バイクのエンジン音、車のクラクション、街中に響くコーランの祈りの声、そんな中で一息つける場所を探すのは、意外と難しいものです。
そんなマカッサル生活の中で、私が長年通っているお気に入りのカフェがあります。
それが、インドネシア発のカフェチェーン「Excelso(エクセルソ)」。
Excelsoは、単なる「コーヒーを飲む場所」ではなく、心を整える“くつろぎの場所”なのです。
この記事では、私が感じたExcelsoの魅力と、他のカフェとは違う“心地よさ”の理由をお伝えします。
Excelsoは、インドネシア最大のコーヒー企業「Kapal Api(カパルアピ)グループ」が展開する、本格派カフェブランドです。
Kapal Apiは1950年代から続く老舗ブランドで、長年にわたりインドネシア国内のコーヒー市場を牽引してきました。
そのプレミアムラインとして1991年に誕生したのがExcelso。
現在では国内に200店舗以上を展開し、空港やショッピングモール、オフィス街など、あらゆる場所でその姿を見かけます。
コンセプトは「Coffee, Comfort, and Connection」。
一杯のコーヒーを通して“安らぎ”と“人とのつながり”を生み出すことを目指すブランドです。
Excelsoの本質は、「静けさ」と「安定」にあります。
どの店舗に入っても共通して感じるのは、落ち着いた照明、心地よい距離感、そして香ばしいコーヒーの香り。
それは単なる内装デザインの問題ではなく、「誰にでも穏やかな時間を提供する」というブランド哲学の表れです。
では、なぜExcelsoが“くつろげる場所”として愛されているのか。
その理由を3つの観点から見ていきましょう。
多くのカフェチェーンが「賑やかさ」や「活気」を売りにする中、Excelsoは一貫して“静けさ”を大切にしています。
店内は木目調の家具と落ち着いた照明で統一され、席の間隔も広め。
パソコンを広げても隣の視線が気にならず、長居しても居心地が悪くならない。
まるでホテルラウンジのような上質な雰囲気が漂います。
特に午前中のExcelsoは、まさに「静寂の時間」。
カップの音、豆を挽く音、エアコンの低い唸りだけが響き、自然と呼吸が深くなります。
この空間の“余白”が、仕事や読書、考え事をする時間を穏やかに支えてくれるのです。
Excelsoの味の信頼性は、Kapal Apiグループの強みです。
焙煎から流通、店舗運営までを自社で一貫管理しており、どの都市でも同じ品質のコーヒーを楽しむことができます。
代表的なメニューは「Toraja Coffee(トラジャ)」や「Mandheling(マンデリン)」など、インドネシア産の高級豆を使用した一杯。
苦味と酸味のバランスが絶妙で、ブラックでも最後まで飲みやすい仕上がりです。
また、メニューの幅も広く、
エスプレッソ系(Americano, Cappuccino, Latte)
フュージョンドリンク(Avocado Coffee, Ice Caramel Latte)
軽食メニュー
といったラインナップが揃い、「食事を楽しめるカフェ」としても魅力的です。
さらに、注文から提供までのスピードも安定しており、スタッフによる当たり外れが少ないのも安心感につながっています。
Excelsoは、高級ホテルのカフェほどフォーマルではなく、
ローカルなワルンのように騒がしくもない――。
つまり、「ちょうどいい中間の場」なのです。
客層は学生、社会人、家族連れまで幅広く、どんな人でも自然に馴染める空気感があります。
コーヒー1杯35,000〜55,000ルピア(約350円前後)という価格帯はやや高めですが、
“少しだけ上質な時間”を提供してくれるのがExcelsoの魅力です。
私がよく通うのは、マカッサル市内のショッピングモール「モールパナックカン」にあるExcelsoです。
朝10時頃に訪れると、客の多くはノートパソコンを開いて仕事をしているビジネスパーソン。
カプチーノを頼み、ゆったりとしたソファ席に腰を下ろすと、
BGMの音量もちょうどよく、自然と集中モードに入れます。
一度、2時間以上作業しても、店員が声をかけてくることはありませんでした。
この「急かさない接客」こそが、Excelsoの静けさを支える大切な要素です。
昼になると学生や家族連れが増え、店内に少し活気が戻ります。
それでも不思議と騒がしさはなく、会話のトーンもどこか穏やか。
店全体が“落ち着いた時間の流れ”を共有しているようでした。
こうした安定感こそが、多くのリピーターを生む理由です。
どの街に行っても同じ雰囲気・同じ味に出会えることは、海外生活者にとって本当に貴重な安心感と言えるでしょう。
ビジネス利用においても、Excelsoは“静かなオフィスの外部拠点”として活躍してくれます。
Excelsoは、インドネシアの日常に寄り添う“心の休憩所”です。
仕事前に立ち寄って気持ちを整える朝。
読書をしながらゆったり過ごす午後。
友人と語らいながら一日の疲れを癒す夜。
そのどの時間にも、Excelsoは自然に溶け込みます。
私にとってExcelsoは、「作業スペース」でも「食事の場所」でもありません。
むしろ、「呼吸を整える場所」です。
コーヒーの香りに包まれながら、ゆっくり息を吐く――。
そんなひとときが、また明日への活力になる。
だからこそ、Excelsoは“くつろぎの場所”として、
インドネシアのカフェ文化の中で特別な存在なのです。