テルナテでの滞在を終えマカッサルへ。今回のフライトはライオンエアJT897便、ボーイング737-800。窓の外に広がるのは、雲と海と島々が織りなす、絵画のような景色でした。北マルクを離れ、南東スラウェシ・ケンダリ上空を通過し、マカッサルに至るまで、わずか2時間の間に目まぐるしく変化するその空中遊覧の様子を振り返ります。
ライオンエアJT897便、B737-800に搭乗。滑走路を駆け抜け、ふわりと宙に浮くと、窓の外に広がったのは深いブルーの海と、緑に覆われたテルナテ島の街並みでした。
背後にはガマラマ山がどっしりと構え、雲をまといながら見送ってくれます。小さな島の周囲を取り囲む海岸線、その先に点在するティドレ島やマイタラ島の姿が、まるで模型のように眼下に広がっていました。
島影が遠ざかるにつれ、青い海の上には小さな積雲が並び、整然とした雲の列がまるで航路を示すかのように伸びていきます。窓から眺める景色は、まさに「空の上の航海」といった趣です。
高度が安定すると、眼下には果てしないモルッカ海。陽光を浴びて青く輝く海面には、ところどころ浅瀬が見え、エメラルドグリーンに染まったリーフが浮かび上がります。雲の切れ間から覗く小島の姿は、まるで真珠を散りばめたよう。
右窓側の座席からは、やがて南東スラウェシ方面の大地が見えてきました。海の色は次第に濃い青から浅い緑へと変わり、そこに蛇行する川の筋や入り組んだ海岸線が浮かび上がります。
南東スラウェシに差しかかると、眼下には広大な大地と都市の輪郭が現れます。ケンダリの街並みと、その周囲に広がる湾の形。深い入り江と細長い半島が織りなす地形は独特で、空から見ると一目でその特徴がわかります。
陸地には緑豊かな山々が連なり、谷間には小さな集落や道路が縫うように走っています。時折、赤茶けた土地が顔をのぞかせ、熱帯の強い日差しと雨に育まれた複雑な自然環境を物語っていました。
さらに西へ進むと、飛行機は再び海の上へ。眼下に見えるのは南スラウェシ東部の海岸線。リーフに囲まれた浅瀬と濃いブルーの外洋が混ざり合い、海のグラデーションが幾重にも広がります。
やがて、スラウェシ本島がはっきりと見え始め、平野と山地が交互に現れます。川が幾筋も流れ込み、三角州のように海へと注ぎ出す光景は、空から眺めると大地と海の呼吸のよう。そこに点在する村々や道路の直線は、人の営みの小ささと自然の雄大さを同時に感じさせます。
フライトの中盤は晴天が続き、果てしない青空と白い雲の織りなす景色が、まるで夢の中のようでした。しかし南スラウェシに近づくにつれ、空模様は少しずつ変化していきます。
雲は厚みを増し、灰色の層が広がり始めました。太陽光はその合間を縫って差し込み、海面に光の帯を描きます。光と影が刻々と変わるその様子は、空の上からしか味わえない劇的な瞬間でした。
やがて機体は高度を下げ、眼下に大都市マカッサルの姿が見えてきました。広大な平野を流れる川が蛇行し、両岸に密集する住宅地。その先にはスルタン・ハサヌディン国際空港の滑走路が真っ直ぐに伸びています。
テルナテを飛び立ったときの青空とは打って変わり、マカッサルの空は雨模様。窓を叩く雨粒が、旅の終わりを静かに告げているようでした。やがて滑走路に接地し、機体は雨に濡れたエプロンを進んでターミナルへ。
テルナテからマカッサルまでのライオンエアJT897便は、単なる移動手段にとどまらず、空中遊覧そのもの。わずか2時間弱のフライトに、インドネシアの多彩な自然と天候の移ろいが凝縮されていました。遅延の多いライオンエアでありながら、この日は定刻運航という思わぬ幸運もあり、ストレスのない快適な空の旅に。この空の景色は、ただの移動時間を「特別な体験」へと変えてくれるものでした。