インドネシア・スラウェシ島の港町マカッサルは、古くから交易の要所として栄え、独自の食文化を育んできた街です。その中でも、地元民から愛され、旅行者の舌を虜にするのがスープ料理。マカッサルには「Coto Makassar(チョト・マカッサル)」という街の名前を冠したスープがあり、観光ガイドにも必ず登場します。しかし、現地で食べ比べてみると、「いや、パルバサのほうが絶対うまい!」という声が少なくないのです。
パルバサ(Pallubasa)は、牛肉や牛モツをじっくり煮込み、たっぷりの香辛料で仕上げた濃厚なスープ。最大の特徴は、仕上げに加えるココナツ。これがスープにまろやかさと深いコクを与え、チョトにはない独特の味わいを生み出します。今回は、マカッサルで「パルバサと言えばここ!」と名高い人気店「Pallubasa Serigala(パルバサ・スリガラ)」を訪れ、その魅力を徹底的にご紹介します。
まずは、マカッサルにおける二大スープの位置づけから。
Coto Makassar(チョト・マカッサル)は、牛肉や内臓をベースに使ったスープが特徴。濃厚ながらも少しクセがあり、薬味や調味料で好みに仕上げるのが一般的です。歴史的にもマカッサルを代表する料理として有名で、市内には専門店が数多く存在します。
一方のPallubasa(パルバサ)は、見た目こそチョトに似ていますが、スープの方向性は大きく異なります。最大の違いは、仕上げに加えるローストココナツ(セリンダン)。これにより、香ばしさと甘みがほんのり加わり、全体がまろやかでリッチな口当たりに仕上がります。また、香辛料の風味も強く、スパイス好きにはたまらない一杯です。
現地の人に聞くと、「チョトは日常、パルバサはちょっと特別なときに食べる」という人もいれば、「いやいや、パルバサのほうがご飯に合う!」という人も。どちらを推すかは好みですが、旅行者の多くはパルバサのやさしいコクに心を奪われるようです。
マカッサル市内にはパルバサを出す店がいくつかありますが、その中でも「Pallubasa Serigala」は別格の人気を誇ります。店名の「Serigala」はインドネシア語で“オオカミ”を意味し、店がある通りの名前「Jalan Serigala」に由来しています。
夕方に訪れると、すでに店内外は満席状態。大鍋から立ち上る湯気と、香辛料の香りがあたり一面に漂い、食欲を刺激します。店頭には「100% Daging Lokal(地元産牛肉100%)」の看板。スラウェシの牛肉は脂が少なく、煮込みにすると旨みが凝縮するのが特徴です。
注文方法はシンプルで、パルバサ一択しかありません。牛肉かモツが入るミックスを選びます。好みで生たまごを入れてもらえます。
席につくと、店員がライムとローストココナツを運んできます。ライムはお好みでスープに絞り、爽やかな酸味を加えるため。ローストココナツはスプーン2〜3杯ほど入れるのが定番ですが、香りを強くしたいなら多めに投入するのもおすすめです。
運ばれてきたスープは、深みのある茶色。表面にはほのかな油の膜が張り、湯気とともにクローブやコリアンダーの香りが立ち上ります。スープを一口すすれば、まずスパイスの豊かな香りが広がり、すぐにココナツのまろやかな甘みが追いかけてきます。辛さは控えめで、スパイスの複雑な風味が主役。
肉は長時間煮込まれてホロホロと柔らかく、噛むほどに旨みが染み出します。骨付きの部位はスープに深いコクを与え、モツはプリプリの食感で飽きさせません。
パルバサのもう一つの魅力は、ご飯との相性の良さ。スープをご飯にかければ、香辛料とココナツの風味が米一粒一粒に染み込み、スプーンが止まらなくなります。現地の常連客の多くは、スープとご飯を一緒に食べ、途中でライムを絞って味を変えながら最後まで楽しみます。食べ終わったあとの満足感は格別。スパイスで体が温まり、ココナツのまろやかさで心まで満たされます。観光客だけでなく、地元の人が何度も通う理由は、この唯一無二の味わいにあります。
パルバサは、チョト・マカッサルと比べると観光的な知名度はやや劣りますが、一度食べればその印象は逆転するでしょう。「マカッサルで一番うまいスープは?」と聞かれたら、迷わず「パルバサ!」と答える人が多いのも納得です。
マカッサルを訪れるなら、CotoだけでなくPallubasaも必ず試してほしい一品です。特に「Pallubasa Serigala」は、地元産の牛肉を使い、香辛料とココナツが織りなす極上のスープを提供する名店。ご飯と一緒に食べれば、その相性の良さに驚き、きっと旅の思い出の味となるでしょう。次にマカッサルに行くときは、昼食でも夕食でも、ぜひ一度足を運んでみてください。
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