マラン滞在最後の朝は、穏やかに静かに明けました。旅の終わりの朝は、いつもどこか少しだけ切ないもの。マランを出発する前に、もう一度だけローカルの味を楽しみたくなり、Googleマップで朝食が取れる場所を探してみると、目に留まったのが、地元の人たちに人気の「Pangsit Mie Dan Bakso M Gendut」。最後の朝にふさわしいローカルグルメを求めて、さっそく向かってみることにしました。
店の入口近くに貼られたメニューを見て、思わず目を疑いました。
Pangsit Mie + Bakso:12,000ルピア(約120円)
Bakso(肉団子スープ)単品:10,000ルピア(約100円)
Siomay(シュウマイ):1個 1,000ルピア(約10円)
Es Jeruk(オレンジジュース):4,000ルピア(約40円)
今どき、飲み物付きで一人前20,000ルピア(約200円)で朝食が楽しめるなんて、信じられないほどの価格設定。インドネシアの物価の安さにはこれまでも驚かされてきましたが、マランはその中でもひときわリーズナブルだと実感しました。
席に着くと、厨房から湯気を立てて運ばれてきたのは、たっぷりと注がれたミーパンジットバクソ。ほんのりと茶色がかったスープの中には、大きめの弾力あるミートボールがごろごろと入っており、見た目からしてボリューム満点です。
スプーンですくって一口。想像以上にあっさりしながらも、旨味がしっかりと感じられるスープが、朝の体にじんわりと沁み渡っていきます。どこか懐かしく、ほっとする味わい。ミートボールは中までぎっしり詰まっていて、しっかりとした歯ごたえがありながら、噛むたびに肉の旨味がじんわり広がる上質な仕上がりです。
「このクオリティで100円……」と心の中でつぶやきながら、気がつけば無言でスープを飲み干してしまっていました。
食後はGrabアプリでタクシーを呼び、マランの主要バスターミナルへ向かいます。到着後、チケットカウンターに立ち寄ってみると、係員から「切符はバスの中で買えるから、そのまま乗っていいよ」と案内されました。
時刻表などは特になく、適当に来たバスに案内されて乗るという、インドネシアらしいローカルスタイルがここでも健在です。
少し歩いた先で、ちょうど出発直前のスラバヤ行きのバスを発見。運転手に行き先を伝えると、軽くうなずきながら「乗っていいよ」と手を振ってくれました。迷わず乗車し、今回はせっかくなので運転席のすぐ後ろ、一番前の席を確保。フロントガラス越しにマランの風景を最後まで楽しめる、特等席です。
出発時刻は特に決まっておらず、乗客がある程度集まるまでバスの中でしばらく待機します。数分ほどで乗客がぽつぽつと乗り始め、10分ほどしてようやく出発となりました。
しかし、走り出してからも道路脇で何度も停車し、通りすがりの乗客を次々と乗せていくスタイル。まるで日本で流しのタクシーを拾うように、歩道で手を上げた人がそのまま乗り込んでくるという光景が、もはや日常です。
最初は空席の目立っていた車内も、気がつけばほぼ満席。こうした“実用主義”の交通文化も、インドネシアの面白さの一つだと改めて感じました。
この日の運賃は1人35,000ルピア(約350円)。行きに乗ったバスは20,000ルピアだったのでやや高めでしたが、今回のバスは座席が広く、リクライニングも深めで快適。価格差は十分に納得できるものでした。
バスはやがて高速道路に入り、整備された路面をスムーズに走行。エアコンも効いており、座席のクッションも柔らかく、まるで観光バスのような乗り心地でした。
約1時間後、バスはスラバヤ市内のGRABとの乗り継ぎがしやすい専用ポイントに到着。ここで下車すれば、そのままアプリで次の移動手段をスムーズに手配できます。
実はスラバヤの主要バスターミナルでは、GRABの車両が乗り入れ制限されているため、このポイントを知っておくと非常に便利。ローカルな旅を楽しみつつも、“最後はスマートに”というのも悪くありません。
こうして、激安バクソの朝食とローカルバスでの移動という、マランらしさにあふれた締めくくりを経て、再びスラバヤへと戻ってきました。
旅の終わりはいつも名残惜しいものですが、今回は観光だけでなく、日常に近い時間を体験できたことが何よりの思い出になりました。「また来たい」と思わせてくれる、そんな素朴であたたかなマランの魅力を、最後まで全身で感じることができました。