家具の町として名高い中部ジャワ・ジェパラ。世界中からオーダーが舞い込む高い木工技術を誇るこの町には、大規模な家具工場だけでなく、一般客でも立ち寄れる木工ショールームやギャラリーが数多く点在しています。今回は、その中でも個性が光る数軒を巡る“木工ギャラリー巡り”に出かけてみました。
ジェパラ市の中心部からほど近いムリョハルジョ(Mulyoharjo)通りは、インドネシア有数の木工芸の中心地。通り沿いにはチーク材の香りが漂う工房やショールームが軒を連ね、まるで“木の美術館”のような空間が広がります。
この地域では、チーク、マホガニー、スアールなどの高品質な木材を使用した家具や装飾品が製作・展示されています。伝統的な彫刻技術を駆使したクラシカルなデザインから、現代的なミニマルスタイルまで、その表現の幅広さに圧倒されます。
店先に並ぶ彫刻入りのベンチやキャビネットは、どれも一点物の芸術品。通りを歩くだけでも、職人たちの真摯なものづくりの姿勢が伝わってきます。
扉を開けると、チーク材を中心としたクラシカルな家具が整然と並び、空間全体に漂う重厚感に思わず息を呑みます。ひとつひとつの彫刻に込められた緻密な模様、引き出しの取っ手や脚の流れるような曲線に、職人の“粋”が宿っています。
ここで扱われる家具はすべてオーダーメイド対応。クラシック、モダンミニマル、ヴィンテージと、スタイルも多彩で、カスタムデザインにも柔軟に応じてくれます。素材にはチークやスアール、マホガニーが使われており、品質管理も徹底。ヨーロッパの宮殿や高級ホテルに納品された実績もあるというのも納得のクオリティです。
多くのギャラリーでは、製品の購入はもちろん、製作工程の見学や職人との会話も楽しめます。目の前で木が形になっていく様子を見ながら、その背景にある歴史や技術に触れる体験は、ただのショッピングとは一線を画します。
“手でつくる”という当たり前が、どれほど豊かな価値を持っているのかを再認識させてくれる、そんな場所です。
ムリョハルジョ通りの木工ギャラリー巡りは、ジェパラの文化と職人技を体感できる、かけがえのない体験です。木の美しさ、彫刻の細やかさ、そしてそれを生み出す人々の情熱。それらすべてが、ジェパラという町の木工文化を支えているのだと実感しました。
モノづくりの背景にある“手と時間”の価値、それを肌で感じられる、豊かな旅のひとときでした。