Categories: IndonesiaMakassar

マカッサルの赤いチャーハン「ナシゴレン・メラ」の秘密 ― 鮮烈な赤に込められた港町の情熱と文化

マカッサルの名物「赤いチャーハン(ナシゴレン・メラ)」をご存じでしょうか?真っ赤なチャーハンに思わず驚きますが、食べてみると優しい酸味とピリッとした辛さ。その鮮やかな見た目の理由は、トマトソースと港町の食文化にありました。今回は、港町マカッサルが生んだ“赤いチャーハン”の物語をお伝えします。

マカッサルの赤いチャーハンの秘密

2015年、初めてマカッサルを訪れたときのことです。

私は一皿の料理に心を奪われました。それが「ナシゴレン・メラ(Nasi Goreng Merah)」――つまり、真っ赤なチャーハンです。テーブルに運ばれてきた瞬間、その色のインパクトに思わず息をのむほど。

まるで絵の具を混ぜたような鮮烈な赤。

「辛そう…」と身構えましたが、食べてみると驚くほどマイルドでした。

トマトの酸味とサンバル(唐辛子ソース)の辛味が調和し、見た目の派手さとは裏腹に、どこか懐かしく優しい味わい。

なぜマカッサルのチャーハンは赤いのか――その秘密を探っていくと、港町の歴史と気候、そして人々の誇りが見えてきました。

赤の秘密は「トマトソース」 ― ケチャップ・マニス文化の進化形

最初に気になるのは、あの鮮やかな赤。

この色の正体は「トマトソース」です。

インドネシアの多くの地域では、チャーハンに「ケチャップ・マニス」と呼ばれる甘口醤油を使うのが一般的で、仕上がりは黒っぽい色になります。

しかしマカッサルでは、甘口醤油の代わりにトマトソースを使うのです。

この独自の調理法こそが、“赤いチャーハン”を生み出しました。

その背景には、港町マカッサルの交易の歴史があります。オランダ統治時代に西洋のトマトソース文化が流入し、現地の味覚に合わせてアレンジされたのが始まりだといわれています。

つまり、この赤は「西洋と南スラウェシの融合の象徴」なのです。

マカッサルでは、ケチャップ・マニスの甘みよりも「酸味と辛味のバランス」を重視します。魚介や鶏肉といった素材を活かすには、爽やかなトマトの酸味がぴったり。まさにマカッサルらしい“合理的で情熱的な味”といえるでしょう。

“酸味×辛味”がもたらす食欲の魔法

マカッサルは一年中気温が高い地域です。そんな気候の中で好まれるのが、食欲を刺激しつつも重くならない料理。赤いチャーハンはその条件にぴったり合っています。トマトソースの酸味が脂っこさを抑え、サンバルの辛味が汗を誘います。食後は驚くほどスッキリとして、暑い昼下がりでもついスプーンが止まりません。

まさに“体が求める味”といえるでしょう

そして、“赤”という色にも意味があります。赤はインドネシア国旗にも使われている、「情熱」「力」「幸福」を象徴する色。食卓に赤いチャーハンが並ぶだけで、どこか元気が湧いてくる。

マカッサルの人々にとって赤は、まさに生活のエネルギーの色なのです。

“マカッサルスタイル”として愛される赤いナシゴレン

インドネシアの国民食であるナシゴレン。しかしマカッサルでは、「赤いナシゴレン」が地域のアイデンティティとして存在します。

市内のワルン(食堂)やレストランでは、「Nasi Goreng Merah」と書かれたメニューをよく見かけます。どの店でも真っ赤なチャーハンが主役で、見た目も色鮮やか。

まるで一皿のアートのようです。

赤いチャーハンの優しさ

「Nasi Goreng Merah Spesial(特製赤チャーハン)」を注文してみました。

真っ赤に染まったご飯の中に、ぷりぷりのエビと鶏肉が混ざった豪華な一皿が登場します。最初のひと口はトマトの酸味がやさしく広がり、そのあとでサンバルの辛味がピリッと追いかけてきます。

まさに「酸味→辛味→旨味」のリズム。地元の人に話を聞くと、「子どものころから食べ慣れた味」「家庭の味そのもの」とのこと。

ナシゴレン・メラは、マカッサルの人々にとって日常の中の“幸福の味”なのだと実感しました。

赤は情熱、そして誇り ― 港町が生んだ“食の芸術”マカッサルの赤いチャーハンは、単なる派手なグルメではありません。

それは、港町として多様な文化を受け入れ、自分たちの味として昇華してきた人々の誇りの結晶です。

トマトソースの酸味には、暑い気候の中でも食を楽しむ知恵があり、真っ赤な色には、前向きに生きるマカッサルの情熱が宿っています。そして、家族や仲間と食卓を囲む時間こそが、この街の人々にとって何よりの幸福なのです。

まとめ

マカッサルの赤いチャーハンは、トマトソースで仕上げる独自の“文化の融合料理”。暑い気候に合わせた酸味と辛味の絶妙なバランスが魅力です。見た目の派手さの裏には、港町の誇りと人々の温かさが詰まっています。

マカッサルを訪れたら、ぜひ一度「ナシゴレン・メラ」を味わってみてください。その一皿から、この街のエネルギーと優しさがきっと伝わってくるはずです。

kenji kuzunuki

葛貫ケンジ@インドネシアの海で闘う社長🇮🇩 Kenndo Fisheries 代表🏢 インドネシア全国の魅力を発信🎥 タコなどの水産会社を経営中25年間サラリーマン人生から、インドネシアで起業してインドネシアライフを満喫しています。 インドネシア情報だけでなく、営業部門に長年いましたので、営業についてや、今プログラミングを勉強中ですので、皆さんのお役にたつ情報をお伝えします。