ブルネイ国際空港に無事到着し、入国審査もスムーズに終了しました。荷物を受け取り、いよいよブルネイでの滞在が始まります。空港を出る前に、まず済ませておきたいことがいくつかありました。
一つ目は両替、二つ目は配車アプリの準備です。特にブルネイでは移動手段が限られているため、事前の準備が旅の快適さを大きく左右します。初めての国、初めての通貨、そして初めて使う配車アプリ。少し緊張しながらも、一つずつ確実にこなしていきました。
ここからは、ブルネイ国際空港での両替から、配車アプリ「Dart」を使った市内への移動、そしてホテル到着までの様子を詳しくお伝えします。
ブルネイ国際空港は、首都の空港としては驚くほどコンパクトです。ジャカルタやマカッサルのような巨大空港に慣れていると、その小ささに最初は戸惑うかもしれません。しかし、このコンパクトさこそが、この空港の大きな魅力だと感じました。
迷うことがなく、歩く距離も短く、すべての施設が近い。旅行者にとって、これほど使い勝手の良い空港はそう多くありません。そして何より、空港全体が非常に清潔で、静かで、整っています。床はピカピカに磨かれ、案内表示も見やすく、スタッフも親切です。
「豊かな国なのだな」という印象が、空港に到着した瞬間から伝わってきました。
まず最初にやるべきことは両替です。ブルネイの通貨は「ブルネイ・ドル(BND)」。シンガポール・ドルと1:1で連動しているため、シンガポールに行ったことがある人には馴染みやすい通貨です。
荷物受取所を出ると、すぐに両替所が見えました。空港の両替所は一般的にレートが悪いことが多いのですが、ブルネイの場合はどうでしょうか。少し不安を感じながら、カウンターに向かいました。
日本円を2万円用意していたので、まずはそれをブルネイ・ドルに交換することにしました。スタッフが電卓を叩いてレートを確認し、「160ドルになります」とのこと。つまり、1ブルネイ・ドルは約125円という計算になります。
正直、空港にしては悪くないレートだと感じました。市内の両替所と比べても、それほど大きな差はないでしょう。これなら安心して両替できます。現金を渡し、160ブルネイ・ドルを受け取りました。
受け取った紙幣は、カラフルでとても美しいデザインです。紙幣にはスルタンの肖像や、ブルネイを象徴する建物が描かれています。新しい国の通貨を手にすると、いつもワクワクします。「このお金で、これからどんな体験をするのだろう」と、期待が一気に高まりました。
ブルネイ・ドルの価値感覚を掴んでおくことは、旅行中の買い物や食事でとても重要です。今回のレートでは、1ブルネイ・ドルは約120〜125円。しかし、旅行中にいちいち細かく計算するのは面倒です。
そこで、ざっくりとした目安として「1BND ≈ 100円強」、少し余裕を持たせて「1BND ≈ 120円」として頭の中で計算することにしました。これなら、買い物の際にも素早く判断できます。
たとえば、レストランで10ドルのメニューを見たら「約1,200円くらい」、ホテルが100ドルなら「約1万2,000円」といった具合です。このくらいの感覚で十分だと思います。
両替を終え、次に確認すべきは移動手段です。ブルネイでは「Grab」や「Uber」は利用できません。その代わりに、「Dart(ダート)」という配車アプリを使います。
このDartは、ブルネイ旅行者にとってまさに必需品です。というのも、ブルネイには流しのタクシーがほとんど存在しないからです。道端でタクシーを拾うことはほぼ不可能で、ホテル経由で呼んでもらうか、配車アプリに頼るしかありません。
私は事前にDartアプリをダウンロードしていました。アプリストアでの評価は低めですが、実際に使ってみると非常に優秀なアプリだと感じます。評価をあまり気にせず、安心してダウンロードして大丈夫です。
Dartの使い方はシンプルで、アプリを開き目的地を入力すると、近くにいるドライバーが自動的にマッチングされます。料金も事前に表示されるため、ぼったくりの心配もありません。
