メガクニンガン、スナヤンと順調に進んだジャカルタ出張。しかし夕方、ASHTA 8からブンダランHIへ向かう途中、雨と帰宅ラッシュが重なり大渋滞に巻き込まれる。わずか数キロの移動に70分。MRTを使えば30分以内だったという後悔と学び。それでも、たどり着いたスリブラサの食事に救われた夜。ジャカルタで本当に大切なのは「移動しない判断」でした。
メガクニンガンからスナヤンへ。
朝から午後にかけてのジャカルタ出張は、驚くほど順調に進んでいました。
フライトは定刻通り。
市内移動もスムーズ。
打ち合わせは予定通りに終了し、内容も申し分ない。
「今日は、完璧だな」
そう思った矢先、その油断を見事に打ち砕く出来事が待っていました。
それが、ジャカルタの夕方の渋滞です。
スナヤンエリアでの午後の打ち合わせを終えた後、向かったのは ASHTA 8 周辺。
比較的新しいこのエリアは、洗練されたオフィスとモールが一体となった空間で、
ビジネスの打ち合わせにも使いやすい場所です。
店内での打ち合わせは落ち着いた雰囲気で進み、内容もスムーズにまとまりました。
時計を見ると、まだ夕方前。
ここまで一切の無駄がなく、
「この出張は本当に噛み合っている」と感じていました。
この日の夕食は、ブンダランHIにある スリブラサ で取る予定でした。
ジャカルタに来たら、やはり一度は食べたくなるインドネシア料理。
その中でもスリブラサは、味・雰囲気ともに安心感のある老舗です。
地図を見ると、ASHTA 8からブンダランHIまではそれほど遠くありません。
「タクシーで30分もあれば着くだろう」
この判断が、この日の最大の誤算でした。
タクシーに乗り込み、走り出して数分。
空が急に暗くなり、雨が降り始めました。
それも、
ジャカルタ特有の、容赦ない雨。
そして時間帯は、
ちょうど夕方の帰宅ラッシュ。
この二つが重なると、
ジャカルタの道路事情は一変します。
車は進まない。
信号は一向に変わらない。
ナビの到着予定時刻が、
じわじわと後ろにずれていく。
70分かかった、わずか数キロの移動
結果として、
ASHTA 8からブンダランHIまでの移動にかかった時間は、
約70分。
体感としては、
「ほとんど動いていなかった」という印象です。
もし、
MRTで移動していればどうだったか。
このルートなら、
30分以内で到着できていたはずでした。
完全に判断ミスです。
タクシーの中で、
何度も同じ考えが頭をよぎりました。
「この辺で食べていれば良かったな」
ASHTA 8周辺にも、良いレストランはいくらでもあります。
スケジュール通りに動こうとした結果、かえって時間と体力を消耗する。
出張あるあるですが、この日は特に身に染みました。
ようやく到着したスリブラサ。
雨に濡れ、少し疲れた状態でしたが、
店内に入った瞬間、その気持ちは和らぎました。
落ち着いた空間。
香ばしいスパイスの香り。
運ばれてくる、安定感のある料理。
一口食べて、
「来て良かった」と素直に思えました。
移動は失敗だったけれど、
食事そのものには大きな満足感があった。
これもまた、
ジャカルタ出張らしい一幕です。
食事中、
ジャカルタ在住のインドネシア人の方から、
こんなアドバイスをもらいました。
「17時から20時は、なるべく移動しない方がいい」
この時間帯は、
すべてが重なりやすい。
だからこそ、
これが、
ジャカルタを快適に過ごす鉄則なのだそうです。
正直に言えば、
私は少し甘く見ていました。
「今日は順調だから大丈夫だろう」
「この距離なら何とかなる」
そう思った瞬間に、
世界有数のメトロポリスは牙を剥きます。
ジャカルタは、
便利で、合理的で、可能性に満ちた都市です。
同時に、
油断すると簡単に足をすくわれる都市でもある。
食事を終える頃、
外に出ると雨はすっかり上がっていました。
さっきまでの混乱が嘘のように、
道路も少し落ち着きを取り戻しています。
このタイミングでホテルへ移動。
今度は、スムーズでした。
「やはり、時間帯がすべてだな」
そう実感します。
翌朝は、
早朝便でマカッサルへ戻ります。
振り返れば、
定刻通りのフライト
順調な打ち合わせ
夕方の大渋滞という洗礼
そして、満足のいく食事
すべて含めて、
「ジャカルタらしい出張」でした。
この出張で得た最大の学びは、
とてもシンプルです。
ジャカルタでは、
夕方に無理な移動をしない。
スケジュール通りに動くことより、
都市のリズムに合わせること。
それができたとき、
この街はとても快適になります。
次に同じ状況になったら、
私は迷わず、その場に留まるでしょう。
そして、
20時を過ぎてから動く。
世界一級のメトロポリスには、
世界一級の付き合い方が必要なのだと、
改めて教えられた一日でした。