「パダン料理」。これまで何度か食べる機会はありましたが、実のところ、あまり好きになれずにいました。
その理由は、どこか衛生面に不安を感じていたから。特に「料理がいろんな客の間を行き来しているのでは?」という先入観があり、なかなか足が向かなかったのです。
ところが今回、マカッサルの海沿いにある新エリア「CPI(Centre Point of Indonesia)」で偶然立ち寄ったパダン料理店「Sari Ratu Restoran Padang」で、その印象ががらりと変わる体験をしました。
それは、パダン料理の魅力とともに、安心して楽しめる仕組みが整っていたからです。
「何も頼んでいないのに、どうして料理が次々と並べられるの?」
最初は戸惑いましたが、これはパダン料理ならではの**「Hidang(ヒダン)方式」**というスタイル。西スマトラ地方の伝統的な提供方法で、客が席に座ると、小皿に盛られた料理が一斉にテーブルに並べられるのが特徴です。
しかも驚いたのは、手をつけた料理だけを支払えばいいというシステム。
まさに「見て選ぶ」楽しさと、「食べた分だけ払う」という合理性が両立したスタイルなのです。
この日、私が実際に手をつけたのは以下の5皿:
Rendang(ルンダン):濃厚な香りと深い味わいの牛肉スパイス煮込み。とても柔らかく仕上がっていました。
Gulai Daging(グライ・ダギン):カレースープ仕立ての牛肉。スパイシーながらもまろやかな味わい。
Gulai Kikil(グライ・キキル):牛のアキレス腱を使った料理で、ぷるぷるした独特の食感がクセになる一品。
Sayur Singkong(サユール・シンコン):キャッサバの葉を煮込んだ野菜料理。苦味とココナッツのまろやかさが絶妙。
Udang Gulai(ウダン・グライ):スパイシーなエビの煮込み。ピリッとした辛さが食欲をそそります。
どの料理もスパイスがしっかり効いていて、ご飯がどんどん進みました。
見た目以上に満足感があり、少しずついろいろ試せるのがHidangスタイルの醍醐味です。
「食べなかった料理はどうなるの?」というのは、初めてパダン料理を体験する人が最も気になるところだと思います。
実際、一般的なパダン料理店では手をつけていない料理は再利用されることがあります。合理的とはいえ、衛生面に不安を感じて敬遠してしまうのも無理はありません。
ですが今回訪れたSari Ratuでは、その点にしっかりと配慮されていました。
すべての小皿料理に透明なラップがかけられており、食べたい料理だけ自分でラップを剥がす仕組みになっているのです。
つまり、ラップが剥がされていない=誰も手をつけていないことが一目で分かります。
たとえ再提供される場合でも、衛生的で安心感のあるシステムだと感じました。
これまでパダン料理に興味はありつつも、衛生面の懸念からなかなか挑戦できなかった私にとって、
「この店なら安心して食べられる」と素直に思える環境でした。
マカッサルCPIにあるSari Ratuは、店内も清潔でモダンな雰囲気。
家族連れや観光客でも入りやすく、現地の伝統料理をリラックスした空間で楽しめるのが魅力です。
目の前に広がる海を眺めながら、少し贅沢なローカル体験ができるこの場所は、パダン料理初心者にもぴったりだと感じました。
パダン料理は、単なる「食事」ではなく、その提供スタイルや文化背景を含めて楽しむべき“体験”。
そして、Sari Ratuのように衛生的な工夫がしっかり施された店なら、初めての人でも安心して挑戦できます。
「気になるけれど、どこかハードルが高い」と感じていた方にこそ、ぜひ訪れてほしいお店です。
きっと新しいインドネシアの一面に出会えるはずです。
Sari Ratu Restoran Padang Makassar