される。
これがマカッサルの強さです。
消費は「減る」のではなく「集中する」
ラマダン単体でも消費は減りません。
ただし、用途が変わる。
今年はそこに旧正月が加わり、消費が“集中”しています。
夜の娯楽のような一部層の支出ではなく、
家族単位の広い支出。
生活必需品、贈答、衣料。
広い層が動くと、経済は安定します。
むしろ、消費の裾野が広がる。
企業側の動き
企業もそれを理解しています。
・セール開始の前倒し
・在庫の積み増し
・旧正月とラマダンの同時広告
・売り場拡張
広告も赤と緑が同時に並ぶ。
戦略的に見ると、
今年は“売り逃しができない年”。
二重需要をどう取り込むかが勝負です。
宗教カレンダーが重なる年は、
経済の季節性が変わります。
統計的に見れば、前年と単純比較はできないでしょう。
しかし体感としては明らかに、
「消費が厚い」。
ラマダンがブレーキだという単純な図式は、
今年は当てはまりません。
ラマダンは経済にマイナスなのか。
少なくとも2026年のマカッサルでは、その答えは単純ではありません。
旧正月と重なり、
贈答と準備の消費が同時に走る。
街は静かに見えて、
実はしっかりと売れている。
宗教行事は経済のブレーキではない。
消費の方向を変える装置であり、
今年はその装置が二つ同時に動いている。
マカッサルの内需の強さが、
最もはっきり見える年かもしれません。