国境をいくつも越えてきた旅も、いよいよ終わりが見えてきました。
バリ・デンパサールからマカッサルへ向かうこの一本が、今回の旅のラストフライトです。
距離としては短い移動です。
けれど感覚としては、「旅を閉じて、日常に戻るための最終調整」のような時間でした。
急がず、焦らず、期待もしすぎない。
これまでの移動で身についた“心の置き方”を、そのまま持ち込むような一日です。
デンパサール空港での乗り継ぎには、少しだけ余裕がありました。
「せっかくバリにいるのだから」と、空港を出て、短い時間でも島の空気を味わうことにします。
選んだのは、Kutaにあるヌカ レストラン&バー。
観光客向けでありながら、肩肘張らずに入れる場所です。
注文したのはナシチャンプル。
盛り付けは素朴ですが、皿の上にはバリの食文化がきちんと詰まっています。
そこに、冷えたビンタンビール。
旅の終盤に、この組み合わせはよく効きます。
「まだ旅の途中だ」という気持ちと、
「もう戻る準備が始まっている」という感覚が、ちょうど半分ずつ混ざる。
短時間でも、バリはちゃんとバリでした。
食事のあとは、近くのローカルマッサージへ。
長距離移動が続いた脚は、正直かなり疲れていました。
観光向けのスパというより、生活に根付いた場所。
派手さはありませんが、手つきは確かです。
1時間半、黙って身体を預ける。
頭を空っぽにして、ただ「今ここにいる」という感覚だけを残す。
旅の疲れは、移動の合間に回収しておかないと、最後に一気に来ます。
この時間があったおかげで、気持ちにも余裕が生まれました。
再びデンパサール空港へ。
ここからは、ライオンエアでマカッサルへ向かいます。
正直なところ、
「定刻で出る」とは、最初から思っていませんでした。
案の定、ディレイ。
ただ、不思議と苛立ちはありません。
これまで何度も経験してきたオペレーション。
遅れる前提で動くことが、この路線では一種の知恵になっています。
ラウンジで一息つきながら、
「まあ、こういうものだよな」と思える自分に、少し笑ってしまいました。
問題はある。でも、誰も怒らない
搭乗が始まると、やはり現場は少し混乱します。
バス移動、案内の分かりにくさ、待ち時間。
相変わらず、うまいとは言えません。
けれど、不思議なことに、誰も大きな声を上げていない。
遅れる前提。
混乱する前提。
その前提が共有されているからこそ、
現場の空気は意外なほど穏やかでした。
「期待しない」という姿勢が、
こんなにも人を優しくするのかと、妙に納得します。
ようやく機内へ。
機材はB737-900。座席はほぼ満席です。
ドアが閉まり、ゆっくりとタキシング。
夕方の光が、機体の外にまだ残っています。
エアコンの効きが弱く、正直かなり暑い。
それでも、離陸してしばらくすると、ようやく空気が落ち着いてきました。
シートベルトサインが消え、
身体も気持ちも「もう大丈夫だ」と分かる。
この瞬間が来ると、旅はもう終わったも同然です。
降下が始まり、窓の外にスラウェシの輪郭が見えてきます。
見慣れた海岸線、街の灯り。
「ああ、帰ってきたな」
その一言で、すべてが収まります。
ラオスの静けさも、
ホーチミンの密度も、
バリの余白も。
全部を抱えたまま、ちゃんと戻ってきた。
それで十分でした。
マカッサル到着。遅れたけれど、問題はない
予定よりは遅れましたが、無事にマカッサルへ到着。
スポットに着いた機体から降りた瞬間、
湿った夜の空気が身体を包みます。
この空気に触れると、
「旅は終わった」とはっきり分かります。
不満を言う理由は、どこにもありませんでした。
今回のラオス旅行は、
派手なトラブルも、大きな成功談もありません。
でも、
静かに積み重ねた移動と、
身体と心のペースを崩さない選択の連続がありました。
最後のフライトが多少遅れても、
それを受け止められる状態でいられたこと。
それ自体が、この旅の成果だった気がします。
旅の最後に必要なのは、感動ではなく、納得。
そして「また出られるな」と思える余白。
今回の旅は、
その終わり方まで含めて、きれいでした。