バリ島から日帰りでも訪れられる人気の離島、ヌサ・レンボンガン島(Nusa Lembongan)。透明度抜群の海と素朴な雰囲気で知られていますが、そこへ渡るには「サヌール港からの高速船」が欠かせません。
今回は実際にサヌール港から高速船に乗り、約20km先のレンボンガン島まで移動した体験を詳しくレポートします。波に揺さぶられるスリル満点の航海から、島に降り立つ瞬間、そして到着後の移動手段や宿泊先まで、これからレンボンガン島を訪れる方の参考になれば幸いです。
サヌール港を出発すると、船はゆっくりと港を離れ、外海に出た途端にスロットルを全開に。時速45km前後まで一気に加速し、海面を飛ぶように走ります。
最前列に座った私は、強烈な海風と波しぶきを正面から浴び、まるで絶叫マシンに乗っているような体験をしました。高い波に乗り上げてから一気に落下する瞬間は、体が宙に浮くような感覚。船体が大きく上下に揺さぶられ、座席のクッションに体を叩きつけられるほどでした。
普段は船酔いしないタイプですが、このときばかりは「これは堪えるな」と思わず声に出るほど。隣の席では外国人観光客が大笑いしていて、緊張感と楽しさが入り混じった不思議な空間でした。
スタッフからは「必ずライフジャケットを着けてください」と指示があり、波の高さや揺れの強さを考えると、その意味がよく分かります。窓からは絶えず波しぶきが飛び込み、船内にも海水が舞い込むほど。スリルあるアトラクションを超えた迫力で、自然の力を全身で体感できました。
揺れに耐えること約20分。視線を前方に移すと、エメラルドグリーンに輝く海の向こうにレンボンガン島の陸地が見えてきます。島影が大きくなるにつれて、船の速度は次第に落ち、揺れも穏やかに。
乾季の青空の下、太陽の光に照らされた海はまさに宝石のよう。バリ本島とはまた違う、南国の楽園に近づいているのだと実感する瞬間でした。
レンボンガン島には大きな桟橋がなく、船は砂浜に直接後進で乗り上げる形で停泊します。
そのため、乗客は船尾から砂浜に降りるのですが、必ず海に足をつけることに。サンダルでの来訪が基本で、スニーカーを履いていた私は裸足になって下船しました。太陽に温められた砂浜はふかふかで温かく、思わずその心地よさに笑みがこぼれます。
隣に停泊していた船は、砂に乗り上げすぎたのか、なかなか沖に戻れず、スタッフ総出で船を押していました。どこかお祭りの山車を押すようで、素朴な島ならではの光景に心が和みました。
今回利用した「アルタマスエクスプレス(Arthamas Express)」は、到着場所のすぐそばに自社のカフェを併設しています。乗船前の待ち時間や、到着後に次の予定まで一息つきたいときに便利で、多くの観光客が利用していました。さらにラッキーだったのは、今回宿泊するホテルがこの到着場所から徒歩圏内だったこと。タクシーで島内を移動する必要がなく、そのまま歩いてホテルに向いました。
レンボンガン島には一般的な車はありません。道幅が狭く舗装も簡易的なため、主な移動手段はピックアップトラックを改造したタクシーか、バイク(レンタルも可能)です。
港に着くとすぐに「タクシー?」と声をかけられますが、それは車ではなく、荷台にベンチを付けたオープンタイプの乗り物。観光客とスーツケースをまとめて荷台に積み込み、ガタガタ道を走っていきます。
この独特な交通手段も、レンボンガン島ならではの体験。島の小ささや素朴さを象徴しており、非日常を味わえる要素のひとつです。
港周辺には小さなカフェや宿泊施設が点在しており、観光地らしい賑わいがありながらも、バリ本島の喧騒とは違うのどかさがあります。島の時間がゆっくりと流れていることを実感しました。「ここから数日間、海とともに暮らすんだ」と思うと、心が自然と高鳴り、旅の始まりにふさわしい瞬間となりました。
サヌール港からレンボンガン島への高速船は、ただの移動手段ではなく旅のハイライトそのもの。大きく揺れるスリル、透き通った海、そして島に足を踏み入れた瞬間の高揚感。すべてが一体となって、忘れられない旅の思い出となりました。