ジェパラ最後の夜、偶然見つけたホテル併設のバー「The Gecho」で、冷えたビンタンビールと絶品ピザに癒されるひととき。食後は路上TikTokライブに飛び入り参加し、現地の若者と盛り上がるという思わぬ体験も。締めは地元カフェのコーヒーで、穏やかな夜に心から満たされる──そんなローカルであたたかなジェパラの夜を満喫しました。
あっという間に旅の時間も終盤。最後の夜には、少しだけ特別な時間を過ごしたい──そんな気持ちで、何気なく歩いていた通りで目に入ったのが、ホテル「The Gecho Inn Budget」併設のレストランバーでした。黒と金のアンティーク調のファサードは、まるでヨーロッパの街角にある老舗パブのよう。静かな地方都市にこんなバーがあるなんて、と心が躍ります。
店内に足を踏み入れると、想像以上に広々とした空間にしっかりとした木製のバーカウンターが鎮座。ビールサーバーやグラスが整然と並び、バーテンダーが立つ姿が絵になります。壁にはジャック・ダニエルやギネスのポスターが飾られ、落ち着いた白熱灯と静かな音楽が心地よい空間を演出していました。
ただし、ここで“ジェパラらしいご愛嬌”も。雰囲気はまさに本格バーですが、提供されるアルコールはビールのみ。ハードリカーは置いていません。でも、この気取らない“ゆるさ”こそが、旅人にとってはむしろ嬉しい魅力。ビールを気軽に楽しめる場所があるというだけで、心がほどけていきます。
まず注文したのはもちろん、定番の「ビンタンビール」。冷えたグラスに注がれた一杯は、ほのかな苦味と軽やかな喉越しで、旅の終わりにぴったり。肩の力を抜いてゆっくり飲むこの時間は、どんな高級バーにも代えがたい贅沢です。
フードメニューも豊富で、マルゲリータピザはチーズとトマトがたっぷり。パリッとした薄焼き生地に、フレッシュなトマトの酸味がビールと絶妙にマッチ。インドネシアのソウルフード「ミーゴレン」も外せません。香ばしく炒められた麺に、目玉焼き、クルプック、トマト、きゅうりが添えられ、素朴ながら満足度の高い一皿でした。
その他、ソト(スープ料理)などもあり、洋食とインドネシア料理のバランスの良いメニュー構成が魅力的でした。
食後にバーを後にし、夜道を歩いていると、三脚を立ててスマートフォンを並べる若者たちに出会いました。何をしているのかと尋ねると、なんとTikTokのライブ配信中。毎晩ここで“路上ティックトッカー”として、ライブカラオケをしているとのこと。
「日本人!?」という反応とともに歓迎され、なぜかマイクを渡され、即席でコラボライブに出演することに。旅先で思いがけず現地の若者と一緒に盛り上がる──そんな“予定外の出会い”が、旅の記憶をより色濃くしてくれるのだと実感しました。
ライブの熱気を胸に、向かったのは地元で人気のカフェ「Kopi Tiro」。ロゴ入りのカップに注がれたアイスロングコーヒーは、ほんのり苦くて、夜風の中で飲む一杯としては最高の締めくくり。コーヒーをすすりながら、ジェパラでの出来事を一つひとつ思い返しました。
観光ガイドには載らない、こうした“地元の日常”に触れることができたこと。それこそが、ジェパラで過ごした何よりの贈り物だったと感じながら、静かにこの夜を終えました。