ブルネイの国民食「ナシカトゥ」を現地で味わうなら、ガドン・ナイトマーケットが最適。1ドルとは思えないボリュームと美味しさ、揚げたて・焼きたてのライブ感が楽しめます。多文化料理が共存し、地元の活気に触れられるブルネイ屈指の屋台スポット。旅行者必見のリアルな食体験を紹介します。
水上集落カンポン・アイールを散策し、新旧のモスクでブルネイの信仰の深さを感じた後、夕方になって向かったのは「ガドン・ナイトマーケット(Pasar Pelbagai Barangan Gadong)」です。
ブルネイは世界有数の富裕国。物価も高いと覚悟していましたが、このナイトマーケットは全く違いました。ほとんどの食べ物、飲み物が1ブルネイドル(約120円)という激安価格。焼き立て、揚げたて、作りたてのライブ感が最高で、地元の人々で賑わう活気ある空間でした。
ここからは、ブルネイの庶民の食文化を体験できるガドン・ナイトマーケットの魅力を、じっくりとお伝えします。
ガドン・ナイトマーケット(Pasar Pelbagai Barangan Gadong)は、ブルネイの首都バンダル・スリ・ブガワンの郊外、ガドン地区にある大規模なナイトマーケットです。
市内中心部からDartで約10分ほどの距離にあり、夕方から夜まで営業しています。大きな屋根の下に、色々な屋台が所狭しと並び、食べ物から飲み物、軽食、デザートまで、ありとあらゆるものが揃っています。
営業時間は夕方17時頃から夜22時頃まで。特に18時から20時頃が最も混雑し、地元の人々で賑わいます。週末はさらに人が多く、駐車場も満車になるほどの人気スポットです。
私が訪れたのは週末の20時過ぎでしたが、すでに多くの人で賑わっていました。
ナイトマーケットと聞くと、雑然とした雰囲気を想像するかもしれませんが、ガドン・ナイトマーケットは非常に清潔で整っています。大きな屋根があるため、雨が降っても安心です。床もきれいに掃除されており、ゴミ箱も各所に設置されています。
さすがブルネイ、屋台街でもこの清潔さを保っているのは驚きです。インドネシアやタイのナイトマーケットとは、明らかに雰囲気が違います。
ガドン・ナイトマーケットの最大の魅力は、何と言ってもその価格です。ほとんどの食べ物、飲み物が1ブルネイドル(約120円)という激安価格で提供されています。
ブルネイの物価はシンガポールと同程度で、レストランで食事をすれば10ドル以上かかるのが普通です。しかし、このナイトマーケットでは、数ドルあればお腹いっぱいになることができます。
なぜブルネイのような富裕国で、こんなに安い価格で食事ができるのでしょうか。それは、ブルネイ政府の政策と関係があります。
ブルネイでは、食料品に対する税金が非常に低く、特に庶民向けの食事は政府が価格を抑える努力をしているそうです。また、屋台を営む人々も、利益を追求するよりも、地域のコミュニティに貢献するという意識が強いようです。
豊かな国だからこそ、庶民も気軽に美味しい食事を楽しめる。これがブルネイの素晴らしいところだと感じました。
ナイトマーケットに入ると、無数の屋台が目に飛び込んできます。どこから見ていいか分からないほど、たくさんの選択肢があります。
まず目につくのは、マレー料理の定番を扱う屋台です。ナシカドゥ(ミックスライス)、ミーゴレン(焼きそば)、サテ(焼き鳥)など、馴染みのある料理が並んでいます。
揚げ物を専門に扱う屋台も人気です。春巻き、揚げバナナ、揚げ豆腐、揚げ魚など、その場で揚げているため、熱々でサクサクの食感を楽しめます。揚げ油の音と香りが食欲をそそります。
炭火で焼く焼き鳥(サテ)や、魚の炭火焼き、焼きトウモロコシなど、焼き物専門の屋台もあります。炭火の煙と香ばしい匂いが、マーケット全体に広がっています。
飲み物屋台も充実しています。フレッシュジュース、ミルクティー、コーヒー、ココナッツウォーターなど、種類も豊富です。特に人気なのは、カラフルなシロップを使ったアイスドリンクで、見た目も華やかです。
