インドネシア・マカッサルから始まった年越し旅は、バリ、ホーチミン、ビエンチャンを経て、最終目的地である世界遺産ルアンパバーンへ向かいます。今回のエピローグでは、リゾート島バリでの短いトランジットにも関わらず、旅の気分が一気に高まっていく様子をお伝えします。
2025年の年末、私はひとつの旅を決めました。
マカッサル → バリ(トランジット) → ホーチミン → ビエンチャン → 世界遺産ルアンパバーン。
インドネシアからベトナム、そしてラオスへと空路で国境を越えていく“東南アジア縦断の年越し旅”です。
この旅の目的地はバリではありません。
それでも、あの島に降り立つだけで旅のテンションが上がる。早朝の空港、湿度を含んだ空気、旅人のざわめき——リゾート島の空気が、一瞬でスイッチを押してくれるようでした。
ここから先、ホーチミン、ビエンチャン、そして世界遺産の街ルアンパバーンへ向かう旅が始まります。その出発地点が、マカッサルでした。
夜明け前の高速道路を走り抜け、スルタン・ハサヌディン国際空港へ向かいます。
車窓から見える街灯は規則正しく並び、黄色いガードレールが朝の色を反射している。新しく整備された高速道路は、マカッサル市内から空港までのアクセスを劇的に改善しました。地元で暮らす身として、その変化を誇らしく感じる瞬間です。
空港のエントランスが近づくと、旅の空気が一気に濃くなるような感覚。
「ここから、自分は別の物語へ入っていく」。
そんなスイッチが押されるのを、はっきりと感じました。
南国の空港には、季節感のズレがあります。
クリスマスツリーやサンタクロース、雪を模した装飾が並びますが、気温は30℃。薄手のシャツ一枚で過ごせる環境に、年末という実感は薄い。
それでも「MERRY CHRISTMAS AND HAPPY NEW YEAR」という文字を見ると、確かに1年が終わろうとしていることを思い出させてくれます。
ここは常夏のインドネシア。それでも人々は季節を祝う。
文化や季節感の違いを感じるたび、海外に暮らす面白さを再確認する光景でした。
Webチェックインを済ませ、搭乗までの時間を「Gloria Jean’s Coffees」で過ごします。
ブラックコーヒーはしっかりとした苦味があり、旅を始める準備を整えてくれる味でした。
窓の向こうには滑走路と朝焼け。
「今日の行き先はバリじゃない。それでも旅が始まる実感がある」。
そんな感覚を抱きながら、マグカップを両手で包み込むように持ちます。
周囲には、家族連れ、ビジネスパーソン、ひとり旅の青年…誰もが違う事情と目的を抱えながら、同じ空港にいるという偶然。
それが旅の面白さだと思います。
年末特有の浮き立つ空気が、通路の先まで満ちていました。
搭乗するのはライオンエアJT741便/B737-900ER(PK-LHR)。
座席は38A、窓側。ライオンエアらしいシンプルな装備と、やや使い込まれたシート。それでも、この席から旅が始まると思うと十分すぎる舞台です。
そして30分の遅延。
「まあ、ライオンエアだし」。
そんな言葉で受け流せるあたり、インドネシアで暮らすようになった自分に気づきます。
エンジン音が高まり、機体が滑走路を走り出す。
体が座席に押し付けられる感覚、地面が離れていく瞬間。マカッサルの街がミニチュアのように小さく見えていく。
この瞬間のために旅をしている。
そう思うほど、飛行機の離陸には特別な魔法があります。
雲を抜けると、真っ白な雲海。
映画もなく、機内サービスは最小限。それでも十分。旅の序章としては、むしろ静かで心地よい時間でした。
ロンボク島の島影が見え、海の色がエメラルドへと変わっていく。
着陸の衝撃、逆噴射の音、そして南国の光。
目的地ではないのに、気分が上がる島がある。それがバリだ。
空港の通路を歩くだけで、空気が違うのを感じる。潮風、スパとリゾートホテルの広告、旅行者のざわめき。
たった数時間のトランジットでも、“来てよかった”と思わせる空気がある。旅のテンションは、ここで一段ギアが上がりました。
バリは今回はただの通過地点。
それでも、バリを経由しただけで旅が少し豪華になったような気がしました。
ここから先、ホーチミンへ飛び、ビエンチャンを経てルアンパバーンへ。
国境を越えていく旅はまだ序章に過ぎません。
ラオスで迎える年越しが、この旅の本当の目的地です。
旅は、目的地に着いた瞬間から始まるのではありません。
空港に向かった朝から始まっている。
コーヒーを飲んだ瞬間、搭乗ゲートで深呼吸した瞬間、そして離陸した瞬間から、旅はもう始まっているのです。
マカッサルから動き出した物語は、まだ続きを持っています。
次は、ホーチミン。そしてラオスの空へ。