支払い方法はクレジットカードでの事前決済も可能ですが、現金で支払うこともできます。私は短期滞在だったので、すべて現金払いにしました。現地通貨を実際に使う感覚も、旅の楽しみの一つです。
両替とアプリの準備を終え、いよいよ空港の外に出ます。インドネシアの空港では、到着ロビーを出た瞬間からタクシーの呼び込みが始まります。「タクシー?タクシー?」と声をかけられ、時には腕を軽く引っ張られることもあります。東南アジアの空港ではおなじみの光景で、慣れてしまえば気にならないものの、やはり少し疲れます。
ところが、ブルネイはまったく違いました。空港の外に出ても、誰一人としてタクシーの呼び込みをしていません。静かで穏やかで、誰も近づいてこない。この快適さには、正直言って拍子抜けするほどでした。
さすがは豊かな国です。タクシーの客引きをする必要がないのかもしれませんし、そのような行為が厳しく規制されているのかもしれません。いずれにしても、旅行者にとっては非常にありがたい環境です。
事前に調べていた情報によると、空港の出口をまっすぐ進んだ場所にP1駐車場があり、空港に隣接するモスクの方向に進むとP2駐車場があって、Dartはそこから乗車するとのことでした。
空港を出て右手に歩いていくと、すぐ近くにモスクの金色のドームが見えます。その方向に向かって歩いていくと、大きな「DART」の看板が目に入りました。とても分かりやすい場所にあり、迷うことはありません。
P2駐車場に到着すると、すでに数台の車が待機しているのが見えました。いずれもDartのドライバーの車で、どれも清潔で新しそうです。
スマートフォンを取り出し、Dartアプリを起動します。まず目的地を入力します。今回の宿泊先は「Hotel Badi’ah(バディア ホテル)」です。検索欄にホテル名を入力すると、すぐに候補が表示されました。
ホテルを選択すると、現在地から目的地までのルートと料金が表示されます。空港から市内中心部までは約7km。料金は12ブルネイ・ドルと表示されました。だいたい1,440円ほどです。日本のタクシーと比べれば安いですが、インドネシアのGrabと比べるとやや高めに感じます。
とはいえ、これがブルネイの物価水準なのでしょう。納得して「Book Now(今すぐ予約)」をタップすると、すぐにマッチングが完了しました。ドライバーの名前、車種、ナンバープレートが表示されます。
「あなたのドライバーはすぐ近くにいます」とアプリが教えてくれます。周囲を見渡すと、アプリに表示されたナンバーの車が、まさに目の前に停まっていました。こんなにスムーズにマッチングするとは思わず、少し感動しました。
ドライバーは中年の男性で、穏やかな笑顔で迎えてくれました。「Hotel Badi’ah ですね?」と確認し、荷物をトランクに入れてくれます。
車内は非常に清潔です。シートもきれいで、エアコンもしっかり効いています。ブルネイは暑い国ですが、車内は快適そのものです。
シートベルトを締め、いよいよ出発です。ドライバーは物静かで、必要以上に話しかけてくることもありません。この程よい距離感が心地よく感じられました。
空港を出ると、すぐに広い道路に出ます。道路は非常によく整備されており、舗装も滑らかです。車線もくっきりと引かれ、標識も見やすい。これぞ「豊かな国のインフラ」という印象です。
ブルネイは本当に車社会だと実感します。道路は整い、ガソリンも安いことから、多くの家庭が複数台の車を所有しているそうです。実際に走っている車も新しいものが多く、高級車もよく見かけます。
その一方で、歩いている人はほとんど見当たりません。スーパーマーケットや学校、職場への移動も車が前提になっているため、どんなに距離が近くても歩いて移動する人はほとんどいないのでしょう。
窓の外を眺めていると、緑の多さに気づきます。街路樹は大きく育ち、道路沿いには公園や緑地が整備されています。ビルやショッピングモールもありますが、その間には必ず緑が配置されています。
「緑豊かな街」という言葉がぴったりです。東南アジアの他の首都と比べても、ゴミがほとんど落ちていません。清潔で整然としていて、落ち着いた雰囲気に包まれています。