食後のデザートも充実しています。かき氷、パンケーキ、プリン、ローカルスイーツなど、甘いものが好きな人には天国のような場所です。ドリアンなどの果物も豊富でした。
色々美味しそうなものがありましたが、まず最初に注文したのは「ナシアヤム(ナシカドゥ)」です。
ナシアヤムは、マレー語で「鶏肉ご飯」という意味で、東南アジアでは非常にポピュラーな料理です。ブルネイでは「ナシカドゥ(Nasi Katok)」とも呼ばれ、国民食とも言える存在です。
ナシカドゥは、ご飯に揚げた鶏肉と、サンバル(辛いソース)を添えたシンプルな料理です。「カドゥ」とは「叩く」という意味で、かつては夜中に屋台の扉を叩いて注文したことから、この名前がついたと言われています。
ブルネイのナシカドゥは、特にサンバルが特徴的です。唐辛子、ニンニク、エシャロット、ライムなどを使った自家製サンバルで、各屋台ごとに味が異なります。
屋台の若い女性たちが手際よくお客さんを相手しているお店で、ナシカドゥを注文すると、笑顔で「はい!」と返事をしてくれました。ご飯を盛り、揚げたての鶏肉を乗せ、サンバルを添えてくれます。
ご飯はふっくらと炊かれており、鶏肉は外はカリッと、中はジューシーです。
ナシカドゥを受け取り、食べる場所を探します。マーケット内には、簡易的なテーブルと椅子が設置されており、その場で食事をすることができます。
席に座り、ナシカドゥを開けます。湯気が立ち上り、香ばしい匂いが鼻をくすぐります。まずは鶏肉を一口。カリッとした衣に、ジューシーな肉汁が溢れ出します。これは美味しい!
次にご飯と一緒にサンバルを味わいます。辛い! でも、ただ辛いだけではなく、深い旨味があります。ニンニクとエシャロットの風味、ライムの酸味が絶妙にバランスを取っています。辛さの中に、何度もごはんが進む美味しさがあります。サンバルがまたおいしく、ごはんと合う。価格は1.2ブルネイドル、たった150 円で、この美味しさとボリュームは信じられません。大満足でした。
ナイトマーケットの魅力は、目の前で料理が作られる臨場感です。揚げ物屋台では、大きな鍋で油がジュージュー音を立てています。焼き鳥屋台では、炭火で肉が焼かれ、香ばしい煙が立ち上っています。
作り手の表情も見えます。真剣に調理する姿、客に笑顔で対応する姿。この人間味が、料理をさらに美味しくしているような気がします。
レストランでは味わえない、この「ライブ感」こそが、ナイトマーケットの最大の魅力です。
ナシカドゥを食べ終えても、まだお腹に余裕があります。そして何より、1ドルという価格が、色々なものを試したくなる気持ちにさせてくれます。ブルネイは物価が高いと思っていましたが、このナイトマーケットは別世界です。地元の人々が毎日通うのも納得です。
満足感いっぱいで、ナイトマーケットを後にします。
水上集落で伝統的な生活を見て、モスクでイスラム建築の美しさに感動し、ナイトマーケットで庶民の食文化を体験する。わずか一日でしたが、ブルネイの多様な側面を知ることができました。
そして、どの場面でも感じたのは、ブルネイの人々の温かさと、国の豊かさです。富裕国でありながら、庶民も気軽に美味しい食事を楽しめる。この幸せな国の在り方が、ガドン・ナイトマーケットに凝縮されていたように感じます。
激安価格で、焼き立て、揚げたて、作りたての美味しい料理を楽しめます。大きな屋根の下で、清潔で整った環境。地元の人々で賑わう活気ある雰囲気。そして、マレー、中華、インドと、多様な料理が楽しめる多文化性。このナイトマーケットでこそ、ブルネイの本当の姿を見ることができると感じました。豊かさとは、庶民が気軽に美味しい食事を楽しめる環境を整えること。それが、ブルネイの真の豊かさなのだと、ガドン・ナイトマーケットが教えてくれました。