夜便のビジネスクラスは、ただの「移動」ではありません。
自分にとっては、1日の終わりをきれいに畳み直し、次の現場へ向かうための“切り替えの時間”です。
ここで一度、呼吸と気持ちのリズムを整えてから、次のステージへ進む。
夜便のビジネスクラスには、そんな役割があります。
今回のフライトは JAL729(B787-9/機体JA868J)。
座席は 4A でした。
ジャカルタ到着後、ガルーダ・インドネシア航空のマカッサル行きに乗り継げるのか、という現実的な課題を抱えつつも、まずは機内でコンディションを作るところから、この移動は始まります。
搭乗して席に落ち着いた瞬間、今回の座席は「視界」と「自分の領域」がしっかり確保されていると感じました。
まだ離陸すらしていないのに、不思議と肩の力が抜け、移動前の疲れがすっと引いていきます。
ビジネスクラスの良さは、派手さではありません。
余計な消耗がないこと。
足を伸ばせること、荷物を無理なく整理できること、必要であれば横になれること。
夜便では、この一つ一つが確実に効いてきます。
夜の空港は、少し低い声で動いている
夜の出発便が好きなのは、空港全体が少しだけ静かに、低い声で動いているように感じられるからです。
ゲート周辺の照明、ガラス越しに見える機体の鼻先、ボーディングブリッジの無機質な存在感。
離陸前の時間は、スマホを見れば現実に一気に引き戻されます。
一方で、窓の外を眺めていると、「ここから切り替えるぞ」という感覚が自然と立ち上がってくる。
ビジネスクラスの“余白”が、その切り替えを無理なく後押ししてくれます。
この日は、上空で風の影響をはっきり感じるコンディションでした。
ふわっと持ち上げられ、次の瞬間にストンと落ちる、あの独特の揺れ。
ただ、B787は機体がしなやかで、揺れ方にも「いなしている感覚」があります。
怖さというより、「ちゃんと受け止めている」という印象に近い。
もちろん揺れる日は揺れますが、機内の空気が落ち着いていると、人間の緊張も連鎖しません。
そして何より、「揺れる=悪いこと」ではなく、
“いつもの移動の範囲内に収まっている”
そう感じられるだけで、体力や精神的な消耗はかなり抑えられます。
夜のビジネスクラスで一番好きなのは、離陸後の一杯目です。
映画の画面がぼんやりと光り、グラスに注がれたシャンパンがテーブルに置かれる。
それだけで、脳が「移動モード」から「回復モード」に切り替わる。
ここで大事なのは、飲むこと自体というよりも、呼吸が深くなることです。
空の上で仕事や段取りのことを一旦横に置ける時間は、思っている以上に貴重です。
今回の和食は、メニューを見ただけで「ちゃんとしている」と分かる内容でした。
一品一品が派手に主張するタイプではなく、季節、出汁、温度で勝負してくる構成です。
海外生活が続くと、本格的な和食を食べる機会はどうしても限られます。
だからこそ、機内でこうしたコース料理をゆっくり味わえるのは、本当にありがたい。
豪華さというよりも、
「長距離移動を分かっている人のための食事」
そんな印象を受けました。
食後、私はつい「もう一杯側」に寄りがちです。
氷の入ったウイスキーのグラスと水を並べると、テーブルの上に選択肢が生まれます。
飲み過ぎない。
でも、我慢もしない。
夜便は、このバランスがとても取りやすい。
だからこそ、到着後のコンディションにも大きく影響してきます。
ジャカルタが近づくにつれて、機内の空気が少しずつ変わっていきます。
映画を止める人が増え、荷物を確認する手が動き始め、CAさんの声も到着モードに切り替わっていく。
そしてここで、私の中のテーマがはっきりと戻ってきます。
「ガルーダのチェックインに間に合うか?」
夜の到着は、スムーズにいけば気持ちがいい。
しかし一つ詰まると、時間は一気に溶けていきます。
到着してターミナルに入ると、
「Welcome to Terminal 3」
あの植物で作られた巨大なグリーンの壁が迎えてくれます。
何度見ても、これは一瞬で“ジャカルタに戻ってきた感覚”を作ってくれる存在です。
ただし、感傷に浸っている余裕はありません。
ここからは、完全に現場モードです。
入国審査は、自動化ゲートで比較的スムーズに抜けられました。
しかし、その後に地味に効いてくるのが、預け荷物の待ち時間です。
「もう出てくるだろう」と思ってからが長い。
この時間は、夜の疲れも相まって、体感がかなり伸びます。
荷物を受け取れた瞬間、ようやく次のチェックインに向けて“走れる状態”になります。
ここまで来て、やっとスタートライン。
夜到着の乗り継ぎは、こういうところが本当にシビアです。