車窓を眺めながら、事前に調べていたブルネイの移動事情を、実際の体験と照らし合わせていきます。
公共バスは格安だが難易度高め
ブルネイには、市内を走る公共バスが存在します。料金はなんと1ドル(約120円)と格安です。ただし本数が少なく、時刻表どおりに来ないことも多いため、旅行者には少しハードルが高いと言われています。
道中、いくつかバス停を見かけましたが、時刻表が掲示されているわけでもなく、どのバスがどこへ行くのかも一目では分かりません。地元の人にとっては日常の足でも、旅行者が使いこなすのはなかなか難しそうです。
ただ、料金はとても安いので、時間に余裕があればチャレンジしてみる価値はあります。バスに揺られながらローカルな雰囲気を味わうのも、旅の楽しみの一つかもしれません。
流しのタクシーはほぼ存在しない
先ほども触れた通り、ブルネイには流しのタクシーがほとんどありません。道端でタクシーを拾うという発想自体が、ここでは通用しません。日本人旅行者からすると、これはかなり大きな違いです。
日本では、駅前や繁華街に出ればタクシーが行列を作っていますが、ブルネイではそういった光景はまず見られません。ホテルにタクシーを呼んでもらうか、配車アプリを使うかの二択になります。
その意味でも、Dartアプリはやはり必須です。これがないと、移動のたびに困ることになるでしょう。
歩いて観光は現実的ではない
「それなら歩いて観光しよう」と考える方もいるかもしれませんが、ブルネイで徒歩移動はあまり現実的ではありません。
まず、歩道が整っていないエリアが少なくありません。信号や横断歩道も多いとは言えず、車優先の道路設計になっています。そして何より、日中の暑さが厳しい。熱帯気候のブルネイで昼間に長時間歩くのは、体力的にかなりきついと感じました。
ブルネイを快適に楽しむためには、「歩く」より「車に乗る」ことを前提に計画したほうがよさそうです。この点を理解しておくだけで、旅のストレスはぐっと減ります。
空港を出発してから約15分ほどで、今夜の宿「Hotel Badi’ah」に到着しました。市内中心部に位置する、清潔感のあるホテルです。
ドライバーがホテルのエントランス前に車を停め、トランクから荷物を下ろしてくれます。料金は12ブルネイ・ドル。現金で支払いを済ませました。
ホテルのロビーに入ると、涼しく快適な空間が広がっています。フロントスタッフは礼儀正しく、英語も流暢です。チェックインもスムーズに進み、ほどなくして部屋のカードキーを受け取りました。
部屋に入ると、清潔で広々としたスペースが迎えてくれます。大きなベッドに、きれいなバスルーム。窓の外には市内の街並みが広がっています。
荷物を置き、ベッドに腰を下ろしたところで、ようやく「ブルネイでの拠点」が整いました。長い移動を終え、ようやく一息つける瞬間です。
ブルネイ国際空港からホテルまでの移動を通じて、この国の特徴が少しずつ見えてきました。
豊かで清潔、そして車社会。タクシーの呼び込みもなく、道路は整備され、街は緑に包まれている。すべてが整然としていて、どこか落ち着いた雰囲気が漂っています。
そして、配車アプリ「Dart」は、ブルネイ旅行において絶対に欠かせないツールだと確信しました。流しのタクシーがなく、公共バスも使いにくいブルネイでは、Dartが旅行者の移動を支えてくれます。
料金の目安としては、空港から市内中心部までが10〜12ドル、市内のちょっとした移動で5ドル前後。アプリ上で事前に料金が分かるため、安心感があります。
ブルネイを訪れる際には、ぜひ事前にDartアプリをダウンロードしておくことをおすすめします。これさえあれば、移動のストレスは大幅に減るはずです。
ホテルの部屋でひと息つきながら、窓の外に広がる静かな街並みを眺めつつ、これから始まるブルネイ観光に思いを馳せました。
次回は、いよいよブルネイ市内の観光編です。水上集落カンポンアイールの探索、豪華絢爛なモスク、そしてブルネイならではの食事体験など、引き続きたっぷりとお伝えしていきます。