週末のバンドン弾丸日帰り旅行。その目的は、実はWHOOSHファーストクラスではなく、もうひとつの列車——在来線の特急「PARAHYANGAN(パラヒャンガン)」のプライオリティ席に乗車することでした。この列車は、バンドンからジャカルタ・ガンビル駅を結ぶ在来線特急で、所要時間は約3時間。高速鉄道のWHOOSHと比べると決して速くはありませんが、そのぶん、ゆったりとした時間の流れと、どこか懐かしい鉄道旅の魅力が味わえる列車です。今回は、出発前の駅の様子からプライオリティ席への乗車までをご紹介します。
アラスダウンでスンダ料理を満喫したあと、再びバンドン駅へ戻りました。週末の午後らしく、駅は多くの人で賑わい、活気にあふれています。
まずは特急列車のチケットを発券。プライオリティ席は事前にオンラインで予約済みで、駅構内にある「ロコカフェ(Loko Cafe)」前の自動発券機で簡単に発券できます。KAIのアプリに表示される予約番号を入力すると、あっという間に紙のチケットが発行されました。料金は300,000ルピアと、WHOOSHのファーストクラスに比べて半額ほどです。
発券を終えたら、すぐ隣のロコカフェで列車の発車までの時間をコーヒータイムに。KAI(インドネシア国鉄)が展開するこのカフェは、駅構内にありながらコーヒーの味も本格的です。アイスロングコーヒーを注文し、冷房の効いた店内でひと休み。コーヒーを飲みながらゆっくりと流れる時間も、鉄道旅ならではの楽しみです。
発車時刻が近づいてきたので、駅構内にある名店「レンバンLSD(Lembang Sari Deli)」へ立ち寄ります。ここはバンドンを訪れるたびに必ず立ち寄るお店で、地元バンドンの手頃なお土産が数多く揃っています。中でも人気なのがケーキ類。
観光客だけでなく地元の人々も利用する店だけあって、品質はお墨付き。今回は数種類のスイーツを購入し、構内へと向かいました。
いよいよ改札を通過し、ホームへ向かいます。
在来線特急とはいえ、始発のバンドン駅ではすでに列車が入線済み。改札ではスタッフが親切に案内してくれ、構内に流れる車両アナウンスとともに、鉄道旅ならではの高揚感が高まります。
ホームに到着すると、出発の準備が整ったパラヒャンガン号が待っていました。
ガンビルまでの約3時間の特急ですが、食堂車(レストラン車両)も連結されており、簡単な軽食や飲み物を購入できます。
座席にはテーブルも備えられており、食事を楽しみながら車窓の風景を眺めるのもまた一興です。
先頭に近づくと、ひときわ目を引くのが深い茶色の車両——今回乗車する「プライオリティ車両」です。通常のエグゼクティブ車両(銀色)とは明らかに異なる色合いで、外観からして特別感が漂います。プライオリティ車両は機関車のすぐ後ろに連結されており、“特等席”の風格を感じさせます。ついでに間近で見る迫力ある機関車にも心が躍ります。
そしてたどり着いた1号車、プライオリティ車両へ。
ドアをくぐると、すぐに木目調のカウンターがあり、出発後のサービス提供に向けた準備が整っていました。数名のスタッフが常駐しており、座席案内や荷物のサポートなど、まるでビジネスクラスのような丁寧な対応が印象的です。
座席はゆったりとした2+2の配列。革張りのシートは体を包み込むようなフィット感があり、リクライニングも深め。足元にはレッグレストも備わっています。1車両あたりわずか20席程度と、全体的にゆとりのある静かな空間です。
エグゼクティブ車両も革張りの座席で快適そうでしたが、やはりプライオリティ車両には一段上の特別感があります。各座席には充電用コンセント、読書灯、Wi-Fiも完備されており、3時間の移動でも疲れを感じさせない充実した設備。大きな窓からは、ジャワ島の田園風景をたっぷりと楽しめそうです。
13時5分、プライオリティ車両は静かに発車。アナウンスが流れると、車内は一気に旅のモードに切り替わります。
「高速鉄道とは異なる贅沢」が味わえる137 PARAHYANGANのプライオリティ席。鉄道好きであれば一度は体験してほしい、インドネシアの隠れた名列車です。
次回は、車内でのサービス内容や車窓の風景、そしてガンビル駅までの旅路をじっくりとお届けします。